第10話

 ちょっと調子に乗ってきたので、こないだ例のイレイサーと話したオルドゥアズとカタデリーの関係についても考えてみたいと思います。


 そもそも聖王歴というのは、オルドゥアズ教の神官エルキーポが大陸での権勢を確立、エルキーポ神聖国を建国したことに由来します。


 ただ、これはもう二千年以上前の話で実際に会ったのかどうかも確認はできません。


 聖王国建国以前の時代はそれこそ神話の時代であり、こないだの作家先生の話にあるような物語で、歴史研究家の間でも研究が進められてはいますが素人の私に何が起こったかなどわかるはずもありません。


 ただ、聖王国ができる前からオルドゥアズ教の神は存在し、悪との戦いはあったのだとされています。


 そして、その悪が聖国歴八百年代に起こったカタデリー信仰の元になる悪魔たちという事になります。


 って、また話が逸れてしまいました。


 今回は、ミイラ騒動の話でした。


 イハインにあるグネトラス考古学博物館は博物館以外にもホテルやレストラン、図書館、映画館、ショッピングモールまで併設されており、この街の一大観光地になっていました、私たちが子どもの頃は。


 そしてこの博物館にはバフタ共和国とキディン帝国の間の海域に一時的に浮上して沈んだ島の円錐の形状をした場所、イシヌ山で発見されたとされるミイラがありました。


 動いたとされるミイラはオルドゥアズ教の神官オルサス・ゲーリングの成れの果てだと言われていましたし、副葬品から見てもそれは間違いないようです。


 例のイレイサーからの報告では、ミイラが動くなどという事はなかった、という物ですし、バディの撮った写真もごく普通のミイラでした。


 ただ、報告ではミイラの調査を行った際、国家情報保安局の職員もその場におり、そちらは別件で何かを調査していたという事でした。


 例のイレイサーの事です。なにか裏があるような気がして仕方ありません。


 ただ、まああれ以来、イハインのグネトラス考古学博物館でミイラが動いたという噂は無くなり、元の観光地に戻っているようですが。


 そしておそらくミイラが動いたという噂を広めたのは館長だったのでしょう、その証拠にあの騒動で館長は解任され新しい館長が就任したと聞いています。


 まあ少ない情報から真実を導き出すのは何も例のイレイサーだけではないのです。


 私、ツノダが本家本元。彼にイレイサーのなんたるかを叩きこんだのは何を隠そう、このツノダなのですから!


 どうです?


 これが威厳というものではないでしょうか?



 次回更新

 2023/02/14 02:00

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