第30話 元宵節のお祭り

 元宵節というお祭りの日に、私は明々や小芳とともに東花鎮にやってきていた。今日はお祭りなんだから、多くの人が見物にやってくる。浮かれ騒ぐ人たちはつい、お財布の紐も緩むというものよ。それに、お腹も空くだろうから、おいしい肉まんが食べたくなるに決まってる。私なら、絶対なるもの。


 だから、昨日の晩からしっかり準備して、今日は多めににくまんとあんまんを作ってきた。その蒸籠が、荷車には積まれている。

「さぁ、今日は頑張らなきゃっ!」

 私は腰に手をやって、気合いたっぷりに言った。


 もうそろそろ夕暮れ時だ。元宵節のお祭りは、夜に行われる。店や街路に、提灯の飾りが準備されていて、日が落ちれば点灯される。私はそれが待ち遠しくて、そわそわしていた。

「小芳は元宵節のお祭りを見たことはある?」

 私は荷車に腰掛けて脚を揺らしている小芳に尋ねてみた。

「うんっ! お団子食べるの」

 小芳は頷いて、ニコーッと笑う。

 湯圓という餡が入ったお団子を茹でて食べるみたい。


「お団子おいしそう~~っ」

 きっと、もちもちしていてツルンッとしていて、おいしいに決まっている。私は頬を両手で押さえながら、想像を巡らせてうっとりする。

「お嬢様、よだれが出てますよ! まったく、いつからそんな食いしん坊になったんですか?」

 そう、明々が呆れたようにため息を吐く。「食欲旺盛なのは元気になった証拠よ」と、よだれを拭って答えた。小芳と鼻を突き合わせ、「ねー」と笑い会う。

 小芳ったら、とってもかわいい。私はまるで妹ができたみたいに嬉しかった。


「それもそうかもしれませんね……前は本当に食が細くて、お粥を半分食べるのが精一杯でしたから……」

「そうだったかしら……」

 だから、私が入れ替わった時には、痩せすぎなくらいに細かったのね。

 今はちょっとばかり、丸みを帯びてしまっているけれど――。

 私は帯を締めている自分のお腹に目をやった。

「ダイエット……したほうがいいかな?」

 呟くと、「だいえっと?」と小芳が聞き返してくる。

「ああ、なんでもないの。痩せなきゃいけないかなって思って……でもまだ、大丈夫よね」

 私はふふんっと、顎をしゃくる。恩玲さんは私の体型のことなんて、そんなに気にしないはずだ。


 ――気にするのかしら?

 やっぱり、細っそりした体型の女性のほうが好み?

 恩玲さんは優しいから気を遣って言わないだけかも!

「ど、どうしよう……肉まん食べすぎたかも……っ」

 私はパッと口を押さえる。「今さら、なんなんです」と、明々が私を見る。

「独り言よ……」

 そう、ぎこちなく笑ってごまかした。

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