第8話

 バクトンの時報塔に現れた魔獣は、頭は猿のようだが体は毛深くゴツゴツとした獣そのものの姿で手には巨大な金棒のようなものを持ち左肩に鐘がプロテクターのように張り付いていたそうです。


 魔獣はイレイサーたちを視認すると奇声を発しながら襲いかかってきました。

 イレイサーはこれに応戦しますが、攻撃は弾かれ、魔獣の強力な打撃の前に窮地に陥ります。


 そこにもう一人のイレイサーが現れ援護に入ります。


 彼は国家情報保安局職員を庇いながら応戦し、左肩の『遺物:時報塔の鐘』を打ち抜いたのです。


 この『遺物:時報塔の鐘』は当初姿が見えなかったそうです。これは当研究員の報告によると、ある周波数の電波を出す事で姿を現わすものと推測されています。


 以上が今回の報告書の内容になります。


 ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲


「どう? 今回こそ大丈夫でしょ?」


「なんでそんな近くで声かけんだよ、近いよ、顔!」


「いや、だってお前、気になるじゃん。こないだから報告書ばっかり書いてんだもん」


「だもん禁止。何回言ったらわかるんすか。いや、あんたまじめに報告書書く気あんのか?」


「ん? なんで? 真面目に書いてるじゃないか」


「いやいや、報告書に『P.S』ってなんだよ、聞いたことねえよ」


「それは、ほら、あれだよ、ちゃめっ気? たまにはヨシダさんにも笑いが必要だろ?」


「いらねえよ、いらない。ツノダさん」


「なんだ?」


「くだらない話してるけど、家に帰れてねえのか?」


「う、うん。まあぼちぼちだな」


「ま、今日はこれで終わりにして、たまには家に帰ってやれよ。ほんとに嫌われちまうぞ」


「なんだ? ハルキ、珍しく。あ、あれか、いいぞ」


「ん? 何が?」


「え? 来たいんだろ? うち。いいぞ、今日は鍋だな」


「なんでツノダさん家に行くのかもわからねえし、鍋なのがもっとわかんねえわ」


「だってほら、最近忙しくてお前、うちに来てないじゃないか。来い! 鍋パーティ!」


「行かないって。俺はもう少し仕事して帰るすよ」


「なに? 何の仕事があんの?」


「こないだのファンドリールの後始末」


「ああー。あれ、どうする? ファンドリールだけじゃなくて『アブソス』? あの組織の事も書かなきゃだよな?」


「ああ。アキとユウジからの報告も確認しなきゃだしな。だからもう帰れ。あんたが居たら仕事にならねえ」


「なんだよ、ひどいなあ。んじゃ帰るからな。ハルキ、ほんとに気にせず来ていいんだぞ」

 ツノダがそう言うと、机に向かったままハルキは片手を上げて振る。





 ※イレイサー:File01_バグトンの見えない鐘:指令があれば何でも消します、「憑き者」を「ない物」に。それがイレイサーのお仕事です。

 https://kakuyomu.jp/works/16817330650481907694


 次回更新

 2023/02/11 02:00

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