File02_聖剣の行方
第4話
思い出しました。
そうなんです、そう、あれです。
聖剣に関する報告書を書かなければならないんです、プロデューサーのツノダです。
なんで私が持ってるって事になってるんでしょう?
上司のヨシダさんにイレイサーから預かった光る剣を面白いだろうと見せた途端、顔色が変わりました。
そのことについても国家情報保安局に追加報告を求められているんでした。
あれは確か昨年のセントレイスデイの少し前の事です。
国家情報保安局からの依頼でモートンの街にイレイサーを三チーム派遣しました。
失敗の許されないイレイスで、三チームでの合同イレイスというこれまでにない大掛かりな作戦で、国家情報保安局とも合同の作戦でした。
さらに例のイレイサーは遠ざけておくべく、ガセ情報を、失礼、真偽不明の情報を彼らに伝え、帝国北西にあるミャスト島ロッキングの町へ遠ざけました。
イレイスはうまくいったんです、イレイスは。
その後が問題でした。
モートンの街での聖剣については、あらかじめ情報として、憑りついている者が、『古代帝国の女騎士』であるという事は分かっていました。
モートンの街の周辺を包囲し、実際に憑りついている剣に、イレイサーが当たる事としていました。そして、その情報を元に、イレイサーチームが現地に赴き、聖剣を手に入れたのです。
ところが……
聖剣を手にしようとした瞬間、聖剣は光り輝き遥か彼方に飛んで行ってしまったというのです。
国家情報保安局もイレイサーたちもどうすることもできなかったのだそうです。
聖剣は自らその持ち主を選ぶと言われています。
そしてその聖剣を手にした者は、この世ならざる力を得ると言います。
それはさておき、問題なのは、その聖剣の行方です。
イレイスは成功、しかし肝心のイレイスされた遺物が見つからない。
これには上司のヨシダさんも激怒しました。何としても国家情報保安局よりも先に聖剣を見つけるように言われました、大声で。
ほら、前も言いましたが、ヨシダさんが大声で喋っちゃうから報道部のヤスコさんにもそのことが伝わっちゃってヤスコさんが報道のヤノさんにそのことを伝えちゃったもんだから、ってこのヤノさんっておばっちゃんがまた話を広めちゃう人でヤノさんに伝わるって事はもう報道部中に広まるってことになって、もう局中大騒ぎの事態に、ってまた話が逸れてしまいました。
えーっとどこまで話しましたっけ? あぁそうだ、そう、聖剣の話だった。
聖剣の行方は全く分からないまま年末、セントレイスデイを迎えました。
せっかくのセントレイスデイです、しばし聖剣の事を忘れ、鍋パーティーでもやろうと準備を始めるところで例のイレイサーが登場します。
溺れる者は何でも掴む
苦しい時の何頼み?
そんなことわざもあると聞いています。
ちょうど事務所にいた例のイレイサーに尋ねてみましたが
「俺にどうしろって言うんです? 見つかるわけないじゃないっすかそんなもん。新しい持ち主を聖剣が選ぶまで出てこないっすよ」
と言われてしまいました。
次回更新
2023/02/05 02:00
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