第3話 学校での出来事 〜寧々視点〜

〜夏目寧々視点〜


 昨日、お兄ちゃんとお揃いのネックレスを買い、今日はお兄ちゃんとデートをする日。


 はやく放課後にならないかなー!


 寧々はスキップしながら学校に向かう。


 教室に入ると…


「先生のことを悪く言わないでください!」


 乃々華の大きな声が聞こえてくる。


 乃々華の方を見ると、数人の男子と話しているのが見えた。


 すぐにお兄ちゃんのことを話しているとわかり、乃々華の下に急いで向かう。


「ど、どうしたの!?」


「それが……」


 寧々が乃々華に事情を聞いていると…


「ちょうどよかった。寧々さんにも聞きたかったんだ」


 クラスの中心で、カースト上位にいる男子『小原裕樹こはらゆうき』から話しかけられる。


「昨日、街で寧々さんと乃々華さんが1人の男性に抱きついて歩くところを見たんだ」


 あ、見られてたんだ。別にコソコソするつもりはなかったけど。


「だから?」


「2人とも、あの男に弱みを握られて脅されてるんだろ?俺が助けてやるから……」


「は?そんなわけないでしょ?」


「っ!」


 小原たち男子が固まる。


「昨日、寧々と乃々華が一緒に歩いてた男性は寧々の義理のお兄ちゃんで寧々の彼氏だよ!」


 寧々が大きな声で言うと…


「「「えぇぇぇぇぇ!!!」」」


 クラスのみんなが叫び出す。


「えっ!寧々ちゃんって彼氏がいたの!?」


「だからバスケ部のエースから告白されても断ったんだ!」


「寧々さんに彼氏がぁぁぁ!!!」


 等々、騒ぎ出す。


 その時…


「ちょっと待て!」


 小原が大きな声を出す。


 その声にクラスのみんなが静かになる。


「それなら、乃々華さんは寧々さんの彼氏に抱きついてたことになるぞ!?どういうことだ!」


 今度は乃々華に話しかける。


「それは簡単な話です。私、寧々のお兄さんと付き合ってますから」


 乃々華がクラスのみんなに届くような声量で言う。


 すると…


「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」」」


 先程とは比べ物にならないほど、クラスのみんなが叫び出す。


「えっ!どゆこと!?三角関係ってこと!?」


「いや、寧々さんのお兄さんが二股してるってことじゃね!?」


「じゃあ、小原くんが見た場面って絶賛修羅場中だったの!?」


 クラス中が混乱する。


 しかし、寧々はクラスの混乱を正すよりも、言わなければならないことがある。


「ちょっと!乃々華はお兄ちゃんの彼女じゃないでしょ!?」


「なに言ってるんですか!私が先生の彼女ですよ!?」


 そして睨み合う。


 その時、クラスでは…


「おい、なんか口論になってるぞ。誰か止めて詳しく事情を聞いて来いよ」


「仕方ねぇ、俺に任せろ」


「お、さすが小原。頼んだ」


 という話し合いが行われていた。


 そして、寧々たちの下に小原がやって来る。


「寧々さんに乃々華さん。二股をするようなクズとは別れて俺と…」


「なんですか?よく聞こえませんでした」


「は?誰のことをクズって言ったの?」


「………なんでもないです」


 寧々と乃々華の圧に負け、小原がしゅんとなってどこかに行く。


「「「大好きかよ!」」」


 クラスのみんながそう叫んだ。




 その後、寧々と乃々華が言い争っていると、担任の先生が入ってきたため、渋々終了する。


 朝のHRが終わり、1限の準備をしようとすると、乃々華を引き連れて、クラスの女子が集まってきた。


「ねぇ!寧々ちゃんのお兄さんてどんな人!?」


「優しくてカッコいい人!?」


 いろんな質問をされる。


「もちろん!寧々のお兄ちゃんは優しくてカッコいいんだよ!」


「そうですね。先生は優しくてカッコ良い、王子様のような方です」


「「「キャァァァァ!!!!」」」


 聞いてきた人たちが叫び出す。


「他には!?」


「そうだね!寧々が困ってる時、いつも颯爽と駆けつけて解決してくれるんだ!お兄ちゃん以上にカッコ良い男はいないと思ってるよ!」


「私も、先生以外の男を好きになることなんてないですね」


「「「キャァァァァ!!!!」」」


 またしても叫び出す。


「でも、寧々のお兄ちゃんって乃々華ちゃんと二股してるんじゃないの?」


「だよね。寧々ちゃんには申し訳ないけど、二股のお兄さんは……」


「二股じゃないよ!だって、乃々華とお兄ちゃんは付き合ってないから!」


「二股じゃないです!寧々と先生は付き合ってませんから!」


「「「え?」」」


 寧々たちの周りにいる女子たちが困惑している。


「詳しく聞こうじゃないか」


「そうそう。寧々ちゃんと乃々華ちゃん、それぞれと付き合ってるのに二股にならない理由を」


 寧々たちは謎の圧に飲まれ、洗いざらい話す。


「なるほど。お兄さんに告白したら2年後に絶対付き合うと言われたんだ」


 寧々たちは頷く。


「そして、寧々ちゃんと乃々華ちゃんは2年後もお兄さんのことが好きだと断言できるから、もう彼女と自称しても問題ないと」


 寧々たちは頷く。


「なるほど。つまり、2年後、二股するってことだね」


「そうなりますね。2年後、私と寧々の告白を受けるってことになりますので」


「つまり、2年後二股お兄さんだね」


 間違ってないから否定できない。


「これはお兄さんの返答が悪いわ」


 これも間違ってないから否定できない。


「じゃあ、寧々ちゃんと乃々華ちゃんは恋のライバルってことだね!」


「そうなります。2年後、先生のことだから、私と寧々で二股することは無いと思います。だから、寧々はライバルになります」


「むっ!寧々は負けないよ!寧々が乃々華よりもお兄ちゃんを虜にするんだから!」


「私だって寧々よりも先生を虜にしてみせます!」


 寧々と乃々華の間に火花が散る。


 その様子を見てたクラスの女子は…


「ウチの学校でもトップクラスに可愛い2人を虜にするお兄さんってどんな人だろ?」


「気になるよね!ものすごくカッコ良いお兄さんなんだろうなぁ」


「一度会ってみたいよね!」


「これは今月末に行われる文化祭に来てもらわないと!」


 その日以降、学校内でお兄ちゃんが有名人となった。

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