第33話 暗躍と黒幕潰し

〔人間、自分で何かを判断するときには、まず自身が経験したことや、覚えている経験により判断をする。未経験な事や習っても身についていないことは理解できない。よく若い兵たちが指揮官が変わった時に、そんなやり方は知らないとか言ってつっかって来るでしょ。それがどんなに優れていても。パトリツィオ伯爵には、自業自得とか因果応報を、この際実際に体験をして勉強をするためたっぷりと経験していただきましょう〕

 そう言って、俺は説明を始める。


 そうはいってもすることは単純だ、まず後ろで命令をしている奴を捕まえて事実確認をする。

 そこで間違いが無いようなら、乗り込み成敗をする。


 ねっ、簡単でしょ。言うだけなら。

 実際やるのは大変だが。


 まずは、シャジャラに習いながら幻術を自身にかける。

 塔に上り、適当な所でさぼっている兵で、装備のなるべく立派そうな奴を拉致しよう。

 見つけたやつの傍に転移をして、まず一人捕まえる。

 そして、もう一人。



 牢へぶち込み、自分の身分と家名を聞き出す。

 俺じゃなくて、シャジャラが。

 いやあ、シャジャラの精神系魔法って本当に便利なんだよ。

 あくまでも、使う側からすれば。


 そばで見ていると、じっと相手の目を見て、

〔お前の名前は? 誰に仕えている? 今回命令を出したのは誰?〕

 そう言ってきくだけ。

 そう聞かれると、相手は突然目をキラキラさせて、はい、お姉さま。何でも聞いてください。そんな感じでしゃべり始める。


 聞いたことをざっと覚えて、紋章を間違えないように装備を着込む。

 顔を幻術で変え、捕まえたやつらに成りすます。



〔報告いたします。西側の壁で、通用門のようなものは見当たりませんが、大勢の歩くような足音が聞こえます。地下に通路の類があるのかもしれません〕

 俺たちは、本陣のテントへ入り込むと、パトリツィオ伯爵長男ゲーアハルトに報告をする。目の前の奴が、聞き出した特徴に一致する。多分間違いないだろう。


〔そうか。見つければ手柄だな。後背を突かれるところだった。兄貴に手柄を渡す必要もないな。俺が行こう〕

 あれ? 兄貴に手柄? 外に出て見回すと、もう一段奥側にもう少し大きなテントが建っていた。

 いやこの辺り、いくつもテントがあるんだよ。さっきのが一番奥だと思ったのに。まあいい。こいつは、次男のフォルクハルトの方なんだろう。

 パトリツィオ伯爵は、息子を二人とも送り込んで、全滅でもしたらどうするつもりだったんだ?


 予定が少し狂ったが、付いて来た20人ほどの兵を眠らせる。

 そうして、フォルクハルトを捕まえる。



 取って返し、もう一個奥のテントへと向かい同じことをする。

 塀の方には、先ほどの兵が眠っているので、予想される出口はこちらでしょうか? そう言って案内をする。

 周辺探査に兵が散り、護衛に残った残り二人もろとも、ゲーアハルトも眠らせる。


 よし。鎧を着たままテント村へ再び移動してその辺りに建っているテントに向けてシャジャラの発する思念波を俺が増幅してまき散らす。

〈作戦は終了した。これ以上は、王都からの視察が来るかもしれん。速やかに撤収を行え。繰り返す。攻撃をやめて撤収せよ〉


 まき散らしが終われば、急いでその場を離れて様子を見る。


 うん? おお。すごい勢いでテントが壊され始めた。

「よし成功だな戻るぞ」

 そう言って、シャジャラの手を取り領主の館へと戻る。


 急いで装備を脱ぎ、幻術を解く。

 一度目に、フォルクハルトを抱えて飛んで来たら、危なく味方の兵に攻撃されそうになったからな。



 さてと確認だ。

〔お前たちに、アンドベリーの町を攻撃しろと命じたのは誰だ?〕

〔はい。父上でございます。天変地異は場所によって被害が違うものだ。アンドベリーの町を攻撃。破壊と略奪をして来いと命令しました〕


 それを聞いたロランドが、走って来て殴ろうとするので止める。

〔まだ駄目です。こいつらを連れて、パトリツィオ伯爵の領都に行こう〕


 さて、兵たちが戻る前に片を付けよう。


 またチヌークヘと乗り込む。今度は、ラファエーレさんやロランドさんも一緒だ。ロランドさんは、ずっとバカ息子二人をにらんでる。

 どうも仲のいい友人が、矢を受けて怪我をしたのが頭にあるらしい。


 ロランドさん。今回の騒動が起こった早々、友人が矢を受けて運ばれたと、連絡を受けた。

 あわてて救護所へ行くと、そこにはけが人だけではなく、ほかにも亡くなった兵が多数居た。

 そこら中に、けが人と一緒に寝かされており、初めてそんな状況を見たロランドさんは、友人の姿を見るまでかなり動揺をしていたようだ。


 急な攻撃が来ると一気にけが人が増えるため、診察後亡くなっても速やかに別室へと言う訳にもいかないらしい。


 矢には毒とか使われているし、かすっただけでも結構やばいんだよね。

 今回話を聞いて、作戦に入る前に治療をしたよ。




 パトリツィオ伯爵の領都へ到着して、降りられそうなところを探す。

 やはり騎馬練習場があったためそこへ着陸をする事にする。


 着陸前に少しホバリングをしてもらう。

 マイクを使い〔この機には伯爵の長男ゲーアハルトと次男フォルクハルトが乗っている。攻撃はするな!〕そう言って2度ほど念押ししながら2人を一度ずつホイストで降下させて確認をさせた。


 着陸後、さらにマイクでハルトヴィン・パトリツィオ伯爵を呼び出す。

 顔を見せた瞬間、瞬間移動で捕まえて眠らせる。


 その後、ラファエーレさんとフィオリーナが、周りの兵に対して、身分を明かし周りを囲んでいる殺気だった者たちを鎮める。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る