第21話 依頼がやって来た

 やはり、面倒はやって来る。

 隊長さんと対策室の担当者さん。

 なぜか、青い顔をしているが気のせいか?


 家へと、入ってもらい話を聞く。

 すぐ横に家宰さん。アルチバルドさんが控えて、その後ろにはメイドさんが2人。

 この状況にはまだ慣れない。そしてなぜか、横にはフィオリーナさんが座っている。

「諏訪さん。御面倒ですが、魔王様。えーとテスタ様でしたか、外務省の人間を連れて一度伺えるように、していただけませんでしょうか?」

 対策室の担当者。確か中村さんだったよな。


 内閣の方では、災害緊急事態対処担当参事官などがいるが、下部組織では人手不足でいくつも併任している。元々有事の時にしか機能しないので人件費も確保できなくて大変ですとぼやいていたな。

 昔、火事の起こっていない所の消防署は無駄だ。

 なくせと言う論争があった。

 仕事をしていないのに、そんな人員の給料は無駄だと言う理屈。


 防災関係は、数字だけ見ると膨大な無駄なんだよな。

 非常食も定期的に交換しなきゃならんし、国民には今飢えている人がいるとか言って大騒ぎ。

 かといって無くすと、いざの時には、なんで無いんだと文句を言われる。

 

 今お役所も、半数以上非正規職員ですとぼやいていたもんな。

 つまり併任できる人間は限られていて、その人たちがあれもこれも併任する。

 必然的に、パンク状態。


 まあそれはいい。

 中村さん、元々地域課で警察にも顔が効くし、君がやれと言われてやっていた。

 つまり、外交なんぞ全くの素人。

 青くもなるよな。

「まあ聞いてみましょう。ただ魔王ですから、危険はあると考えてください」

「いきなり殺されたり、するのでしょうか?」

 青い顔をさらに青くして聞いてきた。

 リラックスしてくれるかと、

「魔法でカエルにされるとか? あれは魔女か」

 そんな馬鹿なことを、言っていると、

〔わたくしも参ります〕

 とフィオリーナも割り込んできた。


〔言っていることが、分かったのか?〕

〔いいえ。でもどちらかに赴くのであれば、妻として同行するのは当然でしょ〕

 真顔でそんな事を言って来た。

〔それに、私が赴けばシウダー王国ペルディーダの貴族として役目が果たせます〕

 ああそうか、日本だけではなくシウダー王国の…… あれ? 日本に帰化すると言っていなかったか?

〔フィオリーナ。おまえ日本に帰化すると言っていなかったか?〕

 そう言うと、

〔それはそれ。これはこれですわ。まだなっていませんし、これから王国の者と出会った時に手土産にもなるでしょう〕

 と言って来た。

 まあ確かに今後、何かの役に立つかもしれない。


「すみません。フィオリーナも同行すると言っていますが、よろしいでしょうか?」

「帰って聞いてみます」

〔行けるか聞いてくれるってさ。駄目ならあきらめろ〕

〔それは、まあ。仕方がありませんわね〕

 そう言って、ちょっと落ち込んだ。



 内閣災害緊急事態対処担当室。

「衛星の画像は確認できたか?」

「虫食い状態だな。森か田舎。森も植生が違う方は田舎側かな。多少プレートの影響もあるのかね」

「入れ替わった所で噴火が発生していないから、入れ替わりは上だけで、またプレートに沿って割れるんじゃないか?」

「じゃあ、西日本。地震が起こるのか?」

「南海トラフ巨大地震か? 可能性はあるんじゃないか」

「やめてくれよ」

 そんな事を言っていると、資料を持って室員がやって来た。


「外交関係、進展です」

 資料をバサッとテーブルに置く。


「ああ何か通訳が見つかって、話が付いたとか」

 前回の報告の中に、進展があったと赤丸が付いていたよな。


 室員は、ペラペラと資料をめくりながら確認をする。

「えーとその後です。森側の魔王と会えそうだと」

 とんとんと、指で一文を指し示す。

「はっ? 魔王」

「ええ森の奥に見えている。これですね。この町が魔王テスタ様だそうです」

 そう言って、今度は衛星写真の1点を指し示す。


「ここに行く森ですら、危険だったと言っていなかったか?」

「ええ。それなんですが、森を治める四天王リーゾと言う者に、伝手ができたとの事です」

 それを聞いて、皆が驚く。

「四天王か。いよいよファンタジーの世界だな」

「一体どうやって?」

「ええと、通訳さんが四天王を、叩きのめしたと書かれていますね」

 またみんな口を開けて呆ける。

「通訳だから、肉体で語ったのか」

 報告書を確認して、

「文字通り、そのようですね」

 苦笑いしながら答える。


「外務には連絡するが、行く人間いるかな?」

「さあ? それはあっちが考えるでしょう」

 皆が大変だと思いながら、報告書を読み始めた。




 そう言えば、まことのお母さんが、恐怖の連勤が終わりやっと帰って来たようだ。

 今は、シャワーを浴びて、泥の様に眠っていると言っている。

 建物の給水タンクは空だったので、昨日満タンにしてきた。

 水道が復旧するまでは、定期的に補充することにしよう。


 そんな少し日常が取り戻されて来たある朝、妙な感触で目が覚めた。

 毛布が盛り上げっており、そっとめくる。

 中には、なぜかフィオリーナがいて、俺のをぱっくりと咥えていた。

〔何をしているんだ?〕

〔もが? 失礼しました。おはようございます。伴侶としての務めでございます。朝元気でしたら、そうするものだとアルチバルドが教えてくれました〕

 そう言って当然のように再開する。

〔あのや…… ちょまっ、あっ〕

 ああ、久しぶりで、さらに最近の刺激の数々。

 俺には耐えられなかった。


 最後まで吸い取り、俺の服を治すと、

〔ご満足いただけましたようで、嬉しゅうございます〕

 そう言って頭を下げ、フィオリーナは部屋を出て行った。


 アルチバルド、フィオリーナに何を教えてくれてんだよ。

 ……良かったけど、後が怖いよ。

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