第37話 シウダー王国 王都 その2
「はっ、いやしかし、封蝋もない親書と言うのは」
「それは君が無知なだけだな。君の軽はずみな行動で、今現在、王都が消滅するところに足を踏み込んでいるがどうするのかね」
「王都が消滅?」
「ああ君が先ほど話していたお方。彼は紛れもない他国の王。それも強力な魔王諏訪様だ。どう責任を取るつもりだ? そもそも取れるのか?」
「ひっ、魔王?」
ごく弱だが、俺の威圧でプルプルしていたが、さらにひどくなる。
「どうして、男爵様。魔王と一緒に行動をして、いえ、なさっているのでしょうか?」
「それこそ、王に言う前に君に言ってどうする? 君はそんなに偉い立場なのかね。王より上と宣言するとは不敬だな。どれ私の名で斬罪にしようか?」
「あっいや。お待ちください。すぐに王へと取次ぎを行います」
手のひらを返し、うだうだと言っているが、先ほど女のくせにと罵られたフィオリーナが、よよよとウソ泣きをしながら俺にもたれかかって来て、ずっとスマホで撮影をしていたまことに押しのけられている。
画像が揺れるからやめなさい。
やれやれと思いながら、俺は宣言する。
「いやいい。すでに君の考えは分かった。王として、ここの国と言うものを君の態度を通して十分理解した。今後、対等ではなく属国として扱おう」
大臣に目配せをして、全員チヌークヘ乗り込む。
「何だありゃ?」
先ほどのやり取りであたふたしていた兵たちが、俺たちが乗り込み後部ハッチが締まり始めてその存在を認識する。
砂漠地が多いため、土色に塗られた巨大な機体、それが人工物だと思っていなかったようだ。
双発のターボシャフトエンジンに接続されたタンデムローターが回転をはじめ、ダウンウォッシュが発生して周辺に暴風が発生し始める。
騎士の乗って来た馬たちは一目散に逃げる。
機体は上昇を初めて、一気に王都へとむかう。
飛び去った空を眺めていたが、その異様な現実に、さっき言われていた男爵の言葉が頭の中に蘇る。
『君の軽はずみな行動で、今現在、王都が消滅するところに足を踏み込んでいるがどうするのかね』
「あっあっあっ、やばい本物だ。あんな魔道具など見たこともない」
慌てて馬を探すが、周りには一頭も居なくなっている。
文字通り一っ飛び(ひとっとび)で王都の上へと到着をする。
マイクを使い俺は叫ぶ。
「シウダー王国。アルチバルド・スサテラ・シウダー王。我は魔王諏訪なり。貴国において需要と思える用件を持ってきた。下の騎馬訓練場に降りるが手出し無用」
そう叫んで、勝手に降りる。
返事など爆音で聞こえないしね。
まだ風が強いため、矢は撃てないはず。
まあ警戒しながら、皆が降りる。
フィオリーナが挨拶でもする気だったのか、俺の前へ一歩出ると、前は抑えているが、後ろ側が思いっきりめくれ上がる。幸い、皆周りを囲む兵を警戒しているため気が付かれなかったようだが、魔法でフィオリーナの周りにシールドを掛ける。
ピンクの服だから、下着もピンクでそろえるんだな。そんなバカなことに感心する。
フィオリーナは軽くカーテシーをきめると言葉を紡ぐ。
「オルフェーオ・ペルディーダ伯爵の娘フィオリーナと申します。発生した異常現象の報告と、この機に乗じたセトプレコウグニアス共和国の暗躍について報告があります。そしてこの方々は、近隣の国。各代表の方々でございます。拝謁いただけますようお願いいたします」
すると、向こうで大きな丸が作られた。
それを見て、エンジンを切ったのだろう、ローターの回転が徐々に遅くなってくる。
「さて一番立場が上なのは、諏訪さんですね。先頭でお願いします」
「わかった。言いたいこともあるから行こう」
近衛だろうか? 鎧を着た集団に囲まれ男が二人立っている。
「どっちが、王かは知らんが先触れに出した我が兵を開放してもらおう。一応礼を尽くしたつもりだが、他国の使いをいきなり捕らえるとは度し難し」
殺気は込めず、威圧を掛ける。
俺がそう言うと、背の低い方が慌てる。
「すみません、なにか手違いがあった様でして」
手招きをして、まことを呼ぶ。
スマホで、動画を再生して先ほどの流れを見せる。
「ここれは、魔道具ですか? 絵が動いて声が」
「ああそうだ。事情が分かったと思うが、どうするね。さっき動画の中で紹介されたが魔王諏訪だ。よろしくな」
そう言って、手を突き出す。
背の高い方が、王だろうと思ったら当たりのようだ。
「シウダー王国。アルチバルド・スサテラ・シウダー王です。お手柔らかにお願いします魔王様」
「それはそっちしだいだ。だろ」
「いや。はいそうですな。申し訳ない。事情は分かっただろう。使者様を早く解放してこちらへ。いや城のホールへお連れするんだ。早く」
王が指示すると、慌てて走っていく近衛兵。
そこからは、招きにより立派な長テーブルに向かい合い座る。
お誕生日席には誰もおらず俺の前に王が座っている。宰相は座らず後ろに控えている。
俺の後ろは、シャジャラとまことが控えている。
そして、やっと話が始まる。
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