第31話 緊急案件

 俺は外に出た後、橋の手前で待っている自衛隊員に話をしに行く。

 このシエルキープの町で起こっていることは、アンドベリーの町でも起こっている可能性がある。


「早急に、町の位置を探して座標を特定してくれ」

 そう言った後、ここでの領主の状態を説明する。

「なんなら、警戒させないとかそんな事は良い、ヘリでもなんでも使って急ごう」

 そう言うと、自衛官も状況を理解したようで速やかに連絡を取ってくれた。


「いざとなったら、制圧もペルディーダの名前を使ってしてもいい」

 そう伝えて、皆の元へ戻る。



 皆を従えて、領主の館を執務室まで一気に走って行く。

 途中に居た奴らは、シャジャラの力で無力化していく。

 シャジャラは、動物だけではなく、人間もある程度コントロールできる。


 制圧した後、領主マリウスさんに確認をしてもらう。


 今回起こったのは、神による失敗。

 誰のせいでもない。

 それを悪用して、家宰ルイトポルトが謀反を企てた。


 そう言うストーリーを立て、実際の話を混ぜる。

 神の管理する、3つの世界それがちょっとした誤りで混ざってしまった。

 俺が神からの啓示を受け、その混乱を治めて回っている。


 なぜか民衆にも俺が大声で説明すると、あっさりと信じてくれた。


 領主は元通り、マリウスに任せる。

 この事は、上位の貴族ペルディーダ家も承知している事だと説明をした。



 僅か半日で、自分の準備した絞首刑台で、ルイトポルトは吊るされることとなった。



 そんな騒動を片付け、後のことをマリウスとフィオリーナが相談中、自衛隊員から情報がやって来た。

 端末を操作して、見えた城郭の町。


 ズームをすると、城門が閉められて、周りに民衆とその周りに鎧を着た兵士。

「うーん。5千から6千位集まっていますね」

 ベネデッタに見せて、アンドベリーの町かどうかを確認する。


〔これを見てくれ、アンドベリーの町かい?〕

〔この館そして通りの形。間違えありません。真司様〕

〔この周りにいる民衆たちは何だい?〕

〔これは、外側に居るのがどこかの兵で、壁側に居るのは徴兵された農民たちでしょう〕


〔すると、どさくさで、どこかが攻めてきていると?〕


〔そんな事をするのは、隣のパトリツィオ伯爵でしょう。うちの父とは折り合いが悪かったので〕

〔分かった。持ちこたえてはいるようだが、急いだ方が良いだろう〕

「距離は遠いのでしょうか?」

 タブレットを操作しながら返事をくれた。

「そうですね。おおよそ100kmほどあります」

 そう言ってすぐ後、何かを思い出したようだ。

「そう言えば、さっきの連絡で、チヌークが来るって言っていました」

「なんですかそれ?」

「輸送用ヘリです」

「じゃあそれで行きましょう」


 そうして俺たちはあわただしく、出発準備を行った。


 兵たちの騎馬練習場に無事着陸できた。


 主要メンバーたちも全員乗れるようなので車を、いじらせないようにマリウスさんにお願いをする。


 そうして、一路アンドベリーの町へと向かった。



〔やれやれ。もう命が無いと思ったが、アドリアのおかげで命拾いをしたようだ。お前は大丈夫か? かなりひどい攻めを受けていたようだが〕

〔あなた申し訳ありません。あのルイトポルトに汚されてしまいました。町が落ち着けば私は出ていきたいと考えています〕

〔それは、力のない私のせいでもある。体はまだどこかおかしいのか?〕

〔いいえ。使徒様のお力で前よりも調子がいい位になっております〕

〔私もそうだ。すべて穢れは払われたのだろう。出ていくと言わず助けてくれないか?〕

〔よろしいのですか?〕

〔ああ〕



「あれかな?」

「そうです。目的地点確認。アンブロジーニ様の指示により、領主の館北側の騎馬練習場へ着陸をする」


「あー気が付かれたな。追っかけて来るし、弓を構えているのもいるぞ」

「弓ならある程度ダウンウォッシュで当たる事は無いと思いますが、何とか説得できますか?」

 ベネデッタにマイクを渡す。

〔これで、外に聞こえるらしい。説得をしてみてくれ〕

〔承知いたしました〕


〔アンドベリーの兵士諸君。私はベネデッタ・アンブロジーニ攻撃をしないでください。父ラファエーレは健在ですか? ベネデッタが帰って来たと伝えてください。今から下に降りますが、攻撃をしないように〕


 周りの様子を見ながら下降をしていく。

「攻撃が停まりましたね」


 着陸しても、まだローターは回しっぱなしだ。


「俺も降りますので止めて大丈夫ですよ。攻撃はシールドで防ぎます」

 いい加減音が凄いんだよな。

「魔王様。私もいますので大丈夫です」

 横に、シャジャラが出て来る。


 後部ハッチを開き皆が出る。


 向こう側で慌てて誰かが出て来たが、怖くて近寄って来れないようだ。


〔お父様。お兄様〕

 そう言って、ベネデッタが走って行ってしまった。

 俺は、シールドを張る準備はしておく。


 だが、話は通じたようだ。

 慌てた感じで、男が二人走ってきてフィオリーナに頭を下げる。


〔ご無沙汰いたしております。ラファエーレ様そしてロランド様〕

 フィオリーナも、見知っているようだ。

 さて話をしようか。

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