第26話 魔王
中へ入ると、正面の階段状の壇上に様式美の様に、立派な椅子が置かれている。
金色に輝く立派な椅子。
そこに、股を開きけだるそうに男が座っている。
角は、額と両耳の上あたりに立派な物が3本生えている。
左手には、ワインだろうか、金色のグラスで何かを飲んでいる。
俺たちは、先導するリーゾとシャジャラに習い、頭を下げて中へと入る。
すると、当然のように威圧と殺気が降って来る。
あわてて、リーゾとシャジャラが反応するが、つい返してしまった。
謁見の間自体の空気が濃密になり、時間が止まったような静けさが空間を支配する。
目の前で、リーゾとシャジャラが倒れる。
「あっしまった」
俺はそういい、二人の状況を確認する。
大丈夫そうだが、一応治療の魔法をかける。
〔ああ意識が、飛んでしまった〕
そう言って、先にリーゾが復活をする。
すぐに、シャジャラも頭を振りながら起き上がる。
〔間近で受けるとすごいわね。あっという間に意識が暗転しちゃった〕
そう言って、なぜかうっとりとした目で俺を見る。
〔失礼しました〕
俺はそういって、みんなと一種に前へと進んでいく。
近くに、居た宰相だろうか? 鳥の頭を持った人がいたが倒れている。
〔彼は大丈夫かな?〕
〔やつも四天王の一人、ガルーギ死んじゃあいないだろ。放っておけ〕
リーゾがそう言うので、放っておく。
もう一度その場で頭を下げ、片膝をつくようだ。
それに倣おうとすると、
〔これは臣下だけだ、お前はしなくていい〕
そう言われた。
リーゾが魔王に対して、
〔この者たち、日本国の者たちです。魔王様にお目通り願いたいとの事で、本日参上をいたしました〕
そう言って、用件を伝える。
だが、反応が無い。
〔魔王様?〕
〔テスタ様〕
二人が声をかけるが、ピクリとも動かず、魔王はこっちを見ている。
思わず、見返すが? 様子がおかしい。
〔おい、リーゾ。魔王様、様子がおかしいぞ。気を失っていないか?〕
〔そんな馬鹿な〕
そう言って、リーゾが壇上へと上がっていく。
肩に手をかけ軽くゆすると。
ぐらっと体が傾き、椅子から転がり落ちて、さらに階段を転がり落ちてくる。
それでも、グラスを離さないのは立派だが、ワインまみれになっている。
近くにより、治療用の魔法をかける。
ほどなくして、魔王は目を覚ましてすごい勢いで驚いている。
〔お前は時間を操れるのか? あれは伝承で誰も使い手が居ないと思っていたのだが〕
そう言って座り込み悩み始めた。
〔魔王様。多分ですが、威圧にやられて、意識が飛んだだけでしょう〕
リーゾがそう言うと、思い当たるものがあったのだろう。
頭を抱えて、悩み始めた。
〔お前、名前は誰だったかな?〕
〔諏訪真司です〕
〔よしお前。魔王になれ。俺は負けた強いものが治めるのが決まりだ〕
〔いやおれは、この国の人間ではありませんし〕
〔そんなことは良い。強き者が治め、外敵が来れば守ればいい。それだけだ〕
そんなことを言いながら、自分の頭に乗っていた王冠を俺にかぶせた。
すると何かが、実行された感じがして光が発せられる。
〔よしこれで、全魔王に通知が成った。今この時点でお前が魔王だ〕
晴れやかに、元魔王テスタが言い放つ。
〔よし。新魔王諏訪様。よろしくお願いいたします〕
そう言って、リーゾとシャジャラが俺に頭を下げる。
日本のみんなは言葉が分からず、おろおろしていたが、いったい何がどうなったのか聞いてくる。
「諏訪さん。どうなっているのでしょうか?」
「訳が分からないうちに、俺が魔王になりました」
「「「はい?」」」
ああ、みんな驚くよな。どんな下克上だよ。
挨拶をしに来て、いきなり魔王就任。
〔本当に俺が魔王でいいんだな?〕
そこにいる、3人にもう一度確認をする。
〔もちろんです。俺は、何もせず威圧だけで敗れた。リーゾも負けたんだろう?〕
〔ええ見事に。そのにいるシャジャラも昨夜負けたし、ガルーギはそこでひっくり返っている。あとは、ライモンドだがあいつは何処だ?〕
〔お呼びしてきます〕
そう言って門番たちが走っていく。
しばらくすると戻って来た、そしてその傍らに、剣を持つ一人の男。
俺と対峙して、殺気が一瞬放たれたが、剣を俺に渡して来た。
〔魔王様、私奴(わたくしめ)に剣をお与えくださいますよう、お願い申し上げます〕
〔どうすればいい?〕
〔お好きなように、それが今後この国の形となります〕
そう言われて、何かで読んだものを思い出し、剣の先をライモンドの肩にあて、
〔お前に剣を与える。その力を存分に発揮し、私と国の剣として勤めよ〕
そう言ってから、剣をライモンドに差し出すが、少しくたびれた感じだったので浄化するイメージと魔力を加えてみる。
さらに、切れ味と素材の強化をイメージして与えてみる。
すると剣は輝き、光をまとうようになった。
一瞬剣を取ろうと、手を伸ばしてきていたライモンドだが、光を発し出した剣を見て驚く。
目を見開いていたが、跪き、両手を俺の方へと差し出して来る。
その手に剣を渡すと、ライモンドは、
〔この身命を賭し、すべて尽きるまでお仕えします〕
そう言って涙を流し始めた。
何だこりゃ。
よくわからんが、まあ形になったようだ。
〔よろしく頼む〕
それだけ言って、剣を渡す。
そうしてみんなが、どうすれば良いんだ状態なので、
〔とりあえず我が国は、日本と国交を行う〕
そう宣言して、日本語でも
「とりあえず我が国は、日本と国交を行う」
と伝える。
〔テスタすまないが、代官として治めてくれ。それと、シャジャラ。トラップを日本への道から外せ。リーゾまっすぐに街道を造るぞ〕
ひとまず、そう命令を出した。
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