第32話 情報の把握と魔王の選択
とりあえず、状況を聴こう。
〔初めまして、諏訪真司と申します〕
そう言って、ベネデッタのお父さんに挨拶をする。
〔ベネデッタの父。ラファエーレと申します。ベネデッタこの方は? どういう方なのだ?〕
〔それについては、私が説明いたしますわ〕
そう言って、フィオリーナが傍に立つ。
〔あなたは確か、ペルディーダ家の〕
〔ええご無沙汰をいたしております。フィオリーナですわ。あの異変で父が無くなり私がペルディーダ家を継ぐごとにいたしました。そしてこの方が命の恩人ともいえるお方で、魔王として国も治められています。私も、今後真司様と共に家をまとめていただきたいと考えています〕
〔魔王? 共に家を?〕
ベネデッタの父さん。フィオリーナの説明を受けて、完全に混乱をしたようだ。
〔まあまずは、この町の状況と打開策が先だな。話をお聞きして、手助けをしてもよろしいでしょうか? アンブロジーニ殿〕
〔それはこちらもありがたい。私のことはラファエーレと呼んでくださいませ。魔王様〕
ありゃ? 変な方に誤解をしたか。
〔こちらへどうぞ〕
ヘリの見張りに3人ほど残して、皆が領主の館にある会議室へと集まる。
長いテーブルの両側にアンドベリーの町側と、俺たちプラス自衛隊関係者が座る。
〔それでは、ラファエーレ殿最初から説明をお願いいたします〕
〔はい。それでは。事の起こりはあの天変地異、地面が揺れたときから6いや7日後でした。周辺の村人たちが逃げて来て、軍がこちらに向かってきているようだと連絡が入りました〕
〔すると、異変が起こった直後に、行動を起こしたと言うことですかな?〕
1等陸曹杉田さんが、地図とにらめっこをしながら、言ってきたので俺が通訳をする。向こうの言う言葉は、ベネデッタが日本語で通訳をしている。
〔なんと。それは本当ですか?〕
ラファエーレさんが驚く。
とりあえず、目の前の敵だとされる、隣の領地を治めているパトリツィオ伯爵。
その領地は、ペルディーダ家が治める領地の4分の1程度しかない。
同じ爵位で差がついているのが許せない様で、何かと言ってフィオリーナのお父さん、オルフェーオさんに突っかかっていたようだ。
杉田さんが、地図を差しす。
「多分ここが、パトリツィオ伯爵の領都だと思われます」
地図の目標点。領都を指し示す。
「そして、ここがこの町。途中、向こうの領に村が3つ。村々の距離がおおよそ15km~16km。途中村々で、人を徴兵していきながらおおよそ50km」
パトリツィオ伯爵領都と最初の村はちょっと距離がある。
「同じく最後の村と、この町所属の村の間は緩衝地帯なのか少し広く20km。そこからこの町まで間にも村が2つある。距離は同じく15kmほど。つまり全体で、100kmほどあると言うことです。6日~7日で5千から6千人の集団が移動するのを考えると、よく来れたというスケジュールでしょう」
その情報を、通訳して説明するが、ラファエーレさんは衛星写真と地図に驚いているようだ。ああそりゃそうか。昔なら、完全に国家機密に当たるようなものだという認識だったっけ?
〔これは一体? こんな緻密な絵が…… 町中の家々まで描かれている〕
ベネデッタのお兄さん。ロランドさんも目を丸くしている。
〔まあそこは、気にしないでください〕
説明は面倒だから投げる。
〔さて問題は、この状態をどうやって収めるかですね。私としては、なるべく人は殺したくないし……〕
そこまで言ったところで、ロランドさんが怒鳴り始めた。
〔ふざけるな! いや、失礼申し上げました。不躾ながら、魔王様はこの町に来られたばかりでご存じないでしょうが、すでにこの町の兵に死傷者が出ている。今更手は引けません〕
真っ赤になりながら、怒りを抑えているのだろう。
肩を震わせながら、ロランドさんは俺に意見をする。
〔殺したくないと言うのが不思議ですか?〕
プルプルしている二人に聞いてみる。
〔お恐れながら、伝承にある魔王様のお言葉とは思えません〕
今度は、ラファエーレから、嫌みかな?
〔まあ理由はある。自身が嫌だと思う気持ちが一つ。もう一つは奥側に居る装備をまとった兵士たちも雇われた身。当然その前に押し出されている農民たちも参加をしないと不都合があるため参加というのが実情でしょう〕
そう言って二人を見る。
〔それはそうですが、納得して参加して、実際にこちらに被害を与えたのは事実です〕
ロランドさんは、まだ力が入りプルプルしている。
〔まあ実際私も、うちの家族に何かがあれば容赦しないと思いますが、ここでは農民たちに被害を出さず、向こうが考えたであろう計略をそのまま頂こうと思います〕
そう言って、二人に地図を見せる。
〔お二人には申し訳ありませんが、やはり下っ端は、こちらの領地になった場合、一生懸命働いていただくために何もしません。パトリツィオ伯爵は、災害の発生でこの町が崩壊をしていたから、助けただけだと言い訳をするつもりでしょう。急いだのは、王都からの確認が来るまでに、すべてをでっちあげるためでしょう〕
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