第十問

「岡部君?」


「……はぁ」


「あの、岡部君ですか?」


「…………はぁ」


「ふーっ」


「耳、うわぁ! ……楠ノ木さん、どうしてここに!?」


「ちょうど見かけたもので」


「こんなところに来るイメージが浮かばない」


「意外でしたか? 私このお店のポテトが好きなのですよ。それにしても岡部君」


「ん?」


「ため息ばかりついて何かお悩みですか?」


「え、ああ……。大した事じゃないから」


「私でよければ聞きますよ」


「いや……だ、大丈夫。心配してくれてありがとう」


「そんな元気のない岡部君に第十問」


「僕の拒否権が消えてから久しい」


「ちょうど向かいのテーブルをご覧ください」


「はあ」


「あの二人の女の子と私がこちらのテーブルに合流したとします。岡部君は正面に誰を選ぶでしょうか?」


「うーん、強いて言うなら楠ノ木さんかな……」


「へえ、何だか嫌々に聞こえますね?」


「そういうわけじゃないけど」


「ではなぜ私なのでしょうか?」


「それは……」


「あ、二人ともこっちだよ」


「え、本当にあの二人って友達だったんだ」


「ですからそう言ってるではありませんか」


「では私は斜め前に座りますね?」


「え、正面じゃないの?」


「……もう、仕方がないですね」

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