第7話康子
次の日私は康子さんの弟さんの家を訪ねた。
家は平屋で年季が入っていて、とても古い。家を出てすぐ近くに階段があり、そこは車庫の中を切り取ったような建物があった。
私はインターホンを鳴らすとバタバタと言った足音を鳴らしでてきたのは60代くらいのおばあさんだった。
「あの!康子さんの弟さんいますか?」
と私が言うとそのおばあさんは優しく微笑み「ちょっと待っててね」
と言い急いで家の中に入っていった。そして数分後80代くらいのおじいさんが出てきて
「こんにちは」
と言った。少し怖そうな人に見えたが、声のトーン的にとても優しい人なんだろうなと思った。
「康子姉さんのことを知っているだなんて君は何者だい?」
そう言われた。康子さんは幼いときに亡くなってしまったいるため知っているのは指で数えられるくらいの人だけだった。
「
しばらく沈黙が流れると義明さんは私を家に上がらせた。廊下を歩くと居間に着き、そこには
康子さんの肖像画があった。
「よかったらまんじゅうでも食べていっておくれ」
と目の前に差し出されたまんじゅうを食べながら私は義明さんを見る。義明さんは口を開き
「康子姉さんは麻疹にかかっておらっちが5歳の時に亡くなった。ちょうどそのときはなぁ、戦争があったからだべぇ。ちなみに康子姉さんのことを覚えているのはおらだけ。妻には話しをしたことあるだけだぁ。おらっちには他に4人の下の弟がいて、両親は亡くなって……おらっちが働かねぇといけなかったんだべぇ。おらっちばかりなんで辛い思いしないといけなかったんだよ……」
義明さんの目には涙が溢れていた。するとその状況をあの世から見ていた康子さんは
「やっぱり……私は生まれ変わるべきじゃない……」
と声が段々と小さくなっていた。その声は私の耳元にしか届かない。
しかし義明さんは
「だけどなぁ、おらっちは昔から姉さんに可愛がってもらえて……その分おらっちが他の弟妹を愛を持って可愛がらないといけないがなぁと思ったんだべぇ。おらっちが生きてる間に康子姉さんは生まれ変わっておらに会いに来てくれると思ったんだべ。だけど……どうもピンと……来ねぇなぁ……」
康子さんはその言葉を聞いて泣いていた。
「私……義明に辛い思いさせたのに……」
「だからおらが先に亡くなって逢いに行くか、おらが生きてる間にあっちから逢いに来てくれるか楽しみだべ。」
義明さんは顔を上げて笑いながらそう言った。義明さんの奥さんは義明さんの隣になにも言わず微笑んでた。そして義明さんを抱きしめ「よく頑張ったわね。これからは辛いことは半分、喜びは2人で分かち合いましょ?」
と心の声が聞こえた。私は涙が少し出てきた。
「あやめさん。私生まれ変わることにする。」
その声は鼻声ながらも決意を決めた声だった。
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