第2話 お揃いのアイテム
〜夏目寧々視点〜
寧々と乃々華は話し合いの結果、1週間前、お兄ちゃんに告白をした。
理由は、寧々と乃々華を妹扱いして、寧々たちの想いに全く気づかないから。
そんなお兄ちゃんには、告白することが1番効果的だと思い、寧々たちは玉砕覚悟で告白した。
お兄ちゃんとの関係が少しでも進めばいいな…という想いで。
すると…
『2年後、俺が30歳になった時、俺のことがまだ好きなら、もう一度告白してくれ。その時は絶対に付き合うよ』
お兄ちゃんはそう言って断った。
きっと『2年経てば、別の人を好きになってるだろう』と思って、そんなことを言ったと思うが、寧々と乃々華がお兄ちゃん以外の男を好きになるなんてありえないので、これを聞いて喜んだ。
『2年後に付き合ってくれる』と。
そして、寧々と乃々華は同じ結論に至る。
『2年後、お兄ちゃんの恋人になれることが確約されてるんだから、今から彼女と名乗っても問題ないのでは?』
と、いうことに。
しかし、ここで問題が発生する。
それは、お兄ちゃんが寧々か乃々華、どちらかとしか付き合えないということだ。
そのため、寧々と乃々華は、お兄ちゃんへ猛アプローチを始めた。
2年後、お兄ちゃんから選んでもらうために…。
*****
〜夏目理玖視点〜
俺は一息つく間もなく次話の構想を練りつつネームに取り掛かる。
今の世の中、パソコン等のデジタル機器で漫画を描くことができるが、俺はデジタル機器で描かず、未だに紙とインクを使用している。
「うーん、どうすれば」
「お兄ちゃん、悩んでるね。何に悩んでるの?」
俺の下にコーヒーを持ってきた寧々が声をかける。
「あぁ、今、織姫と彦星のお揃いアイテムで悩んでるんだ。何がいいと思う?」
「それなら絶対お揃いの服ですよ!」
作業中の乃々華が手を止めて話に入ってくる。
「えー、まずはアクセサリーとかの方がいいと思うよ?織姫と彦星は高校生だし」
「そうだよなぁ。うーん、俺にそういった経験がないから、どれが正解なのか……」
俺が悩んでいると…
「あ!それなら寧々とお兄ちゃんが実際に体験すれば解決だよ!」
「え?」
「寧々とお兄ちゃんがお揃いのアイテムを身につけて外出すれば、織姫と彦星の気持ちがわかるよ!寧々はお兄ちゃんの彼女だから、問題ないし!」
「一理あるが……」
俺が答えに困っていると…
「ちょっと待ってください!」
乃々華が大きな声を出して立ち上がる。
「私が先生の彼女なんです!だから私がします!」
「まだ、作業が終わってない乃々華は無理しなくていいよ?寧々がお兄ちゃんと外出してお兄ちゃんの悩み解決に貢献するから、乃々華はお兄ちゃんの漫画に貢献してて」
「じ、実はペン握ってただけです!」
座ってただけかよ…何でここにいるんだよ。
「お兄ちゃん!乃々華は放っておいて、寧々とお揃いのアイテムを買いに行こ!」
「あ、ちょっと!」
俺は寧々に手を引かれて無理やり外に連れ出された。
俺たちの後を追ってきた乃々華が俺たちに追いつき、現在、3人で街中を歩いている。
時々3人で出かけることはあったが、告白をされてからは初めてのお出かけとなる。
告白が関係しているかもしれないが、今日はいつもと違うところがある。
それは2人が俺の腕に抱きついているという点だ。
「ちょっと!乃々華は来なくていいって言ったよね!?」
「先生の彼女は私です!だから、先生の悩み解決のお手伝いができるのは私しかいません!」
俺を挟んで睨み合う。
両サイドからいい匂いが漂ってくると同時に、柔らかい感触が伝わってくる。
うぉぉ!巨乳の寧々と貧乳の乃々華から抱きつかれてる!“ふにゅっ”とした柔らかい感触が……寧々から伝わってくるな。
「ねぇ、先生。今、思ったことを言ってみてください。怒りませんので」
「お揃いのアイテムだったな。さっそく探しに行こう」
俺は速攻で誤魔化す。
しかし…
「お兄ちゃんは寧々の胸に興奮したらしいよ?乃々華の残念な胸じゃ興奮できなかったみたいだね」
“ブチっ!”
乃々華の方からそんな音が聞こえてきた。
おいぃぃぃぃぃ!!!!乃々華に貧乳ネタは禁句なんだって!
「ねぇ、先生は脂肪の塊が好きなんですか?」
俺のことを上目遣い……ではなくハイライトの消えた目で見てくる。
徐々に抱きつかれている腕が痛くなる。
「そ、そんなことないぞ。俺は小さい胸も好きだ」
「あれ?小さい胸もって聞こえましたね。本当は……」
「お、俺は小さい胸が好きだ」
「聞こえませんね」
「俺は小さい胸が好きだー!」
街中で叫ぶ俺。
街を歩いていた人が何事かと俺たちに注目する。
そして…
「見て、変態がいるわ」
「そうね、背が高くて顔もカッコいいけど……近づきたくないわね」
周囲の女性からゴミを見るような目で見られる。
「私の胸が好きならいいです。許しましょう」
満足そうに乃々華が許す。
「うん……ありがとう」
先生としての威厳を守る代わりに、大事なものを落とした俺であった。
俺が街中で叫んだため…
「おい、あれってウチのクラスの寧々さんと乃々華さんじゃね?」
「ホントだ。誰だ?あの男?2人から抱きつかれてるぞ?」
「知らねぇが、ウチの学校でもトップクラスにかわいい2人を独占しやがって!」
「明日の学校で聞かないといけないな」
寧々たちと同じクラスの男子に見つかったことに、3人は気づかなかった。
俺たちはお揃いのアイテムを探すため、ショッピングモールに到着する。
「なぁ、2人とも。そろそろ俺から離れてくれないか?」
俺は本日何度目かのお願いをするが…
「乃々華がお兄ちゃんから離れたら寧々も離れるよ!」
「それは私もです!寧々が先生から離れたら私も離れます!」
このやり取り、何回目だよ……。
という感じで一向に離れてくれない。
「はぁ。歩きにくいし注目の的だが、さっそくお揃いのアイテムを買うか。時間も遅いし、1つだけ買って試そうと思う。何を買えばいいんだ?」
俺の質問に対して…
「アクセサリーだね!」
「服を買いに行きましょう!」
2人の意見が割れる。
そして、睨み合う。
仲良くしてぇぇぇぇ!!!!
その後、2人の争いが終わらなかったので、今日はお揃いの服とアクセサリーを買うだけで終わった。
そのため…
「じゃあ、明日は寧々と今日買ったアクセサリーを身につけてデートだね!」
「明日は私とお揃いの服を着てデートしましょう!」
「いや、お揃いアイテムのネタを描くのやめるから、デートはしなくても………はい、明日はデートしましょうか」
俺は2人の圧に負けて、断ることができなかった。
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