シンのギター7
家に着いた。
「ただいま」
詩も花も遊びに行って、いなかった。
おじいちゃんとお母さんはそれぞれに過ごしていたようだ。
「お帰りコハル」
「ただ今お母さん。これ頼まれてたおまんじゅうやで」
「ありがとうコハル。おばちゃんおったか?」
「居ったよ。元気そうやったで」
「そうなん。明日行こうかなと思ってるねん」
「なんや、ほな明日買えばよかったやん」
「いや、山下さんから電話あってね。コハルちゃん来てくれたよって。
話してるうちに行くわって事になってん」
「そうなんや。まあ近いしな。しゃべってたらそんなこともあるわ」
「うん。だからまた明日買ってくるつもりやねん」
「お母さん太るで」
「まあええやん。たまには。ほんでギター良いのあったの」
「うん。シンにぴったりのが見つかったわ」
「そうなんや。良かったね。シンさんは?」
「二階の部屋に行ったと思うよ。眠そうやったから」
「シンさんは寝るのが趣味みたいやからね」笑
「それに私も巻き込まれるねん」笑
「そうか。じゃあお休みやね」
「うん。取りあえずお休み」
二階に上がるとシンはすごく眠そうな顔でコハル昼寝しようやと言った。
「シンちゃんはお眠ちゃんやな。私のおっぱいがいるの?」
「うん。欲しいな」
「わかった。寝んねしよう。汗をかいてるけど」
「大丈夫や」
シンはそういうと私にむしゃぶりついた。
とにかく一つになりたかったみたいだ。
あわただしかったけれど終わってしまえばいつの間にか眠っていた。
気が付くとシンが買ったばかりのギターを小さな音で弾いていた。
「コハルごめん。起こしてしもうたか」
「大丈夫やで。どんな感じなん?」
「今小さな音で弾いてたんやけど小さな音でも音が広がっていくのがわかるな。
コハルのギターとそん色ないような気がするわ」
「そうなんや。でもよかったな。ええギターやで」
「うん。俺が持つにはもったいないくらいや」
「そんなことは無いねんけどな。でもギターのグレードは大事やで。練習のモチベーションも上がるからな」
「ほんまにそうやな。もっともっといろんな曲を奏でたいと思うな」
「シンがんばりや」
「うん」
「さあ私はシャワー浴びてリビングに降りるわ」
「うん。俺は練習するわ」
「うん」
コハルがシャワーを浴びている所をチラチラと見ていた。
コハルもチラチラとこちらを見ている。
なんと手招きしている。
「コハルさすがにまずいで今の時間は」
「シンちょっとだけでええねん。可愛がって欲しい」
「わかった」
念のために部屋の鍵をかけておく。
そしてコハルを愛した。
「シン良かった!」
「うん。また夜やな」
「うん」
部屋の鍵を開けた時、階段を上ってくる足音が聞こえた。
「父さんお帰り。帰ったん?」
「うん。花はどっか行ってたんか?」
「うん。友達の所でゲームしてた」
「そうか。友達って誰や?」
「レイちゃんやで」
「そうか。女の子もゲームするんやな」
「うん。むちゃくちゃはまってるで。ママただいま」
「花おかえり。楽しかったん」
「うん。ママたちはいつ帰って来たの?」
「もう二時間くらい前かなぁ」
「そうなんや。今日の夜ご飯はなに?」
「今日はお好み焼きにしようかな」
「そうなんや」
「食べたいものある?」
「んー。ない」
「無いんかい」笑
「コハル、イカ焼きはおかずと違うんか?」
「えっ。おかずじゃないと思うけど」
「あれってまんまお好み焼きのキャベツ無しみたいな感じやん」
「そう言われたらそうやけど」
「おかずやないのならまさかやけどおやつとか」
「そうやで。私はおやつと思ってたけど」
「そうなんか。でも甘くもないし結構ボリュームありそうやけど」
「うん。なんやろな。いつ食べてもらうつもりで売ってるんやろうな」
「俺にはわからん」
「じゃあ今晩おかずにしてみる?」
「ええんちゃうかな。俺は大丈夫やけど」
「おじいちゃんとお母さんがどういうかやな」
「そういえば父さんギター買うてもろうたん?」
「買うてもろうたよ」
「よかったやん。何かのご褒美なん」
「違うねんけどな。さらなる上達を目指して頑張るから言うてママに頼んだんや」
「そうなんや。父さんよかったね。またうまくなったら聞かせてな」
「うん。わかった」
「でもたまには花の好きなきゃりーぱみゅぱみゅも覚えてほしいなぁ」
「花、すまん。あれは難しいねん。父さんには無理なんや。指も頭も追い付かんねん」
「そうなんや」
「他はないのか」
「やっぱり浜省になるかな」
「そうか! 花も浜省好きか」
「だって初めて聞いたのが浜省で車の中も浜省しか流れてへんねんもん」
「そうか。ええ子に育ったわ。じゃあ浜省練習するわな」
「うん。なんか無理やり浜省になってしもうたな」笑
「そうやな。ママもそうなるんと違うかなと思ってたわ」笑
「さあ頑張るでー」
詩も友達のところから帰ってきた。
「ただいまー」
「お帰り。どこに行ってたん?」
「大吉の所やで」
「そうか。広吉もおったんか?」
「うん。ゲームしたり本読んだりしてたんや」
「そうなんや。仲がええのはええ事やで」
「うん。ほんで今日の晩御飯は何?」
「今日はイカ焼きにしようかと思ってる」
「そうなんや」
「詩はイカ焼きは食べたことないな」
「夜店のやつ?」
「違うよ。阪神百貨店のイカ焼きやで」
「食べたことないけど。おいしいの?」
「多分な」
「ママのその言い方やとあんまりおいしくなさそうやで」
「いやいや。これはほんまに人によるからな」
「そうなんや」
今日の晩御飯はイカ焼きにします。決まりました。
「シンの言う通り確かにキャベツの入ってないお好み焼きみたいやから我が家ではおかずにすることにします」
「そうか。おやつになったりおかずになったりイカ焼きさんも大変やな」
「シン、イカ焼きが自ら決めることではないからな」笑
「そうやけど」
「シンさん新しいギターはどんな感じ?」
「やはり音の響きが違います。奏でてるという感じがしますよ」
「そうなんや。そのうち何か聞かせてもらえるのかな?」
「それはお父さんまだだいぶ先の話ですよ」
「そうか。でも何か楽しくて夢中になれるものがあるというのは素晴らしい事やと思うよ」
「はい。お父さんはゴルフですよね」
「そうやねんな。月に一、二回になったけど楽しいもんな」
「いいわね旦那さんたちは高尚な趣味があって。あっ。コハルのは仕事か」
「お母さん、もうギターで仕事してないから趣味になってるで。シンがうまくなったら一緒にステージに立ちたいなと思ってるねん」
「そうなんや。目標があっていいね。私は何がいいのやろうね」
「お母さんまだ仕事してるからゆっくり色々試していったらええねん。休みの日はいろいろやってみたらええねん」
「そうよね。何か考えるわ。元気で長生きしたいからね」
「そうやで。茨木市にお住いの新井さんは今年百二十歳になりましたってテレビに出るかもしれんで」
「そこまでは長生きしたいと思わんわ。何もできないやろうからね」
「そんなんなってみらんとわからへんで」
「ならんでもわかるよ」
「とりあえずご飯にしよう。今日のおかずはイカ焼きやねん」
「なんやて! なんでイカ焼きなんや?」
「今日阪神で買うてきてん。だからやで」
「コハル、お父さんお酒のあてで食べたことあるけどおかずは初めてやで」
「シンは初めてやからな。ほんでイカ焼きを見ておかずかおやつかどっちやねんて聞かれたけどそない言うたらわからんかってん」
「そうか。確かにな。どのジャンルに入るんやろうか?」
「まあまあとりあえず食べようや。シン、感想聞かせてや」
「わかった。じゃあいただきます」
みんなでいただきますを言い食べ始めた。
「シン、どうした?」
「なんか、あんまり味がせえへんのやな」
「そうかな。イカ焼きやけど」
「コハル、お好み焼きのソースとマヨをちょうだい」
「シン、マジか?」
「うん。真面目に言ってるで」
「詩はどない?」
「おかずにしては味があんまりないな」
「花は?」
「おいしいとは思うけどおかずにはなれへんかな」
「そうなんや。はい、シンソースとマヨやで」
「ありがとう。こんなんかけたほうが絶対にうまいと思うけどな」
シンがソースとマヨネーズをイカ焼きにかけて食べ始めた。
「ほれ、こっちの食べ方のほうがそれらしいで」
「そうなんや」
みんな結局はソースとマヨネーズをかけて食べた。
「我が家では阪神のイカ焼きはおかずという事になりました」
「はい。おやつではないと思います」
「お父さんはお酒のあてやで」
「おじいちゃんの話はええねん」
「なんやコハル冷たいな」
「おじいちゃんもソースかけてるやん」
「せやけどおかずやからな」
シンが言った。
「何でもええけどもうお腹いっぱいや」
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