招かれざる客
新井家にお邪魔した一週間後の休みの日、昼過ぎにチャイムが鳴った。
その時部屋にはコハルがいて、「誰やねん!セールスか」と言い出したが、
「ええわ、俺が出るから」
「ハイ」って返事をしたがまた返事がない。 僕は嫌な予感がした。
「もう一度どなたですか」って聞いたが返事がない。
玄関のドアに近づいてはい。「何でしょう」と聞いたらドアをドンドンたたかれた。
あぁ。もしかして。 僕は恐る恐るドアを開けた。
そこには再び涙を流した元カノが立っていたのだ。
そして一連のやり取りを聞いていたコハルも僕のすぐそばにおり元カノの姿を認めると「こちらはどちらさんや」と聞いた。
「こちらは元カノさんや」と僕が答えた。
「元カノさんが私らの愛の巣に何の用があってきたんやろか?」
思いっきりけんか腰で話しかけていた。
元カノは少し引いたみたいだが「あんたこそ誰や」とけんか腰で答えてた。
もうなんやこれは。
「私はシンの嫁やけどな。あんたか、シンがいながら浮気するようなあほ女は。はよ帰り」
我が嫁さんながらきつい物言いだ。 でも元カノにはちょうどいいかもしれない。
元カノが
「シン、どういうこと? 別れてまだそんなに時間たってないのにもう結婚したの?
私を裏切ってたの?」 と言い出した時にはめまいがした。
「違うわ。お前が消えたから嫁さんが現れたんや。 言い方に気をつけなあかんで」
「シン。とりあえず中に入ってもらって話しようか。 ちょっとこの女はずうずうしいと思うわ」
「じゃあとりあえず中に入って」 元カノが部屋に入ると空いたスペースに座った。
嫁さんが聞いた。「何しに来たんや? あんた浮気したんやろ。振られたんか? なんや?」
「関係ないやん。シンほんまにこの人と結婚したの? 私のこと好きじゃないの?」
「お前もおかしいこと言うな。どんな立場で今の言葉を口にしたんや」
「だってシンなら私のこと待ってるって思ってたから。私はシンのこと信じてたから」
「ちょっと待て。浮気したのは俺じゃないよな。お前やんな。
ほんでお前がそのことをわざわざ俺に知らせて別れることになったやんな。
今お前何言ってるかわかってんのか?」
シンの顔が見たことないような顔になってる。
この顔でパンチパーマは怖いわって思った。
元カノは言った。「私は一人ぽっちになってしまった。だから。だから。シンなら受け入れてくれると思って。せっかく来たのにこの浮気者!」
って言った瞬間コハルが元カノの頬っぺをパチーンとしばいた。
「あほんだらぁー。私の旦那やぞ。 お前、人の旦那のことえらいコケにしたくせになんやそのもの言いは。頭おかしいんと違うか。自分大丈夫か脳みそ、ええっ!
ひどい目に合わせた上にまたヨリ戻そうとしてどんだけシンを苦しめたら気が済むねん。 どっちが浮気もんやねん。 シンは一回も浮気したことあれへんわ。
このカス女。 わざわざ話聞いたろうと思って部屋に入れたけど脳みそが沸いとるから話にならんわ。もう帰れ。 お前は私からしたら貞操観念の低いあそこの緩いやりまんじゃ、このくそ女」
元カノは泣き出したがコハルは構わず
「シンがどんだけ涙流したとおもてんねん。私はシンを苦しめるんは男でも女でも許せへんのじゃ。さっさと帰れ、このあばずれが」
元カノは何も言わず立ち上がると玄関に向かった。
そして何も言わず靴を履いて出て行った。 コハルはそのあとに塩をまいた。
「シンごめん。 あんなひどいこと言ってしまって」
「いや。俺のほうこそすまん。コハルに嫌なこと言わしてしまって。でもなんか俺、すっきりしてる。コハルが完全に俺の味方でガンガン言ってくれたからうれしかった。 ありがとう。コハルとけんかするの怖いな。笑 でもかっこよかったわ。お前の平手はアントニオ猪木にも勝るとも劣らん。 一瞬白目が見えた気がしたわ」
「シン。それは言い過ぎや。フフフ」
「コハル。ほんまにありがとう。 俺のことそんなに思ってくれてるなんて。こんなにうれしいことはないよ」
「シン。また涙ぐんでる」
「うれしいよ。愛してるよコハル」
実は昨日入籍したばかりだ。 そして昨日の晩からずっと愛し合ってきた。
部屋の中は妖しい雰囲気で一杯だった。
そしてまた愛し合った。
この大柄な気持ちの優しい口の悪い女のことがとても大好きだ。
シンのがでかい。素敵やとまたつぶやいてる。
ちなみにもう出ないけどコハルのために頑張っている。
「なあコハル。たまにアダルトビデオ見てもええか」「なんで?」
「研究や。なんでも勉強せなあかんやろ」
「そうなんや。じゃあいいよ。でも一人で出すのはあかんよ。私が出す。それは絶対やからね」
「わかった」
「シンってエッチのテクニックというかなんか上手な気がする。たくさんの女の人と経験したの?」
「いや。元カノだけやで」
「そうなん?」
「うん」
「こんなこと言ったら恥ずかしいねんけど私のエッチなジュースがこんなに出てくるのってびっくりしてるねん」
「そうなんや。でもそれはうれしいでコハル」
「恥ずかしいけどそうなんや」
「うん。とてもかわいらしいで」
「でもなんでやろうな」
「そうやな。俺はコハルの表情を見てるねん。コハルが感じているのか一生懸命読み取ろうとしてる。 コハルが今どんな感じなのか、どうしてほしいのかなんとなくわかるんや。だから感じてくれてるってことやと思う。
元カノの話したら申し訳ないけど、暗くて表情がよく分からんかった。
コハルとは言葉を交わさなくてもお前の目や表情や声、肌の色合いとか全部見て判断できるし、俺も感じてるコハルを見ることですごく感じるしうれしいんや。
うまいとかじゃなくて愛情やと俺は思ってる。コハルが愛おしいからって思ってる」
「シン。うれしいよ。私もシンに感じてほしい。一緒に感じたい」
「俺もそう思うよ」
「シン。ずっと一緒やで」「うん。ずっと一緒や」 チュッ。
「さあまたがんばろか」「えっ!?」
シンと暮らし始めたときシンの住むワンルームマンションに転がり込んだ。
私はギタリストだったがシンの部屋は結構周りに音が漏れるみたいで時々管理人からの苦情があり、ギターの練習をするときは実家に帰っていた。
あの時の声が大丈夫なのかどうかはわからない。
それの苦情は来ていないから大丈夫と思う。
でももし言われたら恥ずかしいやろうな。
直接言われることは無いけれど恥ずかしいやろな。
シンと相談してお金がたまったらまず何をするかを考えたときやはり住む所が重要じゃないかと一番に考えることになった。
「音が漏れないところやね」
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