第30話

 まあ結局ね、魔獣の骨が大量に発見され、帝国軍が魔石なんかは持っていったって話でね、憑き物の話はガセだったらしいんですけどね。


 それが確認できたってことでイレイサーのお仕事は終わりなわけですよ。あ、ガセ情報を渡したってあいつらは思ってるみたいですけどね、違うんですよ。


 ほら、先程も言ったように我々イレイサーのお仕事はその確認も含まれるわけですよ。なんだったらガセネタが九割なんですよ。それを確実に確認していくのも我々の大事な仕事なわけですよ。

 なのにあいつら人を無能扱いですよ。私の苦労もわかって欲しいものです。あ、また愚痴を。


 んでまあ、骨と魔石の件は片付いたわけですよ。なのにあいつら町のお化けに興味を持っちゃって調べ始めたんですよ。


 そしたらあなた、お化けの正体は王国時代にバインランドを治めていたお貴族様、しかもお嬢様だったって言うんですよ。


 町の大人たちはそれを知ってて子どもたちを夜に外に出さないように、自分たちもお嬢様の邪魔をしないようにしていたんだそうです。


 ああ。もちろんお嬢様一人が夜にお散歩をしているだけならね、問題ないんですよ。問題はそのお嬢様と一緒に散歩をしている相手なんです。


 ええ、そうです。憑き物だったんですよ。んで事もあろうに一人のイレイサーがそのお嬢様とコンタクトしてしばらくお嬢様とその憑き物と毎晩散歩したって言うんですよ。

 最初に聞いた時は驚きましたよ、そりゃ。


 しかし、事情を聞きましてね。まあそういう流れになったのもわからなくはないんですけどもね。


 そのお嬢様のお屋敷に一年前に強盗が入ったんだそうです。お嬢様を残し一家は惨殺されたんだそうです。

 お嬢様はその日たまたまでかけていて戻ったら食堂で全員が惨殺されていたんだそうです。十四才ですよ、お嬢様。


 もしうちがそんな事になって娘がそれを発見したらと思うと、ね。涙が出てきました。

 そんな事をした奴らは絶対に許せません。ええ、許せませんとも!


 そのお嬢様はどんなに辛かったでしょう。悲しかったでしょう。


 その日以来、お嬢様はお屋敷に引きこもり誰ともお会いにならなくなったそうです。


 そりゃあ町の人たちも心配だったでしょう。私、もう涙が止まりません。


 町の人の話では伯爵家を襲ったのは当時バインランドを統治していた帝国の者だって言う話だったそうです。


 んなバカな、と思いましたが調べてみると、バインランドで殺害されたり行方不明になったりした者五名が事件に関与していることがわかりました。


 そいつらは自分たちの統治しているバインランドがいつまでも伯爵家を敬っていることが気に入らなかったのだと。それだけのことで伯爵家の人たちを惨殺するって人って怖いですね。


 しかしそいつらを殺したのが憑き物だってことがね、問題なわけですよ。


 我々はイレイサー。憑き物は落とさなければなりません。


 あいつは理解していますが、もう一人のイレイサーが案の定イレイスを躊躇したようです。

 そう。私はね、彼の成長を願ってこの依頼を彼らに託したんですよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る