第12話 戦闘と制圧

 しばらくすると、こっち側で張られているバリケードを越えて、隊員とほとんど服を着ていない女性たちがやって来る。

 3t半(さんとんはん)トラックへ乗り込んでもらい、医療チームが向かう。被害者はいろんな液体でドロドロで目はうつろ、何とか自分の名前は言える状況ではあった。持っていた荷物は没収されているようなので命令が飛ぶ。


 服など装備にはないので、アルミ保温シート防災用で我慢してもらう。


 薬を飲ませて、食べられそうな方にはレーションでもと思ったが、食欲は無いようだ。女性隊員が湯とタオルを使い清拭を行っているが、人によっては殴られた痕も多数ある。


 

「しかし、いつの間にこんなに拉致されたんだ」

〈本部より各隊。拉致被害者が居ないか詳細に確認〉

〈りょ〉


〈ポイントK23。K遭遇までどのくらいでしょうか?〉

〈こちら目。半数6が収容所に回ったぞ〉

〈W14。ポイントQ12に今何チーム居る?〉

〈こちら、W14すでに移動中。多分W11と12の2チームかと〉

〈こちらポイントQ12。W11と12です。今収容所周辺で展開中。Kは捕獲ですか?〉

〈本部だ、偉そうなやつを残せ〉

〈りょ〉


〈こちら、W14。廃棄場所発見。スーツではないが日本人だな。5人くらい〉

〈こちら本部了解〉

「おい、3t半へ行って、連れが居なかったか聞いてこい」

「ええっいやですよ。今、あの状態の人たちに聞くんですか?」

「馬鹿野郎。上官反抗か? 命令だ聞いてこい」

 そう言われてしぶしぶだが、ダッシュする隊員。


「12名中8名連れアリですが、2名金髪にしているそうです」

「あちゃーあ、間違って撃っていないよな」


〈W14。連れは8人らしい。金髪2名〉

〈りょ。泣きながら掘り返します。おーい00式個人用防護装備くれ〉

「ちっ。無線切ってから会話しろよ」

 


 そんなことをぼやいていると、遠くでパンパンと軽快な音が聞こえる。

「あいつら、全員殺っているんじゃないよな」




 周りを囲む警官たち。

「自衛隊、すごい勢いで撃ってんな」

「おい救急車来たぞ。通してあのトラックの横につけろ」




 ペルディーダ側。

 時は少し戻る。領主たちを救出しようとしているが、石つくりの為、出てくるのは遺体ばかり。

〔ちくしょう〕

 そんな時、町の方から、パンパンという音が響きだす。

〔おい何が起こっている? おい、幾人か行って町の様子を確認してこい。また蛮族どもが町の外におかしな物を並べているぞ〕

 目の良いものが、確認すると、大小差はあるが箱を並べているのが見える。

 その箱の周りで、幾人も人がうろうろしている。


 そうして、6人ほどの騎士団が坂を下っていると、よそに回っていた部隊も騒ぎに気が付いたようだ。

 合流して共に下っていると、収容所の方から音が聞こえる。

〔ちっ、俺たちが見てくる〕

 そう言って半数が、収容所に向かう。


〔いくつもに分かれて、入り込んでいるのか?〕

〔だとすれば面倒だな。あの音が何かわからんが、気を付けよう。石くらいは投げてこられるとけがをする〕


 そう。幾人か通行人を捕まえて、男を殺して女を収容所に入れたのはこいつら。

 最初は武器の所持を考えて警戒したが、捕まえると奴らは武器など持たず、近寄ると手を上げるか、座り込み泣きわめくだけ。

 そのうち、境近くに潜み。良さそうな女を捕まえ楽しんだ後、収容所へ放り込むそんなことをしていた3人。


 自衛隊が、ポイントK23と呼ぶ地点へ入った瞬間、左太ももに何かが当たった感じがして思わず足に手を持っていく、すると足の踏ん張りがきかず馬から落ちていく。

 何が起こったのか分からない、足を何かでたたかれたような感覚。

 刺さっていないから、矢ではない。

 周りで、パンパンと音がして、仲間がどんどん落馬をしていく。


 そこに来てやっと、かなりの出血が左足の太ももから起こっていることを理解する。それと同時に痛み。それも焼けるような。なんだこれ? 何が起こっている?


 焦る彼の周りに、訳の分からない言葉をしゃべるやつらが集まって来る。

 顔にも、黒や茶色で縦線を描いた。いかにもどこかの蛮族。そいつらが肩に変な棒を担いでいる。見えなかったが、あれで殴られたのか?

 後ろ手に縛られて。血の出ていた太もももかなりの強さで縛られて、痛みで顔がゆがむ。


 やがて、道に変な箱が走ってきて、ばかっと扉が開く。開いた箱の中へと押し込まれる。当然装備は取り上げられた。

 このところ原住民を幾人か捕まえたが、今度は逆に捕まったか。

 自分のやったことを思い出して、自分の行く末を想像する。



 そして、真司。

 部屋のベランダで、手すりにもたれかかりながら様子を見ていた。

 手には双眼鏡。

 いたるところで光るマズルフラッシュ。

 詳しくは見ていないが、ほとんど裸で救出される人たち。この数日であんなに捕まっていたのか。


 騎兵たちが、銃声と共に落馬をする。

 〔畜生。なんだ一体?〕

 と叫んでいるのが分かる。


 うん? 今叫んだのは奴らだよな? 最初は分からなかったのに言葉が分かるようになった。

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