第29話

 二人を向かわせたのは旧王国領バインランド。旧王国は約八百年前に起きた魔獣大襲撃で甚大な被害を受け国力が低下、王族の混乱も合わさりその後、滅びたと


 まあ国は滅びてもそこに生活していた人々が全滅したわけでもありませんから、住んでいる人たち、特に辺境では国の名前が変わろうが特に生活に問題はなかったようです。


 しかし辺境になればなるほど昔からの因習やしきたりといったものは残るようです。


 今回のバインランドもご多分に漏れず、王国領時代の名残なごりが、というか当時この地を治めていた貴族への想いが色濃く残っていたようです。


 イレイサー二人がバインランドで調査を開始した際、町では夜に外に出るとお化けに拐われる、なんて噂が広まっていたようです。

 

 なにぶん辺境のバインランドのことですから私達にもその噂は届いていませんでした。


 あ、噂といえばヨシダ局長の奥さんね、実家に帰ったって噂。そうなんですよ、ホントらしいんですよ!


 まあ普段から我々中間管理職をイジメているような局長ですからね、あれですね、家でもきっと威張り散らしてたりしたんでしょうね、今度局長にあったら大声でその件を聞いてやろうと思います。

 私が大声で聞いたら、そりゃあもう。ね、報道部のヤスコさんにもそのことが伝わっちゃってヤスコさんが報道のヤノさんにも伝えるわけですよ。そしたらもううちの局、全員が知ることになるわけですよ、フヒヒ!

 あ、話がそれてしまいました。


 噂です、はい、噂。魔獣の骨が大量に発見されたというのにそのことよりも夜に外に出るなって噂しか出なかったそうです。


 まああの二人のことですから当然そちらも気になり調べます。

 ええ、今回の調査とはまったく、まったく関係がないのに、ですよ。


 あいつらどうしてこうなんでも首を突っ込んじゃうんでしょう?

 私はね、ビシッと言ったんですよ。

 我々イレイサーの仕事のなんたるかをね、こう、ビシーっとね。

 なのにどっちかがこう脱線するんでしょうねえ、困ったものです。

 あ、また愚痴を言ってしまいました。まあね、わかるんですよ、そりゃあね、一人がファンドリールとの戦いでね、あんなことになったんですから。


 確かに今回の任務に出すのは危険だってこともわかってはいるんですよ。しかし、しかしなんですよ!

 我々イレイサーには常に危険が付きまとうわけですよ。


 まあ特に今回は聖石絡みかも知れませんでしたしね。ここは彼らに行かせるしかなかったわけです。


 彼の胸の聖石に異変が現れたらとか、今までの戦い方はできないとか。まあいろいろ心配ではあったんですけどもね。


 やる時はやるんですよ。それでも彼らはイレイサーなんですから。

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