第13話

 実はこの事件の被害者五名は国家情報保安局とイレイサーを繋ぐ情報部員だったのです。


 当初、国家情報保安局は事態を軽く考えていました。二人目の犠牲者が出た後、連続殺人事件、三人目に至ってようやく狙いが情報部員だという考えに至ったそうです。


 これにはヨシダさんも激怒しました。私もこれまで幾多、彼に怒られてきましたがあれほどの怒りを見せた事はありません。


 それはもう未だかつてないほどの怒りでした。もちろん私もですが。


 国家情報保安局の対応があまりにも軽すぎました。

 そこでこれまでも帝国国防省刑事捜査機関への協力を行っていたイレイサーを派遣したのです。


 五人目が殺害され、その事件は起こりました。


 やつらは直接イレイサーを狙ってきたのです。例のイレイサーの話では、長剣『ギリメカラ』を持つイレイサーとの遭遇がそうさせたのだと言っていましたが。


 偶然だろうが必然だろうがイレイサーが襲われたことに変わりはありません。


 そしてイレイサーの一名が重傷を負ってしまいました。


 例のイレイサーはこの段階ではこの件に関わっていませんでした。関わらせるつもりもありませんでした。


 それなのにです。それなのにやっぱり関わる事になってしまいました。


 彼に言わせると、お前がメンテナンスに行けなんて言わなきゃこうなっていない、だそうです。


 まさかそんな、こんな事になるなんて誰にも分らないですよ。


 あ、話がそれてしまいましたが、私が紹介したのは国も認めるマイスターのお店でした。


 そこなら彼の魔銃『オーシャン・スチール』のメンテナンスも可能だろうと考えたのです。


 善意ですよね、これ。彼が魔銃を預けたすぐ後にその店が襲撃されるなどと思わないではないですか。


 それを聞いた際の彼の怒りは相当なものだったそうです。


 こう書くとイレイサーは怒ってばっかりに見えますね。


 怒ってばっかりと言えば、例のイレイサーがまあ本当によく怒るんですよ、こないだなんて怒っちゃって呼び捨てにするんですよ、二回も!


 上司を呼び捨てって本当にひどいですよね、どう思われます?


 わたしは誰に聞いているんでしょう。私が上司なのに。


 しっかし怒ると呼び捨てにするとか一体どんな育ち方をしたのでしょう、私にはさっぱりわかりません。


 そう言えば、イレイサーたちは大勢いますが、そいつもこいつも本当に私の事を上司だと思っているのでしょうか?


 いけません。


 それを考えると碌な事にならないとわかっています。


 ただね、普段どんな悪態をついていても、やる時はやるんですよ、イレイサーは。




 次回更新

 2023/02/18 02:00

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る