バス
三毛猫みゃー
バス
寝過ごしちゃった遅刻しちゃう。いつもより2本遅い電車から急いで降りると駆けるように走り出す、駅構内はいつもと違いガラガラだ。
そのままの勢いで階段を駆け下りる。
定期を取り出し右手に持つ、改札が見えた。
いつもの駅員さんに「おはようございます」と挨拶しながら改札を抜ける。
駅員さんは一瞬驚いた顔をしたあと笑顔で「おはよう、気をつけてね」と言ってくれた。
うん、どんなに急いでても挨拶は大事だよね。
バス乗り場が見える、バスが一台止まっている、走りながら行き先を確認しようとしたとき腕を掴まれた。遠心力で回転するように止まると、見知らぬお姉さんが私の腕を掴んでいた。
「お姉さん大丈夫ですか?」
体調でも悪くして助けを求めているのかな? と思い声をかけてみる。
「あのバスはあなたの乗るバスじゃないわよ」と俯いたまま言ってきた。
バスの方を見て行き先を確認してみる『〇〇学園前』と書かれている。
「えっとあの〇〇学園は私が通っている学校なんです、ほら制服だってそうでしょ」
お姉さんになるべく優しい声で言ったところで、ビーと音が鳴りバスの方を向くとちょうど走り出す所なのが見えた。
あー遅刻確定だー、ため息を付きそうになったけど堪える、お姉さんが気を悪くしたら申し訳ないしね。
「お姉さんもうあのバスは行っちゃったけど、どうしてあれに乗っちゃ駄目だったの?」
「だってあのバスの行き先は……───だから」
お姉さんがそういった瞬間キキキーと急ブレーキをかけたような音とバンッと言う音が聞こえ続けてガリガリという何かをこするような音が聞こえた。
音のした方を見るとバスが横倒しになっていてその近くにはトラックが煙を出し止まっている。
びっくりしてお姉さんに声をかけようとして振り返ると、掴まれていた腕はいつの間にか放されていてお姉さんの姿は近くに見えなかった。
私の視線の先には真新しい街灯があり、その下にお花とジュースの缶がお供えされているのが見えた。
お姉さんが言った言葉が耳に残っている。
・
・
・
・
・
・
『だってあのバスの行き先は……あの世だから』と。
バス 三毛猫みゃー @R-ruka
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます