第04話 エントランスは常に明るく
BEAT TAKESHIを名札に刻んで
電子書籍完成迄の道程は果てしなく遠かった……
夏生は目を細めて夕刻の空を一瞥する。
先ず、第一案のキャラクターイラストが糞だった。
「タバコ、なんてアイテムは使用してないんですけど……」
「熱い珈琲なんて描写もZERO、冷コーの間違いでは?」
「傘、差してますけど、雨天のシーンなんてありました?」
「廃墟と化したビルに、キャラを呼び出さないで下さい!」
粗を探す訳じゃ無いけど、本編に無い道具が次々出て来る辺り
一文字も読んでないんだろうなあ、って憶測が現実と化す。
そんなイラストレイターを雇ったアンタもカス!
アンタだよ、アンタ、そう、駒根池さん。
コマネイケさんは、大チョンボをやらかす訳だが
彼女は夏生がわざわざA4用紙1枚分で1話読切にした原稿を
会社の規格のWordで開き
「文末と文頭の間に、一行隙間を空けるべきです!」
正義感いっぱいに、その箇所……全体の35箇所全てに
小学生みたく星印を書いて寄越したらしい。
コマネイケは、それが夏生の癖と言うか傷みたいに捉えたそうだが
その書式が、仮に不味いと判断がつくなら
ことを乱暴に荒立てずに、
編集部がこっそり修正すればいいことでは無いか!
その時、夏生はマンションの管理人の話を事例に出したと言う。
「エントランスの天井電球が切れ掛かっていたのを
管理人自身が気づき、その日の内に取り換えた。何か問題が?」
改行問題が天井電球で、交換するか否かを本人は問うている。
大人気ないのだ。そんな出版社は大きく人気が無い。
夏生は予想する。最初の原画だって、新しいイラストレイターに
発注するのをケチって、パッチワークしたのではないか、と……。
更に、編集者自身も本腰入れて読んでないから
タバコ、熱い珈琲、傘、廃ビルと、ピンポイントに場面を外す。
行為を見透かされた時程恥ずかしいことは無い。
なあ、コマネイケ。アンタ、変読したら、白い妖精だかんな!
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