第9話 コスト回収

 ようやくプレゼントが届いたのは、昼を少し回ったあたりだった。


 ノックと同時にドアが開き、ナンシーが勢いよく入ってきた。


 (そんな入り方するならノックの意味がないだろうがっ)


 とジムは舌打ちしながら、ただならぬ様子のナンシーが放つ言葉を待つ。


 「見つけました。アルカナにいました。生きてました」


 主語がなくてもわかる。

 この3週間渇望し続けていた情報だ。


 (よし、予感が当たった。これでコストを回収できる)


 ジムは沸き立つ心を落ち着け、ナンシーへ次の作戦内容と報告事項を書面で急ぎ提出するよう指示を出す。


 「しかしあの状態でどうやってアルカナまで辿りつけたんだ。まったく驚異的な生命力だな」

 

 「えー、まったくです。イクートの森をどうやって潜り抜けたのか…、とても信じられません。それでも我々にとっては吉報ですね」


 「あー、まさにその通りだ。これでまたしばらくここで暮らすことが決定したよ」


 ジムが部屋をぐるりと見まわしながら言う。


 「今回はそんなに長い滞在にならないよう万全を期しましょう」


 「あー、だが滞在が長引こうが気にしなくていい。私はここが気に入っている。それより万全を期してほしい。必要があれば新たなアセットを投入してかまわん」


 「はい、承知しました。15分後に計画班を1305室へ集合させてます。早々に計画を上げさせますので、いつものように承認の根回しをお願いします」


 「任しとけ。そのために俺がいるんだからな」


 ナンシーは無言で頷くと挨拶し部屋を出ていった。


 (さてと、あいつのせいで頓挫したプログラムの見直しをさせないとな。最低限あいつに投じたコストの回収だけはさせてやる)


 新調したばかりのタバコケースから1本引き抜き火をつけながら、そろそろ再度禁煙をするべきなんだろうなと紫煙をゆっくり吐き出した。

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