初めての帰省

私とシンが結婚してシンの実家に挨拶に行ったとき私の両親も一緒に帰った。


そしてシンのお父さんが私のお父さんを見るなり、「おおーっ」と言ってすごく喜んでくれたことを思い出した。


「新井さん久しぶりやのぉ。息子の嫁のお父さんが新井さんやったとは」と言ってとても喜んでくれた。


「どれどれ息子の嫁さんをワシに見せておくれ」と言って近づいてきた。


「こんな山の上まで上がってきてもろて、すまんことや。あんたがコハルさんか。初めましてシンの親父や。よく息子のお嫁さんになってくれた。 ありがとう。えらい別嬪さんやなぁ。それに大きい! ええ体格してるし申し分ないわ」


そして「息子をよろしくお願いします」と頭を下げられた。


シンのお母さんも隣で頭を下げている。


私はあわてて「不束者ですがよろしくお願いします」と頭を下げた。


「こんなところやからそないに堅ならんとざっくばらんに過ごしてや。

ところでコハルさんはお酒は飲めるんか?」 


「私はまあまあ飲めますよ」


「そうか。ほな後で皆で飲もか」


「はい。よろしくお願いします」


その晩シンのお父さんと私のお父さんは一晩中お酒を酌み交わした。


 私とシンも最初はお相手をしていたがシンが私の手をポンポンとたたいたので席を外した。


私のお父さんの仕事の話。私の話。息子の話。シンのお父さんの若いころの話。


いろんな話が飛び交っていた。


 シンのお母さんと私のお母さんも意気投合したらしく仲良くいろんな話をしつつ笑い声が絶えまなく聞こえてきてた。 


 二つの家族が一つの場所に集まってこんなに楽しい時間が過ごせるなんてなんてすばらしいのだろう。


私にはシンに話していないいくつかの辛い出来事がある。


でもそれはいつかシンに話さなければならない。シンは受け入れてくれると思う。


だって私が見つけた大切な旦那様なんだから。


「ねえシン」 「んっ。どないした」たぶん私の目がウルウルしてる。


「お、お前まさか発情してるんと違うやろな?」 私は上目使いにシンを見つめた。


「ええっ。ちょ、ちょっとあかんぞ。ここではあかんぞ。嘘やろ。なんで。

なんで刺激されたんや?」


「シン。私我慢できへん」 「コハル。わかった。絶対に声を出すなよ」 


「うん」 


私はシンにしてもらった。


シンの家で飼っている犬のリュウが吠えだした。遠吠えのようだ。


アォーン。ワンワンワンって。 


シンは言った。


「お前の色気のある声に反応して吠えてるわ。犬には聞こえてるんやな」 


私は恥ずかしくなった。 「シンもうやめよっか」 


「コハル。それはちょっと俺が収まらへんやん」


 結局シンは最後までやり遂げた。


私は制約のある状態でするのが初めてだったので意外とよかったなって思った。


シンの田舎の家は山の上にあり夜は本当に静かだ。 虫の声しか聞こえない。


お風呂は五右衛門風呂で小さいがとても趣がある。


 シンは小学生の時からこの場所ではないけれど家の五右衛門風呂を沸かしていたらしい。


茨木に住んでいる私はお風呂を薪で沸かすなんて初めて知った。


 昔日本昔話で人里離れた山奥で五右衛門風呂で煮られて食べられるという話を聞いたことがあるようなないような。


私はいつもシンに煮られて食べられている。 てへっ。


翌朝目が覚めると外は一面、霧に覆われて真っ白だった。


和歌山の田舎でこんな霧が出るのは珍しいとのことだった。


ぼんやり見える山の稜線が幻想的だった。


太陽も薄く、その存在をアピールしている。空気がきれいだ。


シンはこんなところで生まれ育ったんだ。 


シンのルーツを見ることができてよかったと思う。


シンは体は小さいけれど心はおおらかだ。 


元カノのあんな大嘘を呑み込んだんやから。


でも消化不良になって苦しんでたけれど。


私が取り除いてやったわ。わっはっはー。


「ねえシン」振り向いたシンにキスをした。




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