第158話 テーマパークの入り口ってなんであんなにテンション上がるんだろ
結婚なんてまだまだ先の話になるだろう。
でも、そんな将来を想像しながら喋るのも楽しいよね。
2人の理想的な未来を描きながら、テーマパークがそのまま駅名になっているコンコースのエスカレーターを上がりきった瞬間、雰囲気がガラリと変わる。
テーマパークに隣接するエンターテインメント型の複合施設のストリートがテーマパークにやって来た俺達をお出迎え。
ここにはレストランやファストフード、限定ショップや宿泊施設があり、このストリートを歩いて行けば、すぐにテーマパークに到着となる。
テーマパークの入り口までやってくると壮大な音楽が聞こえてくる。まだテーマパークに入ってもいないのに、ここだけで映画の世界に迷い込んだかのような感覚に陥る。
白川と坂村とはここで待ち合わせ。
待ち合わせの時間は開園時間の9時。
なのだが、坂村との待ち合わせは8時30分にしておいた。色々と作戦を練るためだ。
まだテーマパークのゲートが開いていない前には既に人が並んでおり、そこの付近に坂村の姿が確認できた。
「おはよう」
「おはようございます」
こちらの挨拶に気がつくと、坂村は手を挙げて軽く挨拶を返してくる。
「おはよう」
「あれ? 緊張してない感じ?」
「そりゃ俺の中では何回かデートしてるからな」
モテる男みたいな発言の後に、ずーんと沈んだ様子で肩を落とす。
「向こうは違うだろうけど」
「「あ、はは……」」
俺と有希はなんと声をかけて良いのかわからずに、共に苦笑いだけが出てしまった。
沈んだ様子の坂村は、ふと視線を有希に向けると復活したように肩を起こす。
誰がどう見たって見惚れてしまっている。
「私服姿の
「どうも」
可愛いとか、綺麗とか、何千回と言われ慣れている有希は塩対応で坂村に返した。
「私服姿の有希が可愛いとか当たり前だろ。誰の彼女だと思ってんだよ」
「晃くんの女です♡」
「女って表現はあまり好きじゃないな」
「晃くんの愛人です♡」
「愛人は違うくない?」
「晃くんの嫁です♡」
「それそれー♡」
ギュッ。
「あー、なるほどね。白川が言ってたバカップルってこういうことか。まさか
冷めた声を出してくる坂村にズバッと言ってやる。
「坂村も白川とこういうことしたいだろ?」
「したいです」
「素直でよろしい」
「ではお2人共。さっそくと作戦なのですが」
有希はすっかり
彼女の考えるプランはフェードアウト大作戦。
最初は4人で行動して白川の気持ちを温めておく。
ある程度気持ちが温まったところを、人混みを利用して俺と有希、白川と坂村のペアではぐれる。
スマホの電源は電池切という設定にしておけば足が付かない。
坂村が、「せっかくだしこのまま2人で回ろうか。あいつらも2人でよろしくやってるだろうし」というセリフをかませば、ノリの良い白川は、「そだねー」とかなんとか答えるだろう。
んでだ。夜まで楽しんで気分が高揚したら告白。見事オッケー。
「──という作戦でいかがでしょう」
「こ、告白……」
ゴクリと唾を飲み込む坂村。
「無理に告白はしなくても良いです。やはり、その場の空気と流れがありますので。大事なのはタイミング。いけそうな空気なら行ってください」
「流石は
そこで気になったのか、坂村が俺達に問う。
「そういえば2人はどっちから告ったの?」
「私です」
食い気味で即答する有希へ、「へ?」と予想外の声を漏らす。
「勝ち確だったので。あー、晃くんは私のこと大好きだろうなー。って思ったので、ガンガン攻めました」
「有希のこと大好きだったのでガンガン攻められた草食系男子が僕です」
「そうだったのか。意外だな……」
「私達の場合は結構特殊だと思います。琥珀さんは
「このカップルはルビで遊ぶのが好きなんだな」
ちょっと笑うと坂村が拳を作ってやる気を見せる。
「俺、頑張るよ。もし付き合えたら、今度は本物のカップル同士、またダブルデートしてくれよ」
「おいおい。まだ始まってもないぞ」
「ええ。大丈夫。きっとうまくいきますから」
俺達からの声かけに、「ありがとう」と返事をしてくれたタイミングで、「あれー?」と聞き慣れた声が聞こえてきた。
「みんな早いね。わたしが1番だと思ったのに」
時刻は8時45分。今回のメインターゲットの白川琥珀がやって来た。
「ミッションスタート!」
「ミッションってなに?」
「ミッションスタートです!」
「ね? ミッションってなに?」
「よっしゃ! ミッションスタート!」
「坂村くん!? 野球の試合よりやる気になってるよ!?」
疑問に思う白川を置いて、本日のミッションがスタートする。
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