初めて出会ったマイルドサイコパス01 ~標準語版~
杉内が入社して初めての営業会議の時に皆の前で挨拶をした。
それなりにきちんとした挨拶だった。
それ以降営業会議に参加するようになったのだがコンサルの先生に噛みつき始めた。
コンサルの先生は杉内に対して
「期待しているよ、新しいものをどんどん作ってくださいね」などと言っていたが
「期待に応えられるかどうかわかりません。新しいものがどんどんできるわけではありません」とあっさりと否定した。
数か月たった段階でおそらく社長がコンサルの先生に技術の仕事をあまりせず仕入れの方ばかりやっているという話しをしたのだろう。
しかし本来は社長自身が言うべきだとは思うのだけれど。
不満に思っているのであれば私に言うかだと思う。
あるときの営業会議でコンサルの先生が杉内に対して何故技術の仕事をしないのか尋ねた。
すると仕入れの仕事が忙しいからですと答えた。
君は技術で入ったのだから仕入れをやらなくてもいいのだろうと言った。
杉内は仕入れは私の得意分野でもあるのでぜひやらせてほしいと鴨居さんにお願いした。
そのうえで技術の仕事もやっています。
すぐに成果の出るものではないのですと返していた。
コンサルの先生も何とも言えない顔をしていた。
杉内が入社して半年くらいした時に奇妙なことを言われた。
正直うざったい事この上ない。
「鴨居さんちょっとお話があるんです」
「なに?」
「技術課長の事なんですけどね」
「はい」
「何か感じませんか?」
「何かとは?」
「あの人きっと発達障害ですよ」
「何かがおかしいとか思うことはあっても発達障害とかそんな風に思ったことは無いけど」
「だってコミュニケーションは取れないし段取りはぐちゃぐちゃだしやってと言ったこともいつまでも出来ていないし」
「そもそも発達障害って知らないからな。でもそれって人に言うには失礼な話だろう」
「いやそんなことじゃなくて、仕事に支障が出てるから言ってるんですよ」
「ちょっと待て。君は医者ではないだろう?」
「違いますけど」
「あのな。医者でもないのに聞かれてもない。言ってることが失礼過ぎて絶句するよ。仮にそうであったとしても、そもそもそうなのかそうでないのかも何の興味もないし口にするべきではない」
「はあ、そうだと思ったんですけどね」
「君がそう思うのは勝手だ。だから何という話だよ? しかしどうして俺に言うんだ?」
「何とかしてくれるかなと思ったんで」
「あのな、自分一人で仕事してるわけじゃない。しかも自分は課長から仕事を教えてもらわないといけないんだよ」
「はあ」
「はあじゃない。ちょっと慣れてきたからか知らないけど、俺を含めて批判ばかりしてるじゃないか。その割に本来自分に言われてる仕事は今の所一切していないんだぞ。何してるんだという話だ。人の悪い所ばかり目について自分の悪い所には目がいかないみたいだな」
「自分の悪い所ってなんですか?」
「君は悪いところが無いと思っているのか?」
「無いと思っています」
「はっきり言う。本来の仕事をしろ。自分から聞こえてくるのは個人攻撃の悪口だけだ。自分が覚えられないからと言って相手を攻撃するな!」
「覚えられないなんて一言も言っていないですよ。やっていないだけで」
やはりバカだったとこの瞬間思った。
しかも人の事が気になって仕方がないタイプだ。質が悪い。
「やってないだけでって言ったな。なんでやっていないんだ! それが仕事じゃないか。もういい歳だから自分で仕事の進め方もわかっていると思ってたけど君のほうこそ俺が教えてやらないとダメなのじゃないか」
「鴨居さん製造の事何も知らないじゃないですか」
「仕事の進め方の話だ。あのな。ケンカを売ってるんだったら買ってあげるけど」
「ケンカなんかするつもりないですよ」
「君は口ばかりで自分の仕事が出来てないどころか人の仕事の邪魔をしている。
賛同してほしいのか知らないけど君に賛同なんか出来ない!君にかかわったら、かかわった人間全員の悪口言った上に病名までつけられそうだな」
「そんなことないですよ」
「とりあえず仕事をしなさい。ちょっと自分のこと観察させてもらうから。余計なことしすぎだし考えすぎだ」
「観察なんてお断りですよ」
「だまりなさい。俺がそう判断したんだ。それに教えてもらう身の上の君が、仕方が無い教えたいのだったら教えられてやろうみたいな態度なのは君のほうがかなりおかしいと思う。とにかく課長の技術の仕事を覚えろ。念のためにもう一回言う。課長の仕事じゃ無くて課長がやっていた技術の仕事を覚えろ! 君が教えて下さいって頼まないとだめだ!」
「はぁ」
なんだこいつは! 入って半年でそんなことを言いだすなんてお前のほうがよほどおかしな奴だと思う。
ちょっと注意しておかないと何を言い出すのかわからない。
人それぞれ得意不得意がある。
今まで何にも気にしたことは無いことは無いけれどそれに今流行ってるからと言ってそんな文言を当てはめるなんて信じられなかった。
俺にも人と違う面があると思う。
違ってて当たり前だと思っている。
その違うことに病名付けられたらショックだろう。
しかしこの男は何と言うかズバリ言うことで言ってやったみたいな気持ちになっているのだろうか。
まるっきりの的外れでもないだけに質が悪い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます