第27話 道を作ろう

 依頼して分かったのだが、木は勝手に動いてくれないようだ。

 大木をライモンドが、剣の一振りで切り飛ばし、配置を決めながらシャジャラが植林をして促成栽培を魔法で行うようだ。


 帰りの車に乗りながら、順にその作業を見守っていく。

 まあ一日だけで後は任せて、シャジャラを後部座席に乗せて要所要所でモンスター達を避けさせて進んで行く。


 シャジャラのご飯は、ひと月に一度くらい俺の生命力で良いようだ。


 基本的に、魔王領は今の所魔王領として国扱い。

 五分の状態で、調印を行った。

 魔王の所に、俺の名前があるのが違和感だが。

 佐々木さん的には問題が無いらしい。



 帰りも、GPSでマークをして、日本側からも工事をすることに話が決まった。

 ODA的なものらしい。

 貨幣は一応あるしな。

 魔王の臣下に、錬金術師が居て、そいつが金でもなんでも作れるらしい。


 日本側には、内緒の話とした。


 魔王領、基本的に種族ごとに食事の内容は違い肉だけだったり、草だけだったりシャジャラの様に、人の生命力や色々だ。


 能力も、さまざま。

 リーゾの様に、怪力自慢。ガルーギは起きてから聞いたが、火魔法が得意でさらに鳥に変身できるらしい。

 シャジャラは実は、生き物なら何でも操れるようだ。

 おれは、無理との事。

 ライモンドは剣士。

 元々素早い動きができる種族のようだ。



 帰りは急いでいないので、2日かけて帰り、行きとは違った雰囲気で和気あいあいと旅ができた。


 日本へ帰り、佐々木さん達も元気に帰って行った。


 まこと達も帰るなり飛びついて来て周りをくるくる回りながら俺の状態を確認していた。

 落ち着いたところで、魔王になったと言うと、まことは呆然として、テレーザやフィオリーナは当然という感じで、納得して、王になられたのならこのままシウダー王国側もお治めくださいとか言い出した。


 これ、流れに任せて決めたが日本は困るんじゃないかなと俺はいらない心配をする。


 対策室。

「なんだと? 通訳が魔王になった?」

「ええ。四天王と魔王を倒して王位につきました。これが国交関係の調印書です」

 書類には、魔王、諏訪真司の文字。


「適当にでっち上げた訳ではないのだよね」

「当然です。今現在魔王の町から道が急ピッチで作られてきています」

「完全に予想外だな」

「まあ、その方が揉めなくていいし、後の話もしやすいのでは?」

「そりゃそうですが、危険ですよね。ひょっと野心でも表に出れば」

「ああ、諏訪さんはそんな感じではありません」

「そりゃ今はでしょう? 独裁国ですよね」

「そうですね」


 メンバーは、頭を抱えて、

「一度召喚しますか?」

「いや、それはまずいだろ。日本人とはいえ正式に王になったんだろう。こちらから出向くのが筋だろう」

「それもそうですか」


「この人ってシウダー王国の町も何か関係があったよな?」

「ええ。娘が懐いて貴族になれと進めているようです」

「現れた両国のトップに収まる日本人か、下手なことをして怒らすとやばいことになりそうだな」

「シウダー王国側は、単なる中世の国で少し魔法が使えるそうですが、魔王側は皆がやばいという報告が上がっています」

「諏訪真司。すべてにおいてのキーマンか。やはり会いに行こう。人物像をはっきりさせないと良くないかもしれない」


「総理に報告は?」

「一度会ってからでいいだろう」

「じゃあそう言う事で」




〔魔王領はどんな感じでしたか?〕

〔城があってペルディーダに近い感じかな?〕

〔そうでございましたか。それでそのお方は?〕

〔シャジャラと言って、側近。四天王の一人だ。モンスター達の統制が執れるらしい〕

〔そうでございますか。シャジャラさま、シウダー王国、ペルディーダ領主が娘フィオリーナと申します〕

 フィオリーナが挨拶をするが、言葉は通じない。

 俺が間に入り説明をする。


〔そうか、よろしく頼む〕

 シャジャラはそれだけを伝えて来た。


〔真司さま、言語の転送魔法を使ってもらっていいでしょうか?〕

〔転送魔法? どうするんだ?〕

〔失礼〕

 そう言って、いきなりキスをしてきたシャジャラ。

 また何か、引き出される感じがする。


「これで大丈夫かな? どうでしょう」

「おっ日本語をもう使えるのか?」

「そう言う魔法でございます」

「他の人にも使えるのか?」

「大丈夫でございます」

 手招きをしてフィオリーナをこちら側へ呼ぶ。

 目を丸くしていたが、素直に来た。


 シャジャラはいきなり、フィオリーナにキスをする。

 じたばたするのを抑え込み魔法を使ってもらう。


「なっ何を」

「おっ行けたようだな」

 フィオリーナも気が付いたのか、

「言葉が、日本語が理解できます」

「そう言う魔法らしいぞ」

「しかし口づけと言うのは、少し」

 そう言って、悩んでいるフィオリーナはほっといて、テレーザを呼んでくる。


「シャジャラこの子にも頼む」

 そう言ってテレーザをおれが抑え込む。

 シャジャラがすかさず術をかける。

「うぐっ」

 テレーザが目を丸くする。


 いやしかし、美女同士のこういうシーンも良いな。

 何か新しい世界が開けそうだ。

「テレーザ言葉は分かるか?」

「主様これはいったい? はっ言葉が分かります」

「魔法だ。これで日本語は使えるはずだ」

「ありがとうございます」

 そう言いながら、少し複雑な顔をしている。


「さて、後はまことか」

 そう言っておれはまことを捕まえに行った。

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