もりのえいゆう

涙田もろ

第1話 森のヒーロー

『本日、午前8時ごろ、根糸満月村に現れた体調3メートルを超すツキノワグマが、村内に住む85歳の田木義三さんを襲い、重傷を負わせました。クマはその後、村役場に姿を現したところで招集された地元狩猟会によって駆除されました――それでは、駆除を行った狩猟会メンバーへのインタビューをお聞きください』


『――ありゃあデカかったなあ。そう、今まででいちばんだ。腹の部分が白い毛に覆われててこれまで見たこともない奴だったんだがよ、どこにいたんだか……とにかく、馬鹿っデカくて凶暴でスゴかったし、人が襲われちまってるからネ……しょうがねえやな。まあ駆除でけて良かったよ。住民もこれで安心して外を歩けるってもんだ』


『以上、現場からでした。それでは、次は特集の地元グルメ――』




 はらしろクマさん、だいじょうぶかな?

 にんげん、こらしめてくれたかな?


 ウサギさん、だいじょうぶだよ。

 あのクマさんはここらの森でいちばんつよいんだ。

 つよいだけじゃなくて、ほんとうはやさしくてたよりがいがあるよ。


 うん、たぬきさん、キミのいうことはもっともだ。

 こんかいだって、森の木をたおされてすむばしょとか、たべるものにこまっていたわたしたちのために、にんげんをこらしめてやるって、いってくれたんだもの。

 きっとうまくやって、はやいとこかえってきてくれるよね。


 そうさ。あたりまえさ。

 あのクマさんにかかれば、にんげんなんてこてんぱんさ。まちがいない。


 うん、クマさんがかえってきたらぶゆうでんをきこうよ!

 どんなふうににんげんをこらしめたのか。

 にんげんがどんなかおをしてにげだしたのかとかさ!

 

 そうそう!

 いつもわがものがおなにんげんが、クマさんをみてどんなかおになったのか、わたしもとってもきょうみがあるのさ。たのしみだ。


 たのしみ!

 

 そう、たのしみ!


 あー、はやくかえってこないかなー!

 やー、はやくかえってこないかなー!




 数日後、動物たちの森に、チェーンソーを持った人間が入る。

 人間たちは森の木を斬り倒し、根をほじくり返し、ブルドーザーがその後に続いて土が剝き出した平地へとならしていった。

 そしてそこに看板を立てた。


【大国際地所ホーム スイートマンション造成地】


 あのクマは剥製となって、地元の郷土資料館に飾られた。

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