第8話
音楽が流れ、音楽に合わせて入場すると、体育館で大きな拍手が起こった。まずは卒業証書をもらう。「立花すみれ」「はい!」私は返事をし、ステージに上がった。そして、校長先生から卒業証書を受け取った。そして、『卒業生からの言葉』も終わり、合唱になった。ばん奏は、春日ちゃんだ。歌い始めたその時、私のとなりに花子ちゃんが姿を現した。会場が少しざわついている。見まちがいかもしれない、と目をこすっている人もいる。そして、花子ちゃんが歌い始めたしゅんかん、会場がしいん、と静かになった。
会場が静かになったすぐ直後、会場は温かい空気に包まれた。花子ちゃんはすごく歌が上手だった。歌い続けているうちに、みんなの声が1つになるのが分かった。あれ?何だかなみだか出てきた。がまんしようとしても、次々となみだがあふれてくる。ハンカチでなみだをふこうとした。でも、ハンカチがなかった。すると、となりからすっとハンカチがわたされた。それは花子ちゃんのハンカチだった。桜色のハンカチで、桜の花びらのもようが描かれてあった。花子ちゃんの方を見ると、花子ちゃんは、なみだを流しながら私の方を見て「にこっ」と笑った。
私は周りを見ると、いつもは決っしてなみだを見せない香奈ちゃんも、いつもみんなを笑わせてくれるお笑い番長のケンタも、なみだを流していた。どうしてなみだが出るのか分からない。卒業するのがうれしいような、さみしいような、中学校に行きたいような、まだ小学校にいたいようなー。でも、小学校でたくさんの思い出を作ってきたことはみんな同じだ。みんなそういう気持ちなのかもしれない。今日でこの歌を、このメンバーで歌えるのは最後。それなら、せいいっぱい歌おう!そして、合唱が終わると花子ちゃんは再び姿を消してしまった。
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