初めて出会ったマイルドサイコパス07 新たなマイルドサイコパス ~標準語版~
タイプは違うがこの杉内もマウントを取りに来ているのがよくわかる。
自分よりも上だと思う人を見下すようだ。
そして自分が思う些細なミスを責めてくるのだ。
自分が完全に下っ端と認定した人間にはそのようなことはしない。
そもそも相手にはせずどちらかと言えば懐の深い人間を演じているようだ。
私は君たちの味方ですよと言わんばかりの気の使いようだ。
誰もかれもを見下すのではなく味方も必要だと理解しているみたいだ。
しかし残念なことに見透かされているのに気が付いていない。
「鴨居さん、会議の時とか杉内さんに大丈夫ですかとか聞かれたりするけれど
それを聞いた分鴨居さんの悪口であるとか課長の悪口を後から聞かされるんです。
仕入れ部材の数を決めたり納期を詰められるというのは鴨居さんが決めているのではなくて相手さんがあって決まっているのだから鴨居さんや課長のせいだと言わんばかりの批判は的外れだといつも思っているんです」
「君は物事をよくわかっているな。ただな杉内はさみしがり屋なんだよ。自分から発した無意識の見下しの言葉を相手が受け止めることで相手の態度が変わっているのに気付いていないみたいなんだよね。俺に対しては見下しの気持ちを、君対しては見下しつつ親愛の気持ちを表現しているつもりなんだよ」
「見下しつつ親愛って気持ち悪いですよ」
「君たちには批判とかはないから安心して」
「それはどうしてなんですか?」
「すごく悪い言い方をするけど対等ではないからだ」
「対等ではないというのは見下げているのと同じなのでは?」
「奴の中では攻撃対象の見下しさんとそうでない見下しさんを分けているようだ」
「そうなんですか。つまり相手にされていないというかそれはそれで気持ち悪いですよね」
「そうだな。もしかしたら小型犬くらいに思っているのかもしれないね。いつでもつぶせるぞって。舐め切っているんだろうな。意外と君がかみついたら面白いかもしれないね」
「そんな面倒なことはしませんけど鴨居さんも大変ですよね」笑
「まあな。でもそこにいる以上仕方がない。絡んでくる以上仕方がないんだ」笑
見下して攻撃する人間とそうでない人間に対する対応の違い。
これはもう習性で無意識のうちに頭の中で行われているようだ。
一度見下されたら二度と対等には扱ってもらえない。
ただ杉内にどう扱われようと何の弊害もない。
ただひたすらうざったい。ただひたすら口だけだからだ。
なぜわざわざ人を見下すのか。
見下した人間の周囲の人間関係をかき乱そうとするのか。
自分の思い通りにコントロールしたいという欲望があるからだ。
何のために。
それがわかった瞬間あまりにもくだらなくて、にやけてしまったし
その目的が普通の人にはまず思い浮かばないであろうという事だった。
その目的とは?
何のために人を見下すのか。
何のために見下した人の周囲の人間関係をかき乱そうとするのか。
なぜ人と人を対立させようとするのか。
なぜ一歩離れたところから当事者のような言い方でかかわってくるのか。
目の前でトラブルを見ていたいから。
そのトラブルに油を注ぐこともある。
僕はそれがわかってしまった。
とてもくだらないことだ。
普通の人間じゃないなと思い始めていた。
そんな時営業会議で社長が交代することが発表された。
当然身内でもない僕には一言の相談もない事だった。
(俺番頭さんと違うのか?)心の声。
どうやら違うようだ。
前社長の思惑と現社長の思惑が一致しなかったようだ。(僕に番頭さんになってほしいと言った前社長の思惑)
つまり現社長(二代目社長)の動向や考えは今後明らかになって行く。
ブレーキや助言のない状況が生まれてしまった。
様子を見ようと思う。
機械の受注が増え始めたのに、生産に必要な資材の購入も制限されている中
当たり前の事だが機械の生産能力の問題が出てきた。
それは資材の購入が制限されてきた月当たりの製造数が、最大製造数として認識されていること。
当然購入制限が無くなればもっと生産能力は上がると漠然と思っていた。
そんな時に現在の製造能力を上回る受注数が出てきた。
とりあえず現在は材料もあるし杉内に対して一時的に手伝うことを指示した。
何やらふてくされている感じがする。
指示を出した翌日、杉内が僕に噛みついてきた。
「鴨居さんは機械の製造が出来ないのだから指示を出す資格がないのでは?」
「何回も言うけど俺が指示を出してからしか動けないのに何を言ってるんだ。
以前にも似たようなこと言われたから今回は様子を見ていたけど一週間経っても君は何の動きもしないし準備もないし指示もない。そんな君に資格云々は言われたくない。何がしたいのだ。俺にいちいち楯突くけど自分で判断何もしてないじゃないか。
俺が言わなかったら誰が言うの?」
「・・・」
「誰が言うんだって聞いてるんだけど?」
「・・・」
「営業の話、技術の状況、仕入れ部品の入り具合や予定。
そんなの全部勘案して何時くらいから始められるのかから始まっていつくらいに出来るのかまでヒアリングしたうえで営業にも技術の子にも伝えてるつもりだけど君はごちゃごちゃ言ってるだけで何にもして無いじゃないか」
「・・・」
「今言ったことを把握してる人は誰で誰が営業やら技術に指示を出すのだと聞いてるんだけど?」
「・・・」
「答えられないのか? じゃあ仮に俺が黙ってたら納期が迫っても誰も機械を作らず納品も出来ない状態になるじゃないか。それでいいということか? 君の役割は邪魔をすることなのか?どうなんだ?」
「・・・」
「なんとか言ったらどうなんだ。俺は自分の役割を果たしてるだけだぞ。俺が黙ることで君が言うのだったらそれでいいと思うけれど君は何もして無いじゃないか。今も黙りこくって。指示を出す資格ってどの口が言ってるんだ! ちなみに今回以外にもう一度何にも言わずに様子見るからな。口先だけで何にも出来ないのだったらもっと自分に出来る仕事をさがせ」
その後杉内は渋々機械を組み立てたようだ。
人とのやり取りで気分を害すのは本当にめんどくさいし疲れると思う。
しかも資格がないとか一晩考えたのかどうか知らないけど膝から崩れ落ちそうなくらいくだらないことをわざわざ告げて何をしたいのかさっぱりわからない。
ある時その杉内が腰が痛いと言い出した。
以前から痛みはあったらしい。
今まで耐えてきたのだがどうにもおかしいと思い始めてお医者さんに行ったとのこと。
レントゲンで確認すると腰骨が一部欠けているらしい。
その欠けた腰骨が神経に触ることがあり痛みを生むらしい。
その頃もうまともに受け答えをしていなかった。
話すたびに気分が悪かったからだ。
それでも話を聞くだけは聞いた。
病院に行ってお医者さんから言われたのは入院手術が必要であること。
一ヵ月位休む必要があること。
その間の発注業務は鴨居さんにやっていただきたいと言った。
「やるのはいいけれど。でも俺は俺のやり方でしか出来ないからな。ごちゃごちゃ言うのだったら最初から断るけどな」
「そのことについては何の異議もはさみませんのでお願いします」
「わかった。お大事に」
社長にも同じような内容で話をしたとのことだ。
その後杉内は自分のケガというか病気の内容と手術が必要なので休みますという事のその詳細なスケジュールを全社員に一斉メールで送付した。
杉内とあまり接点のない者が僕の所にやってきて「鴨居さんこんな個人的な事メールを一斉に送るなんてなんなんでしょうね?」笑
「いや。俺もビックリしてるんだよ。誰か杉内に興味のあるやつ居るのだろうか。あいつの仕事の範囲の人だけに知らせたら済む話なのにな」
「本当ですよね。こんなの本当は人に知られたくないことだと思いますけどね。鴨居さんが入院したの僕知りませんでしたから」
「そうなんだ。良かった気付かれなくて。でもあいつは普通と違うからな。何でもかんでも重大ニュースだから人に知ってもらわないと気が済まないのだろうね」
「そうなんですか」
「うん。仕入れ先とのメールのやり取りも読む気が失せるくらいのくだらない内容で何回も往復している。こんなの誰が読むのだろうっていつも思ってる。
まあ、俺はもう読んでないけどな。こんなやり取りがありましたって探すのも困難なメールの数なんだよ」
「そんなにですか」
「そうだ。おまけに形式ばった文章で、まあ仕事だから仕方がないんだけど自分は賢いんです。自分は人よりも考えています。自分は人よりも優秀ですとでも
思ってほしいのだろうな。そんな意図がくみ取れる文面だからもう読むのもうざったいんだよ」
「鴨居さん、メールだったらまだスルー出来るのじゃないですか?」
「まあそうなんだけどたまに俺宛にメールが来るから油断がならない。
まあ来てても知らんと言ってるけどな。いつ送ったのか聞いてそれから探すことにしてる」
「膨大なメールの中から探すの大変ですもんね」
「そういう事。無駄を省くのも仕事のうちだと思うけど、まあ俺が無駄だと思うことは杉内には無駄ではないんだろうな」
「鴨居さんもかなり溜まってるみたいですね」
「そうだな。君に一度やり取り聞いてもらいたい。本当に難癖みたいなものだし、どうしてそれを俺に言うんだってことも多々あるからな」
「僕は挨拶しかしたことないけど慇懃無礼という感じがしますね」
「その通りそのままなんだ。失礼な奴なんだ。自分でわかってるだけに質が悪い。さあ仕事しようか」
「はい」
その後杉内は入院生活に入った。
こちらは特に用事は無かったが様子を問い合わせるメールが来たり、自分が手掛けてそのままになっていた件など一日に何通も送られてきて正直、居ない間くらい忘れさせてくれと思ったのは嘘ではない。
しかもどうなっていますか? どんな感じですか?と返信を求められているのがうざい。
俺が入院した時は会社からの連絡でしんどかったけどこんな話したら杉内はヤキモチ焼くかもしれないな。笑
杉内様 お疲れ様です。
入院中はメールは不要です。治療に専念しましょう。
私も自分の仕事がありますのでこれ以降メールの返信はしない。
そう書いて送ってやった。しかし来る。こいつはさみしがり屋なのか?笑
明日は手術ですとか、術後の検診ではうんたらかんたらと書かれた現状の報告が何通かあった。
巨乳の看護婦さんが可愛いと書かれていた。
杉内にしては内容が物凄い不自然に感じる。
会社でも女性の話などしたことがなかったのに。
これは杉内のメールに関心を持ってもらうためのえさのような気がしている。
巨乳の看護婦さんには興味はあったがすぐにコハルの顔が浮かんで消えた。
杉内のメール十通に一通くらいの割合でしか返信していない。
その中に気になるメールがあった。
社長宛てでCCに僕が入っていた。
杉内からのメール 1
社長様 CC鴨居様
お疲れ様です。
入院中時間が有り余っていますので会社の事を考えてみました。
思いつくまま書いていきたいと思います。
一、社長はもっと社員に対して厳しくあるべきです。
特に人の上に立つ中間管理職の方は仕事の進め方をよくわかっていないようで。
笑 進言しても一向に実行しようとしません。
これは業務効率化の観点から会社にとって不利益ではないでしょうか?
二、心に病気を抱えた人がいることで会社の業務に多大な損失を与えています。
能力の問題かと思っていましたが病気では仕方が無いと思い始めたところです。
これはみんなでフォローしていかないと行けないことかもしれません。
最近増えて来た事象なのでこうすればいいとかああすればいいなどは無いと思い
ますが良い処方箋があれば教えていただきたいです。
三、社長が会計ソフトで苦労された話を聞きましたので私が集めた情報をご参考
にしていただければと思います。
今使っているPPAよりも縄文会計の方が良いと思います。
テレビで宣伝もしていますしネットで調べてもいい事しか書かれていません。
それに価格が安いことも魅力です。
PPAだと100万円するものが縄文だと30万円で済むのです。
いかがでしょうか。ちなみに社長、今の代理店にぼったくられているのではな
いですか? 資金繰りなどの予定などを今のソフトで作ることが出来ますか?
また自社で良いと思った会計ソフトも今契約している会計士さんが使えなければ
導入できないとの事なのでそれは承知した。
使えるものと使えないものがあることも理解した。
四、今の世の中はAI、クラウド、サブスクが三種の神器になってしまったのでうま
く活用しましょう。
五、これからの時代は一昔前のサーバーやワークステーションなどではなくタブレッ
トやスマホを駆使して業務を潜り抜けていく世の中になってしまいました。
臨機応変で柔軟な頭脳を持った優秀な従業員を採用してください。
今回はこれくらいにしておきます。
すごい。これほど中身のない上から目線の文章を見たことがない。
しかしすごい世の中になったのだなと言いたかったのだろうけど何が言いたいのかさっぱりわからない。
自分はこんな事やあんな事を知ってるんだよ!賢いだろ!を演出しいろんなことを自分の価値観で決めつけてかつ感情のまま書き殴った文章とでも言ったらよいのか。
抽象的で具体性がない。
社長に社員に対して厳しくあるべき。
何をどのように?人の上に立つ中間管理職って間違いなく俺の事だと思うけど、しかも(笑)という漢字が付いている!
そもそもなぜ俺がCCに入っているんだろう。バカかこいつは。
多分俺にCCで送るのが癖になっていたのだろう。
業務効率化の不利益ってなんなのだ。読む人に想像させてどうするんだ?
人の事を勝手に病気にしてその人が会社に損害を与えているらしい。
どれくらいの損害なんだろう?
しかもその勝手に病気と決めつけたことに対して処方箋を募集している。
頭がおかしいとはこのことだ。
唯一具体的なのは会計ソフトであるがこいつは使った上で言っているのではあるまいに。
しかも承知したってどういう事なんだ。
社長が君に選定を依頼したのか?
それにしても承知したではなく承知しましただろう。
不思議な言い回しをする男だ。
AI、クラウド、サブスクが三種の神器って何? 誰かが言っていたのか?
最後はそれがどうしたのだという話だ。
タブレット、スマホってただの道具だろう。
それを駆使して業務を潜り抜けていく世の中になったから優秀な社員を採用してくださいって意味が分からない。
パーソナル障害の特徴として聞かれてもいないことのアドバイスをするというのがある。
これはまさにその典型だろう。
面白い。
パーソナルであることの特徴を一つ一つ自分でピースを当てはめていっている。
自分でわかっていないのだろう。
他人からどう思われているのか考えているのだろうか。
バカなのか賢いのかと聞かれたら間違いなくバカだと思う。
このメールは人に読んでもらうようなメールではない。
社長に対して非常に失礼な内容である。
送っていいのかどうかの判断もできてない。ここまで頭が悪かったら付ける薬などない。
まともに返事を書けない。
何を言いたいのか全く分からない。
しかし社長は杉内にメールを返信した。
なんと(どなたかわかりませんが)様へと書かれていた。
確かにどこにも杉内の名前はなかった。
自分の名前を書いていない。
確かに(どなたかわかりません)様である。内容は明らかに杉内なのに署名がない。
以前僕に5W1Hを説いていた。
君は名前すらも書いてないじゃないか。
社長は杉内のメールの内容に対して具体的に質問をしていた。
その次に来たメールは社長メールに対する返信かと思っていたが
全く違う事が書かれていた。
なんなのだろうか?
杉内からのメール 2
各位。 皆様お疲れ様です。
今回の製造能力のひっ迫について私なりに分析を行いました。
まず添付の資料をご覧ください。
それによると過去5年間の月当たりの製造数は月平均8台です。
最大の製造台数は10台で最少は4台。
このことから月の最大製造数は10台であることの根拠にたどり着いた。
出荷実績表から組み立て工数を予想しようとしたがダメ。
ストップウォッチで標準工数を図ったほうが早い。
過去五年間の平均出荷数は96台。ただ下は75台上は117台とあてにならない。
製造キャパの件は技術部にそのしわ寄せがきている気がするがそもそも安定した受注数ではないのでもっと月に10台を確実に売るなどの対策が必要と考えます。
現在の受注状況は月に13台。キャパをオーバーしているので外注を探すか組み立ての人間を雇う必要があると思われます。これらの方針をまず決めないと先に進めない。生産計画を立てることが必要です。
根拠となるデータを見て色々考えましたが問題点や検討事項が多岐にわたり過ぎですね。
うちの会社はどうやって利益を上げるのか。またその利益をみんなで分けましょうね。
このあたりをまず考えた方がいいのではと思います。
こんな少人数でコミュニケーションが取れないのも珍しいですね。
という事で社長が現状を認識して正確な判断が出来るような資料を提供できたと思っています。
よろしくお願いします。
以上
杉内様 CC:社長
お疲れ様。
杉内君が技術の仕事に携わり一年を過ぎましたが技術の仕事はほとんど出来ていない。
今回のメールをもらったことで製造担当者にヒアリングしたところ
製造能力の話は一切聞かれたことがないとの事。
ちゃんと技術課の中でコミュニケーションが取れていない。
当事者抜きでなぜこのような報告が出来るのかはなはだ疑問でしかない。
ちなみに私が様々な事情を鑑みて算出した最大製造数は月に二十五台となり
生産能力については何ら問題ないと判断している。
何が生産能力の足を引っ張っているのか。
仕入れ部品数の制限に他ならない。
機械を組むための部品在庫が無いという事だ。
これは購買時に金額を報告する際、経営側から支払いが大変という話をたびたび聞かされたことによる忖度の賜物以外何物でもない。
具体的にどれくらいの金額だと大変なのかなど数字での提示は一切ない。
製造数の上限を決めているのは経営側だと言えるのです。
それに一台当たりの製造時間も調べていない。
なぜ月に10台しか作れなかったのかのヒアリングもない。聞けばすぐにわかったはずだ。
しかもデータを見た上で月10台の製造キャパの根拠にたどり着いたと書かれているのに下が75台、上が117台とあてにならないと書かれているのは根拠になってないという意味なのだろうか。
自分でおかしいことを書いていると思わないのだろうか?
机の上でわかる数字だけですべてがわかったかのような
意味のない報告書を出すのは今後は慎むべきでしょう。
さらに言うと前回は一週間の間に五台の注文があったために
急遽杉内君にも製造の依頼をしたのであって
常にそのような状態が続くわけでは無いのです。
全体を正確に把握し正確な報告書を心掛けてください。
方針も大事ですがまず動くことです。小さな会社です。人も限られています。
動きながら考えなければなりません。
物を作って売り上げることで利益を得てそれを分配する。
どうやって利益を上げてどうやって分けるかをまず考えたほうがいいなどというのは
全くおかしな話で製造キャパがひっ迫している問題はどこに行ったんでしょうかと問い詰めたくなりました。
コミュニケーションが取れていないのは自分だという事をメールで暴露した上に珍しいとまで書いているのはもしかして二重人格なのではないかと疑ってしまいます。
自分の事をそんな風に卑下出来るなんてすごいなと感心しております。
最後にあなたのメールは報告でも何でもない。
社長に報告する意味など全くない。
参考に出来るような内容ではないからです。
それを自分がわかっていないことの方が大問題ですよ。
わかりますか?
わからないからこんなおかしなメールをよこしたのでしょうけれど。
今後は報告はやめた方がいい。あなた自身の値打ちを下げるだけの事でしかありません。
今回君がどれだけ恥ずかしい事を書いたのか十回でも二十回でも読み返して理解してください。
あのメールをもし私が書いたとして理解できたなら私は二度と会社に出ようとは思いませんね。
そもそもあんな内容で書かないし書けない。
恥ずかしすぎます。
客観的という言葉知ってますか?
以上
このメールに関する杉内の反応は全くなかった。
どうしてだろう?
噛みついてくると思っていたのに拍子抜けした。
家に帰ってお父さんに話した。
「お父さん、会社に不思議な奴が入って来たんです」
「ほう。どんな人?」
「慇懃無礼、マウントを取りに来る。批判する。対立させる。上から目線で話す。見下しがある」
「ほほう。それははっきり言って病気だね」
「お父さんそう思いますか?」
「うん。うちの会社にもそんな人が一時期居たからよくわかるよ」
「一時期という事は首にしたんですか?」
「そうだね。辞めてもらったな」
「何か問題が起こったんですか?」
「そうだね。簡単に言うと上司の方針を批判するんだけど代案が全くなかった。
それに他人を病気扱いしたりさっきシンさんの言ってた見下しの発言が多くなってきて、言われた人の間でおかしいぞと思い始めた」
「そうなんですか」
「うん。それにメールで上司に対して会社の方針はおかしいだの部署間で対立しているだの誰と誰がいがみ合っているだの何を言いたいのかさっぱりわからんことを書いてよこしてね。それでその背景を確認するためにトラブルがなかったかどうかみんなに個別に聞いて回ったんだよ」
「なんだか本性が現れ始めてたんですかね」
「うん。まさにその通りでその人の言う問題が何もなかったことがはっきりとわかったんだ。でも何のためにそんなことを言っているのかわからなかった。目的がわからない。会社をよくするためではもちろんない。本当にわからなかった。わからなかったけど会社の人の間で信頼関係が損なわれる行動であるのは間違いないという結論が出てその人の発言を全部箇条書きにした上で本人に確認を取ったんだよ。すると間違いないですと言うんだ。なぜだかわからないけど認めたんだ。だから会社辞めてくれって言ったよ。君がいると人間関係がおかしくなるからって」
「素直にハイって言いましたか?」
「いいや。次の日何事もなかったかのように仕事の指示を仰ぎに来たんだよ。びっくりしたよ。今までそんなこと全くなかったのに。しかも僕は彼の直属の上司ではないのだから。かなり動揺してたんだろうね。表情も今まで見たいなイケイケの勝ち誇ったような感じでは無くて何かしょんぼりとした感じを醸し出してたな」笑
「やばいって思ったんでしょうかね?」
「言われてハッと気が付いたんだろうね。もう遅かったけどね。だから言ってやった。まずは君の上司と話ししろって。私は君の上司の上司であって君の上司ではないのだから。今回は君の進退の話だったから私が話をしたんだけどね。
今まで馬鹿にしてた上司には話しにくいかもしれないけど自分が招いたことだからね」
「そのあと彼の上司が僕の所に来て最初何とかなりませんかって言ってきたけど俺はお前とはもう仕事は出来ない。それに散々俺の悪口言っておきながらなんとかなりませんかって恥ずかしくないのか!って言ったらアイツ辞めるって言いましたよって報告が来たんでホッとしたのを覚えてる」
「そんなことがあったんですか。すんなりと辞めて行ったんですね」
「そうだね。自分のしたことを思い出したんじゃなかろうか。これは知り合いの先生に聞いたんだけどシンさんだから話するけどもしかしたらパーソナリティ障害だったのかもしれないねって言われたよ」
「なんですかそれは」
「精神疾患の一つで大きくは他人を支配したがるらしい」
「支配ですか?」
「うん。メンタルの先生でもその症状によっては診察を断ることもあるくらいかなり厄介な病気らしい」
「なんだか怖いですね」
「そうだね。その人と一対一で過ごしてしまうと支配される可能性があるみたいだね」
「何のためなんでしょうね?」
「それがわからん。だからみんな不思議に思ってたんだよ。でもこれは性格的なものなのかなぁ。とにかくわからなかった」
「そうなんですね」
お父さんの話は大筋で杉内に当てはまるような気がする。
昔見た仮面ライダーでみんなは仮面ライダーになりたがったけど杉内は死神博士になりたかったのか。
そんな気がしてきた。
「今のお父さんのお話は大筋で当てはまるような気がします。そいつもバカバカしいメール送ってきましたから」
「それはチャンスだね。そういう人が社内にいると会社の人間関係を蝕むだけだからね」
「やはり排除しかないですかね」
「そうだね。病名が付くから治らないこともないんだろうけど治る頃には皆辞めちゃってるかもしれんね。決めつけたらダメなんだけどね」
「そんなんですか。かなりやばいですね」
「そうだね。さあそろそろご飯食べよう」
「はい。いただきます」
食べ終わった後に「コハル。先に部屋に戻るから」
「ハーイ」
部屋に入ると色々考えた。
やはり排除しかないのか。
どう考えても今に始まった事ではないし前の会社でもそんな感じだったのだろう。
四十五歳。
治っていないと思う。
本人はその自覚さえない。
その傾向に拍車がかかり人間関係をかき回すことに関して年季が入っている。
ただ、わかりやすい証拠を残している。
これは自己顕示欲が半端ないのだろう。
自分を認めてほしい。出来れば今すぐにでも。
もしかしたら自分の立ち位置を想像しているのかもしれない。
例えば部長とか。例えば取締役とか。
だからなりふり構わずその目的に向かっているみたいだ。
わき目も振らず走っているからこれを言うことでどうなるのか色んな意味で考えられていないから証拠を残していくのだと感じる。
まあはっきり言ったらバカなんだろうな。
自分の描いた目的のためには人を蹴落としてでもという言葉がしっくりくる。
杉内は仲良く協力してというよりも圧力で相手を抑え込もうとしてくる。その圧力はある意味洗脳なのかもしれない。
俺に対して発注のやり方がおかしいと言い続けているのもそうなのだろう。
俺も少し頑固だからな。
「シン!」
「うわっ! びっくりしたじゃないか」
「へへへ。気が付かなかったの」
「そうだよ。いつの間に」
「さっきシンが俺も少し頑固だからなって言ったときは横に居たんだよ」
「そうなんだ。言ったつもりは無かったけれど口から出てたんだな。何やら恥ずかしいな」笑
「シンも心の声が漏れるようになってきたみたいだね。私に洗脳されて」笑
「そうかコハルに洗脳されたのか」
「そうだよ。私もしゃべったつもりは無いのにシンに指摘されて恥ずかしかったからね」
「そうだな。一人で焼き肉食べようとかな」笑
「もうっ! シンと一緒にって決まってるじゃない」
「いやいや。一人でってはっきり言ってたよ」
「う・ん。シンもういじめないで」
「あっ。ごめん。ちょっといじってみただけなんだけど」
「シン。私の事いじってみる?」
「後でいじってみよう」
「うん」
チュッ。
「それからシンは頑固そうに見えるけど頑固じゃないよ」
「そうかなぁ。俺友達とかにお前は頑固だってよく言われてたからな」
「それは冗談だと思うよ。私の言うこともよく聞いてくれるし取り入れてくれるし。私の事一番に考えてくれてるからね」
「そうだよ。でもコハルも俺の事一番に考えてくれている」
「うん。あたりまえだよ。世界で一番大切な人だから」
「コハル。ありがとう。俺もお前が世界で一番大切だよ」
「シン」「コハル」
チュッ。
「でもちょっと待って。ちょっと考え事をしたいんだ」
「そうなんだ。何を?」
「会社の不思議な奴への対策だ」
「なにそれ」
「さっきご飯の時にお父さんと話してたんだけど杉内の事なんだ」
「ああ、シンが針が出てるみたいだって言ってた人の事ね」
「うん。本性を現してきたんだ」
「そうなんだ。なんだか怖いね」
「でもすごい間抜け。突っ込みどころ満載のメールを送って来たからこれが突破口になると思う」
「どんなメールなの?」
「これは本当はコハルにも見せられないけどみたい?」
「うん、見てみたい」
「よっしゃ。これなんだけど」
コハルは杉内とのメールのやり取りを読んだ。
「シン。この人ちょっと普通の人じゃないような気がするね」
「そうだな。ちなみに何がおかしいと思う?」
「自分以外の人が居ないみたい。一人で仕事してるみたい」
「そうだな。その通りだ。杉内には仲間や相談する人がいない。さっきお父さんとちょっと話したんだけどパーソナリティ障害って言う病気らしい。人を信じられない。でも人に構ってほしい。頼ってほしい。でも指示されたくない。自分が好きなようにコントロールしたい。自分を賢い人だと思って欲しい、なおかつ人を見下して攻撃する。自己肯定と自己否定が入り混じって自分の感情をコントロールできないから思い込んだら後先考えずにやってしまう」
「なんだかすごくややこしいな」
「そうだ。ややこしいバカなんだよ。仲間が欲しいのに仲間になりそうな人を攻撃してしまう悲しい性なんだ。性じゃないな、病気だから」
「こんな人と一緒に働くのイヤだ」
「その通り。だからもう排除しようと思ってるんだ」
「それって首にするってこと?」
「まあ辞めてもらう方向で話するしかないな。だから今どんな風に話を持って行こうか考えてるんだよ」
「そうなんだ。シンにしたら余計な仕事だね」
「本当に。 本当だったらせっかく仲間になったんだから一緒に協力し合って自分も会社も成長出来たらいいのにまず自分の事だからな。その為に同僚を見下して攻撃するんだ。でも自分は大事にしてほしい。おかしいよね」
「そうだね。私にはその人が幼く思えるわ」
「そうか。でも四十五歳だよ」
「うん。でもなんか大人だけど幼稚だなと思うわ。わがままな感じがする」
「確かにそうだ。わがままだな。でもこれはもうどうしようもない。他人への攻撃性が無ければいいけど攻撃することで、見下すことで自分の立ち位置を確保しようとしてるからダメなんだ。それを抑えられている間はまだ誰か相手にしてくれるだろうけど一旦それが表に出始めたらもう自分では止められないからな」
「シン。私もエッチな気持ちが止められないのだけどどうしたらいい?」
「コハル。その時はこうしたらいいんだよ」
僕はコハルを抱きしめてキスをした。
「シン。いつまで訳の分からん人の話をするのかなって思っていたわ」
「ははは。そうだな。ちょっと悩んでたからな。家に居るときくらい忘れないとだね」
「シン、そうだよ。ごめんねわがままな私で」
「コハル俺もわがままだよ。コハルが感じるところじっくり見せてもらうから。腰が止まらないかもしれないね」
「シン。好き好き。腰を止めたらだめだよ」笑
「俺もコハルが大好きだよ。でもどこかで止まるよ」
「イヤよイヤイヤ」
「がんばるよ」
「うん。がんばってね」
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