第42話 方針会議

 シウダー王国の連中が、病院へ行っている間に、俺たちと日本側とで会談をする。


「現状で分かっているのは、シウダー王国の領土内で、セトプレコウグニアス共和国が画策し、内乱を起こさせようとしていたこと。それと、大陸の中央部に大きな湖ができていて、そこで何か実験を行っている。いや、していたこと。それとその場所は古からの伝承で魔王が封じられている事。これは、現場の4方位に時空へと干渉する魔道具が設置されていたことで、今現在、情報として信憑性が上がっています。現在壊れて動作していませんが、これが現場で、共和国が何かをやった結果であれば、非常にまずいことになります」


 そう言いながら、撮ってきた写真をテーブルに並べる。


「次は、シウダー王国を含めて教育と医療問題です。非常によくない。日本から人材を派遣していただけませんか?」

「それは、要望があれば出せるだろう。後は経費だな? こちらからばかりだと話も通しにくい。そちらから出せればいいのだが、何か出せそうかい?」

「それが、楽しいことにあの大陸。昔は火山活動が活発だったらしく山脈が幾重にもなっているでしょう。その中にカルデラのゆがんだものや、噴火口跡が潰されたものがあります」


 そう言って、精製済みの金属の小石? をざらざらとテーブルの上に出す。

 中には、直径3cmほどのダイヤ原石もある。

 混ざり物やクラックがあるため、値段は安そうだが。


「これは、この銀色のは?」

「確かニッケルです。ほかに金銀銅。それに山脈ができるほど、隆起しているので地層が縦になっていて、色々出ますね。さらに朗報です。我が魔王国の土魔法師を使えば掘る必要がありません。製錬しさらに精製した金属がそのまま抽出できます。共和国側で産出される金属その他。当然、逆側でも同じ、種類に差はあるかもしれませんが、シウダー王国でも埋蔵されていると言うことですよ」


「おおすごい。話しは通してみるが、問題ないだろう」

 そのセリフを聞いて、おれは安心し、テーブルの上に出した金属を片付けると

「あっ」とかいう声が漏れる。


「ああ、各種類サンプルにお渡ししましょう。預かり証をお願いします。検査用にちょっとなら削っていいですから」

 そう言って、再び出すとにこやかになる。

「それはありがたい」

 そう言うのは、経済産業省の人かな? 最近ここに来る人間がだんだん増えてきている。


 魔王国側の大木も、苗を植えシャジャラのような、植物に干渉できる術者が魔力を与えると、数か月で大木が出来上がる。

 この木は、純粋な植物ではなく。よく言われるトレント的な魔物の一種のようだ。

 それに目を付け、日本から調達の意志がこちらに来ている。

 ただ非常に硬く、加工は難しいため、依頼を聞いて魔王国側で柱なら柱として加工をして出荷している。こっちでは大昔から建材として使っているからな。

 そのおかげで、民間業者が俺の町まで線路を引いてくれるようだ。


 まだ一般人の入国は禁止されているが、将来的には観光客も来るかもしれない。何か名物を考えよう。居酒屋で漫画肉だな。しかし最近は日本側でも食えるか。

 リアル冒険者もいいが、マニアしか来ない気もするな。

 モンスター虐待だと言いそうだしな。

 そう言えば、どこかにダンジョンがあると言っていたな、あそこの管理は四天王のライモンドだったな。今度聞いてみよう。


 まあいい。

 そんなこんなで、日程を決め。威圧と逃走を考えてヘリで共和国へと向かうことにする。

 ただ、国境に兵の詰め所があるらしく、そこに先触れの書類を渡しておく。

 このやり取りは、古からシウダー王国と共和国側で行われている慣習にのっとっているから問題はないだろう。

 問題は、馬車ではなくヘリだという点位だ。


 あと懸念としては、共和国側はアメリカと近い。接触してきていなければいいが。

 同盟など組まれていると、面倒なことになる。



 そんなころ、大陸の中心にあるまだ名のない大きな湖の底。湖底からさらに数十m下に埋まっていた石のような物。

 封印が解かれ、魔素に触れたことにより変化が起こる。

 静かに、脈動が再開され始めた。



 共和国。中心都市セントラリスの中央議会会館で、代表アトロ・ニスカヴァーラが書類を眺めている。

「シウダー王国の王と王妃が、客人を連れてやってくるそうだ。いつもは人を呼びつける奴らが、珍しいものだ。向こうで内乱を起こすのは失敗しと言う報告だったな?」

「はい、代表。そう報告を受けております。それと、濃縮実験装置の跡地で人外の輩が徘徊をしているらしく、いかが対応いたしましょう? もしや伝承の魔王の復活でも起こるのなら警戒が必要でちょう。失礼いたしました」

 詰襟の様なスタンドカラーのデザインをした、ダークな衣装に身を包も。

 もともと工業中心のお国柄。男女とも衿までぴっちりとした服が多い。

 そして、常に暗殺などの罠を見破るため、高倍率拡大機能付き広範囲波長対応補正眼鏡をかけ、一見びしっとしているが大事な所で噛む。


 このメガネは、拡大と望遠。それに付属して、各波長の音や光を可視光に変換して見ることができる。

 破裂式魔道具のトリガーが、赤外線や音波を使って人を感知して動作する。 

 そんな装置が多いためだ。

 これを掛けると、人間など顔や手に血管が描き出され、非常に気持ちが悪い。


 そして彼女の欠点の様な、言葉をかむ事。

 これは、友人にあなたは隙がなさ過ぎて、もてないと言われ、25歳を超えてから始めたキャラつくりである。

 痛いとかどうこう言ってはいけない。

 何に対しても、彼女は一途で真剣なのだ。


 セントラリスの中央議会代表秘書官。

 ビルギッタ・ラポラ。

 彼女は、こう見えて28歳。色々なバランスが難しいお年頃。


 セントラリスでは、女性は20歳から25歳の間で皆結婚をする。

 これは過去の偉大な研究者アードルフ・コルホネンの残した研究による。

 女性が未成熟で妊娠出産では、リスクが高く母体も危険。

 かといって、35歳を超えても身体的負担が大きい。

 成熟し、体に柔軟性がある20台に出産すべし。

 そんな論文が発表され、それが伝説のように守られている。

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