第29話 砂漠を行く

 不思議な場所を、今俺は自衛隊の車に乗って進んでいる。


 右側には緑豊かな山が突然途切れて、いきなり砂漠? が始まる風景。

 よく見る砂の砂漠ではない。岩山と砂。草の生えていない荒れ地。


 砂や岩石の多い砂漠は、岩石砂漠と呼ばれ、砂漠として有名なサハラ砂漠も全体の80%はこのタイプの様だ。

 サハラと言われてよく見る写真。

 砂丘の部分を切り取った写真。あの砂の多い砂砂漠は20%で砂丘が見られるのは、さらにその中の一部だそうだ。


 なぜこうなったかというと、衛星画像とメイドさんの一人。アドリア・デマルティーニの記憶から書かれた地図を突き合わせ、シウダー王国のペルディーダから、おおよその方向と距離で街が見つかったようだ。


 その為、家宰さんやフィオリーナ。

 家において行くわけにはいけないので、メイドさん2人も連れて旅行?中。


 不思議なもので、少し前までここは太平洋だった。


 走り始めてすぐ、街道ぽい道を発見した。

 それに沿って、東と向かう。


「結構揺れるが大丈夫か? 後ろを振り返ると、みんな平気そうで寝ていた」

「どうなんでしょう? 皆さんが乗っていた馬車に比べれば揺れが少ないのではないでしょうか?」

 そう言ってくれたのは、運転している自衛官の女性隊員。

 乗員に女性が多いから、気を利かせてくれたようだ。

 輸送隊所属で柴田3曹。


 そして、後ろでけん引している、トレーラーの中は居住空間になっている。

 これは先日依頼を受けた、日本の中心でシールドを張ろう、という仕事の報酬としてもらった。

 あと同伴者として、外務省の佐々木さんも来ている。


 人数の関係と学校が始まったため、まことは付いてこられず出発時機嫌が悪かった。当然のように「おみやげよろしく」と言われたが何があるんだろう?


 そうして、しばらく走るとポイント1が見えてきた。

 ここは、領の境界となっており、兵がいるかもしれないと言っていた場所だ。


「うーん。居るなあ。それに敵意が強いな。柴田さん少し手前で停車してください」

「はいこっちの領内なら大丈夫ですよね」

「ええたぶん。おいフィオリーナとアルチバルド起きろポイント1についた」

 よだれを流して寝ていたな。


「もう到着したのですか。なんと。間違いありませんわね。アドリアあなたも行きましょう。デマルティーニ領に入ります」

 先に出て、後ろから出てくる2人をエスコートする。

 アルチバルドお前の役目じゃないのかよ。

 家宰さん最近お仕事をしないな。

 そういや給料ってどうなっているんだっけ?


 まあいい。行こう。


 すでに、二人は俺をほったらかして先へ向かっている。

 フィオリーナが何かを取り出して兵に見せている。

〔おい、早馬を出せ。領主様に知らせろ〕

 そんな叫び声が聞こえる。

 ここから、領都シエルキープの町までは40km位だったかな。


〔通っていいのかな?〕

〔ええ、大丈夫のようですわ〕

 俺は、手を上げトラックを呼ぶ。


 乗り込んで出発するが、馬だと途中で追い抜きそうだなと野暮なことを考える。


 だが、距離が短く各村々のやり取りがあるのか、街道に人がいてこちらもスピードが出せない。


 結局、追い抜くことができなかった。

 いや楽しみにしていたわけじゃないんだけどね。

 客が到着してから、連絡が来るそんなプチ騒動。

 期待したんだけどな。

 はっ俺って性格が悪い?


 そんなしょうもない自己分析をしていると、町ではもっと大きい騒動になっていたようだ。

 中世で頻発した事例だな。

 天変地異だ! 誰か責任を取らせて神の怒りを鎮めなければ。それならば、領主の首に縄をかけて吊れ。


 今俺たちを取り囲んでいる皆の顔。

 武器を手に持ち、俺たちは次第に囲まれていく。

 まあ周りの民衆や、先触れした兵士たちの顔を見ればやる気は十分の様だ。


 皆には、車に居るように言って、俺が最初に降りる。

 ドアが開いただけで、その辺りに居たやつは下がって行く。

 怖いなら、来るなよ。


 そうため息をつきながら、頭の中で発声する言葉を選択。

〔者ども静まれ!〕

 そう言うつもりが、なぜか、

〔者ども控え居ろう〕

 そんなことを言ってしまった。


 ええい、仕方がない。

〔おれは、魔王諏訪だ。敵対するなら容赦はしない。フハハハハ…… ううんー? どうだぁ。歯向かうやつはいるのかぁ? ああーん〕

 気分は、デー〇ン小暮閣下。

 イメージお借りします。


 そんなことを考え、周りを見回しながら威圧と殺気を強くしていく。

 一般民衆は、一瞬逃げようとしたが、その場で倒れ痙攣を始める。

 やりすぎたか?


 すると後ろから気配を感じて、振り返りざま突き出された槍をつかむ。

 そのまま上に持ち上げると、兵がカエルの様に腹から地面に叩きつけられた。

 ああ、今のは痛いだろう。

 周りを見回して、威圧を解く。


 さっき先頭で、馬に乗ってきたやつの首根っこをつかみ、起き上がらせる。

〔お前が先導者か?〕

〔いえ、ちっ違います。今は家宰のルイトポルト様が、代官として仕切っています〕


〔アドリア!〕

〔はい、諏訪様〕

 窓から顔を出した、アドリアの顔がこわばっているな、どうしたんだ?

 まあいい。

〔ルイトポルトって知っているか?〕

〔はい。家の家宰でございます〕

〔じゃあ、領主の館へ案内してくれ。そいつを捕まえに行く〕

〔諏訪様。いまお車に戻るのは、少し控えていただけますと有難いのですが〕

〔どうしたんだ?〕

 ひょこっと、フィオリーナが顔を出し、

「すみません。真近であなた様の威圧を受けまして、少々粗相をしてしまいました。すぐに片づけますので、ご容赦くださいませ」


 そう言って顔が引っ込んだ。


 威圧も便利だが、気を付けないとだめだな。

 魔王たちでさえ、ひっくり返ったんだから。


 俺たちがそんな話をしていたころ、領主の館では、

〔ええい。一体ペルディーダの姫様とお前の娘は何を連れてきたのだ? ここに居ても威圧と殺気を感じたぞ。まるで伝承の魔王ではないか。馬も引いていない妙なものに乗り…… 本当に魔王か? 天変地異と言い。そうか魔王が蘇ったのだな。お前たち魔王が来た。奴らを退治してこい〕


 声をかけるルイトポルトだが、誰も動かない。

 それだけ、先ほどの威圧は強力だったらしい。

 この町は城郭都市の為、半径は1kmもない。

 盛り土をして、居を構えているため、町の入り口からでも真っすぐ見える。

 その為、威圧が届いたのだろう。

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