第34話 本当の黒幕

 ハルトヴィン・パトリツィオ伯爵を無事捕まえて気を抜いた瞬間、

膨れ上がる魔力を感知する。


 瞬間的に、ヘリを含みシールドを展開する。


 すぐ後、なぜか領主の館が吹き飛び、館を造っていた素材、高質量の石が空から降り始める。


 その時、混乱乗じて町の門に向かい、人知れず馬車が一台走って行った。




 日本を拡大するような形で転移して来た大陸。

 現地ではテラグランデと呼ばれていた、大きな土地と呼ばれていたこの地。

 治める国は日本に近い側シウダー王国。

 アメリカ側は、セトプレコウグニアス共和国

 両国に挟まれた中央に広がる砂漠地帯と、それを挟むような南東から北西に伸びた山脈。

 日本の関係者が衛星画像で確認をしたとき、目の様に見えた。

 なぜなら、中央の砂漠には大きな湖が出来ていた。

 いや今まさに、できて来ていた。


 ここは本来中立地帯だったが、セトプレコウグニアス共和国。

 その中でも中心的な国。セントラリスが秘密裏に実験をしていた大規模間魔法発動装置のコア部分。魔力加速器の実験を行った。


 今回三つの世界が重なる時に、被害を拡大させる要因となった一つ。

 このコアが、稼働し始めると同時に、セトプレコウグニアス共和国はこの大陸に覇権を求めた。

 セトプレコウグニアス共和国の資源は、技術と鉱物そしていくばくかの海洋資源。

 偏西風の影響で雨が少ない。


 一方、シウダー王国は国境の山脈と海側、国の中間に少し低い山脈が存在する。

 山脈と山脈にはさまれた内陸は、砂漠があるが海洋側は湿潤な気候。

 それを利用する農作物の生産で潤っている。


 当然、膨大な金額を投じて、セトプレコウグニアス共和国は輸入をしている。


 自国で払う金額を睨み、数年前に中央議会で誰かが言った『もったいないな』の一言。

 これにより、賛同者が集まり強力な魔道具開発が始まった。


 到底人間には扱えない大規模せん滅魔法。

 それを実行するためには、瞬間的に大量の魔力を必要とする。

 それを発動中に周辺の魔素を集めて魔道具につぎ込むのは、通常の空間では、物理的に無理であり、その命題を解決する方法。

『魔素を高濃度にすることが出来れば解決する』

 高名な研究者の一言。


 造られた加速濃縮器は、一般的に聞かれるマグネトロンやクライストロンのような極性によるビーム加速器よりは、積層タイプのターチャージャ的な構造だった。

 それに、各種の魔道具を組み合わせ、魔素を魔力として加圧と加速を行う機能が追加されていく。

 その結果、通常空間では発生しない高密度な状態、高温高圧下で存在する臨界状態。つまり液体でも気体でもない特性を持った物質が出来上がる。


 それにより、小規模だがせん滅魔法の実験は成功して計画は進んで行く。


 共和国側から、辺境に存在するいくつかの町。

 そこを治めるいくつかの領主へ助言と力添えが行われ、王国への反旗を計画させていく。




 そんな折、次元が重なり魔王の治める惑星テロラアリエナ側から、膨大な魔素が流れ込んできた。

 当然、加速濃縮器はその時臨界を超え、ため込まれた魔力は臨界を超え暴走を始めた。

 それは本来、この星そのものを破壊するレベルのものだったが、今発生していた現象に食われて大陸がごっそり転移を行った。


 その歪みを埋めるため、日本を挟んで反対側。

 つまりユーラシア大陸の大部分がテロラアリエナへと飛ばされた。

 連鎖する転移。ところてん式で、3つの世界で膨大な魔力を使い、大陸レベルの入れ替えが今回発生をした。


 まあそれにより、暴走してテラグランデの中心部にはクレーターが出来上がった。


 実際は、暴走が始まった時に、惑星センダスサテラを管理する女神スサーテラ様。

 彼女が力を逃がすため、地球側の神にコンタクトを取ろうとして、なぜか真司が受信して『良いよ』と言ったのがすべての始まりだが。



 さて話を戻すと、この暗躍の為に計画を実行していた共和国の人間たち。

 アンドベリーの町を攻撃いざ実行と思ったら、丁度異変が発生。

 この機に乗じて、王都から確認の視野が来る前に事を済ませペルディーダから、領地を奪ってしまえと計画が実行された。

 タイミング的には、非常に理想的。


 だが、訳の分からないものが空から飛来して、あっという間にパトリツィオ伯爵が捕えられた。

 そんな理解できない状態が発生して、共和国の人間たちは目くらましに領主の館を破壊して馬車で逃げ出した。


 これが顛末である。


 捕えられた、パトリツィオ伯爵が「はいお姉さま。喜んで」とシャジャラに言って知っていることをべらべらと喋ってくれた。


 関係者は、顔を見合わせ「次は王都だね」あきらめ顔でそう言って、否応なく予定が埋まって行く。


 フィオリーナは、

「どうせ近く王都に赴き、父オルフェーオの死亡の届けと、あなた様への爵位譲渡の承認を頂くつもりでしたし、ついでですわ」

 そんな事をにこやかに微笑みながら、おっしゃる。


 さてさて、魔王として赴き、波乱が起きないか一抹の不安はあるが、俺は宣言する。

「そうだ 、王都、行こう」

 周りからは、言うと思ったよ。

 諏訪さん。実はもっと年上じゃないのと言う顔をされた。

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