第102話 なんか結婚の結納みたいな報告会
先生からのありがたい祝福? のお言葉をもらい俺達は仲良く朝食会場へとやって来た。
教員は色々と準備があるため、ホテル側にお願いして、5時からの朝食だったらしい。
猫芝先生は朝食を取って、部屋に戻ろうとしたところで俺達を見守ってくれていたって感じ。
なので朝食会場の席は、ガラガラ、と言うか俺達以外に誰もいないので選びたい放題であった。
適当な4人席を確保して、バイキングスタイルの朝食を吟味しに行く。
洋食から和食と、様々なバリエーションがあり、どれにしようか悩みながらも、有希が作ってくれる朝ごはんは和食が多いため、自然と和食をチョイスしていた。
シャケとだし巻き玉子。煮物とサラダに味噌汁に白米をおぼんに乗せ、戻り側に温泉卵があるのが珍しく、それを1つ取ってから席に戻る。
有希も似たようなメニューをおぼんに乗せて戻ってくる。
「……」
「……」
「あの、有希さんやい」
「どうしました? 晃くん」
「なんで隣?」
有希は当たり前のように隣に腰掛けて来たので、ついついそんな質問を投げてしまった。
そりゃ、隣に座ってくれるのは嬉しいんだけど、2人で一緒にご飯の時は、いつも正面を向かい合って食べるので、正面にいないのが少し違和感である。
「それはもちろんですね……」
言いながら、箸でだし巻き玉子を掴むと、俺の口元へと持ってくる。
「あ〜ん。しやすいようにですよ」
「おお。なるほど。正面じゃ腕を目一杯伸ばさないといけないもんね」
「ですです。はい、あ〜ん」
「あ〜ん」
有希が俺へとだし巻き玉子を雛に餌をあげるようにくれるので、俺も親鳥から餌をもらう雛のように口を開けて食べさせてもらう。
「どうです?」
「う〜ん……」
もぐもぐとだし巻き玉子を味わって、ごっくんしてから有希へと感想を述べた。
「有希のだし巻き玉子食べたい。てか、有希の料理が食べたい」
「わかりました。今すぐにキッチンに行って晃くんのための朝食を作ってまいります」
「わぁい。有希の料理が食べれるぜー」
「ちょい待ち!」
ふと、聞き慣れたクラスメイトの声に反応して視線を向けると、そこには白川琥珀が呆れた顔で俺達の前に立っていた。
「あ、琥珀さん」
いつの間にか名前呼びになっているのが気になったが、それよりも先に白川が反応を示す。
「『あ、琥珀さん』じゃないよ! ゆきりん! ツッコミ不在のバカップルを見せられるこっちの気持ちも考えて! てか、今どこへ行こうとした!?」
「キッチンです」
「なんで、さも当然のように修学旅行生がキッチンに行こうとしてるのさ!」
「晃くんが私の料理をご所望なので」
「まじで受け取るな!!」
「おい白川。俺はまじだぞ?」
「ええい! 話がややこしくなる! とりあえずゆきりんは座りなさい!」
「はぁい……」
いつもと立場が逆転しているような気がするが、これも修学旅行のバフの効果なのだろうか。
♢
「それで? 2人は付き合ったの?」
白川が朝食を取ってくると、有希の正面に座り、そんな質問を投げてくる。
その質問に俺達は、ゆっくりと頷いた。
「まぁ、あの放送見たら、ねぇ……」
「女子の間でも噂になった?」
「そりゃね。もう、わたしの部屋に恋バナ大好き女子達が、わんさかやって来て、ゆきりんに質問の嵐よ。先生も混ざって、そりゃもみくちゃだったんだから」
「あ、あはは……。懐かしいですね。つい昨日のように思えます」
「昨日のことだよ! なんなの!? 浮かれてるの!?」
「浮かれてます♪」
「くそっ可愛いくて許してしまう自分がもどかしい!」
この2人相性良いなぁ。
「男子の方でも相当噂になったんでしょ?」
白川の質問に答えようとすると
「そりゃ物凄いことになったぜ」
答えながら、白川の横に腰掛けるのは寝起きの正吾だった。
「晃への怨みつらみ渦巻く、嫉妬の嵐がタイフーンで、竜巻サイクロンだったな。晃」
爽やかな朝に相応しい、爽やかな笑顔でやってくるガタイイケメンを指差して、思いっきり睨みつける。
「オマエをコロス」
「こおお!? なぜ!?」
「お前が元凶じゃ! ボケえ!」
「最後の枕ストレート庇ったじゃねぇかよ! パラディンだったろ!」
「うるせっ! 地元帰ったらぶっ殺してやらぁ!」
「こおお! 大平と付き合えて良かったなー!」
「ぬおおお! ありがとう! 親友!」
「おう! ともよ!」
ガシッ!
腕を組み合い友情を分かち合う。
「野球部男子ノリだねぇ……」
「どういう意味です?」
「支離滅裂で中身がない」
「なるほど。晃くん素敵です……」
「あー。ゆきりんもバグり出した……。とうとう、わたしだけがまともな人間になったのね……。わたしだけは正常でいるわ……絶対に……」
でも、と白川は俺と有希を見比べて、目を細めて言ってくれる。
「おめでとう2人とも。お似合いな2人だね。付き合ってからも、仲良くしてくれると嬉しいな」
まともな白川の祝福の言葉をもらうと、バカの正吾も一旦落ち着いて、改めて言ってくれる。
「おめでとう。ちと寂しい気もするけど、2人ともお似合いだぜ。これからも仲良くしてくれよ」
らしくないし正吾の言葉をもらい、なんかいつも見たいなボケをかましたくなるのを我慢して、むず痒くなる。
「ありがとう2人とも。これからもお願いします」
「ありがとうございます。これからも私達と仲良くしていただけると幸いです」
有希と2人で頭を下げる。
結婚の結納みたいなノリになってしまっているけど、これで良いと思える。
2人にちゃんと報告ができて良かった。
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