第145話 メイド喫茶だろうが部屋だろうが風呂だろうがひたすらにイチャイチャ。平常運転です。
頭に付着したダーククロニクルファンタジー(コーラ)は、タオル如きでは落とせなかったので、帰って速攻シャワーを浴びた。
何回シャンプーをしてもベトベトしている気がする。
「今日は、すみませんでした……」
バイト終わりの遅い時間に帰って来た有希が謝ってくる。
「晃くんが店長に鼻の下伸ばしていたので、ついカッとなってあんなことを……」
俺、鼻の下伸ばしてたんだな。客観的に見たらそうだったのかもしれない。彼女にダーククロニクルファンタジー(コーラ)を頭からぶっかけられるくらいだし。
「い、いや。全然。ちゃんと頭拭いてくれたし」
昼間のことを思い出しながら有希の胸元を見る。
彼女は慌てて胸元を隠して顔を赤くする。
「あ、あれは忘れてください! 恥ずかしくて死にそうです!」
あの時はカッとなっていたと言っていたので、熱くなっての行動なのだろう。冷静になっている今、思い返すと相当恥ずかしそうにしている。
それにしても、有希は熱くなるとあんなご褒美みたいなことをしてくれるんだな。俺としては熱くなった方が得なのではないだろうか。
「忘れなきゃだめなのか? あんなにラブラブしたのに」
「うっ……」
ちょっと寂しそうに言うと、有希は挙動不審になり唸り声を出す。
「うう……。晃くん意地悪です……」
いつも凛としている有希が弱い所を見るとギャップでどうにかなりそうだ。
「ち、ちなみにですね! 晃くんの頭にぶっかけたのは本当に申し訳なく思いますが、そもそも晃くんが店長に鼻の下伸ばしてたのが原因なんですからね!」
お。立て直した。
でもまぁ確かに。元はと言えば俺が悪いのは間違いないかも。本当の原因はめるんさんだと思うが……。鼻の下を伸ばした俺が悪い。
少し考えてから俺は腕を広げる。
「ごめん、ごめん。おいでー」
ハグするしか思いつかなった。
「……むぅ。そうやって誤魔化したって無駄ですよ。私、まだ怒ってますからね」
ぷいっと顔を逸らしているが、プルプルと震えている。
「きゃっ」
なので強制的に彼女の顔を俺の胸に埋めてやる。
「こ、晃くん、や、やめて……」
「嫌?」
「だ、だって、私、汗くさいし……」
恥じらいの声が妙に可愛い。
「有希の汗の匂い、めちゃくちゃ良い匂いするよ」
そう言って抱きしめる力を強める。
「に、匂いフェチなんです?」
「有希限定のな」
「うう……」
「有希の匂い好きだよ」
「そ、それは……なんて反応したら良いかわからないです……」
次の瞬間、彼女は胸の中で顔を振って胸元から顔を上げた。
微笑んでから言い放つ。
「晃くんコーラ臭い」
「誰のせいだと思ってんだよ」
「私です!」
この専属メイドは甘い雰囲気だったのをブレイクして、キリッと言ってきやがる。
「ですので、私が責任をとります」
「ぬ?」
♢
本日何回目の風呂かわからない。別に風呂は好きだから良いんだけど、ちょっと問題があるというか……。
「痒いところはございませんかー?」
有希が一緒に入ってる。
「流しますねー」
丁寧に優しくシャンプーを流してくれた。
1度混浴してる身だし、有希は俺のシャツを着ている。とはいえ、生足丸見えだし。そもそも俺は彼氏シャツをワンピースのように着る彼女が大好物なんです。はい。
性癖をえぐりこんでくる女の子と一緒に風呂に入るなんて緊張しかない。
「ううーん? 晃くーん? もしかして緊張してますー?」
見透かされてるし。
「修学旅行の時に洗いっこしようとか言ってたくせに恥ずかしいのですかー?」
確かにそんな約束したな。結果裸で混浴したけど。
「プクク。さっきのお返しです。存分に恥じらってください」
「有希は恥ずかしくないのかよ」
「私は服を着てますからね」
「逆にエロいぞ」
「またまたー。晃くんの上半身の方がエロいですよ」
そう言って、ピトッと触ってくる。
「有希……。まさかだとは思うが、俺の筋肉を触りたくて一緒に入ってる?」
「ぎくっ」
図星みたいだな。
「だ、だだだ、だって! だってだって、晃くんは私の胸を堪能したのですから、私だって晃くんの胸を堪能したいです! 生で!」
このメイド。開き直って欲望をそのまま口にしている。
「言ってくれればいつでも貸すけどな」
「え、へへー。ではでは、お言葉に甘えて」
完全に有希のキャラが壊れている。筋肉は人を惑わす魔法の物理。うん。意味わからん。
有希が俺の胸筋に顔を付けると、「んふふ」と変態的な笑い声を出す。
「晃くんコーラ臭い」
「うっそ。まだ臭いの?」
「うそ」
「うそかよ」
「はい。晃くんの匂いがしますよ。良い匂いです。それにめっちゃドキドキしてます。ふふ。相変わらず私のことが好きですねー」
「そりゃ、な」
有希が俺の胸を堪能しているとキッチンの方から、ブウウウウと小さくバイブの音が響いた。キッチンは浴室の真ん前。シャワーも蛇口もひねっていないから、バイブの音がよく聞こえる。キッチンにスマホを置くのは有希だけだ。
「……もう。こんな時に友達の少ない私に電話だなんて。誰でしょうね。まったく。どうせ勧誘かなにかでしょうけど」
せっかくイチャイチャしてるのを邪魔されて、ぷりぷりと怒る有希は浴室のドアを開けてキッチンに置いてあるスマホを手に取る。
スマホを見て、一瞬硬直すると、苦笑いでこちらを見た。
「すみません。ちょっと電話しますね。大事な電話みたいなので」
「あ、ああ」
急に真面目な声を出すもんだからちょっと驚いてしまう。
「有希も体濡れてるから、電話出る前に体拭いてから出なよ」
「はい。心使いありがとうございます」
素直に聞いて、有希は俺の部屋のタオルを使って体を拭いてから電話を始めた。
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