第43話 共和国の驚き

「濃縮実験装置の跡地で、人外の輩が徘徊をしているだと?」

 問われたことに対して、ビルギッタは、絵が描かれた、ガラス板をいくつかテーブルに置く。


「ほう。この鳥頭、実物か?」

「はい監視員からの報告では、大きな鳥となり飛んできた様でちゅ。またその時に、これでごじゃいましゅね」

 そう言って、すっとガラス盤を押し出す。

「この大きな者を足に捕まえさせて、飛んできたようでございましゅ」

 そして、順にガラス板を押しだす。

「この順番で、到着して、出来上がった湖にも潜ったようでございます。いくつかパーツが引き上げられた様でごじゃいましゅ」


 そこで言葉を切り、

「翌日。この者たちの上役らしきものが突然現れたとの言葉を残し、以後連絡がございません」

 そう言って、一瞬。眉がへにょっとなる。

「その上役の念写板は無いのか?」

「ございません」


「ふうむ。姿隠しの宝玉は装備をしていたのだよな」

「はい。各種阻害系と防御系は装備していました」


「周辺山頂に配備してある、サンダーブラスターのシグナルはあるか?」

「あれは濃縮施設が暴走した時に、吹き飛んでおり再設置は行っておりません」

「しまったな。先にそっちを優先すべきだったか?」

 しばし悩んだ後、

「まずは、シウダー王国の奴らが来た後考えよう。今下手に動くと目立つしな」



 そんなこんなで翌日。

 正午近くに、何かをたたくような、パタパタと言う音が聞こえてくる。


 直ちに、セントラリス全体に警報が鳴り響く。

「なんだ一体?」

「西方面より、飛行物体が近づいてきます。ただ、その側面に白地に赤丸の旗と、見たことのあるシウダー王国の紋章。それと口を開けたドラゴンに奇妙な形『誠』が書かれた旗がつけられています。ひょっとすると、連絡にあった日本国か諏訪王国の物ではないでしょうか?」

 報告を受けて驚く。

「空を飛ぶだと、まだ共和国でも開発段階なのにふざけるな」

 そう叫んだ矢先。

 町に張られているシールドが、音もなく消え失せる。


 パタパタと、音を立てながらその奇妙な物は、公式の競技場へと降りてくる。


「なっ、空中で停まり降りてきた」

「やはりあれは、魔道具では?」

 

 今回はチヌーク3機とAH-64Dが3機くっついて来ている。

 チヌーク1機は完全に補給用で、燃料その他を満載してある。


 セントラリスでは、謎の物体に関心を持つものと、シールドを無効化されて頭を抱える者完全に2手に分かれた。


 武装装備の一団が、競技場へと駆け込んでくる。


 目の前に立つ男。

 胸の空いた上着に、見えるように首から紐がぶら下がっている。

「我らの前に立ちはだかるとは、奴隷の分際で」

 そこまで言ったところで、シャジャラの怒りを買い、皆気を失い馬から落ちる。


「我が主に向かって、奴隷とは。失礼な。ですが主様。その首から下げた紐はどう見ても奴隷に見えます」

 シャジャラが、そんなことをはっきりと言うのは珍しい。

 俺はネクタイをのけ、ポケットへ突っ込んだ。


 さっきの会話が聞こえたのか、日本の関係者も速やかにネクタイを外す。

「ところ変わればだね」

「まあ。僕自身ネクタイは何のためか、理解していませんけどね」

「元は、雇われたクロアチア兵が生きて帰るため首に巻いていたスカーフがもとと言う説があるよ。もう一つはフランスのファッションだな」

 この人は、この前の経済産業省の人だな。

 資源調査か?

「へーそうだったんですね。知らずにしていました。ただまあここでは、奴隷に見えるようですよ」

「そのようだね。それで皆倒れているみたいだけどどうする?」

「シャジャラ。一人起こして、誰か連れてくるよう頼んでくれ。約束の30分前だが、案内がないと遅刻してしまう」


 さっき偉そうに叫んだ奴を起こし、はいお姉さま状態にする。

「シウダー王国並びに日本国。それに諏訪王国だどこに行けばいいのか聞いて来てくれ」

 俺が命令すると、走っていく。


 10分程度待つと幾人かの偉そうな奴が、兵を連れやって来た。

 だが、シウダー王国の王と王妃を見ると、兵は止まる。


「お久しぶりでございます。シウダー王国。アルチバルド・スサテラ・シウダー様。そして、王妃ステファニア様」

 すこし、背の高い変なメガネをかけた女の人が挨拶する。

 そして、横に居た男も

「お久しぶりでございます」

 と言って、手を差し出して来る。

 挨拶は握手なんだ。


「アトロ・ニスカヴァーラ代表。お元気そうで何より」

 王がそう言うから、この人が一番偉いのか。


 続いて、王が

「異変でこちら、地球へと我々が来たようだ。原住の国家、日本国とそちらは、我々と同じく別の星からやって来た国だが、諏訪殿は日本人だよな」

「そうですね。まあ諏訪王国。国王諏訪真司だ。代表殿よろしく頼む」

 そう言って握手をする。

「日本国外務省。佐々木雄太です。よろしくお願いします」

 そう言って握手をする。

 外務大臣は、今回危険かもと言うことで多分逃げた。


 にこやかだった代表が、突然表情を変えて聞いて来る。

「あの空飛ぶものは、どちらの国が所有を?」

「あのヘリコプターは、わが日本国の所有物です」

 そう聞いて一瞬代表の目が鋭くなる。

「なんと。素晴らしい。我が国でも風魔法を用いて空飛ぶ乗り物を開発中ですが、いまだ実用化ができていません。一体どのように制御を行っているのか、ご教授頂きたいものですな」

「そうですか。残念ながら国家機密ですので、軽々にお教えすることはかないません」

「それはまあ。そうでしょうな。ではどうぞこちらへ」

 案内されていく前に、シールドをヘリに張っておく。

 新開発、空気透過性シールドだ。

 スリット状のシールドを、縦に展開して2重に張る。

 その時、塀に使われる大和張りの仕組みを使い、隙間を埋めるように張る。

 これで長時間でも、隊員さんたちが、頭痛になることは無いだろう。

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