第3話 レース直前
ダービー当日ーーー
全てのホースマンが目指す同レースは、年末の大レース有馬記念と並ぶ大きな盛り上がりをみせる。
徹夜で開門を待つ競馬ファンとその光景を中継する各メディア。競馬好きの大人達のこの1週間の世間話はダービーの話一色だった。
注目の福山祐翠の乗り馬の名前は【シルバーグレイト】
父の祐一を持ってして、一番強い馬と言わしめたシルバーステートを父に持つ同馬だが、怪我による引退を余儀なくされた父に似たのかここに至るまでも順調に来れた訳ではなかった。
体質の弱さから出したいレースに使えないことが続きながらの日々だった。
そのため前走の青葉賞でジャッキー同様、馬もこのダービーの出走をギリギリで決めることができていた。
戦績は3戦3勝。
新馬戦を楽々勝利し、将来を期待されるも体調を崩し2歳児は1戦のみに終わる。
年明けのレースは体調が戻り途中だったので、陣営は無理せず重賞ではなく条件戦に出走させる。
その為皐月賞の出走には賞金が足らず青葉賞からダービーを目指す道を取っていた。
青葉賞出走馬からダービー勝ち馬が出ていないのは競馬好きなら殆どの人が知っている情報。
無敗の戦績で話題のジャッキーといえど、青葉賞馬の人気は三番人気どまりだった。
二番人気は還暦を越えた生ける伝説のジャッキー鷹極たかきわみが乗る5戦3勝の皐月賞2着馬の【モヒートミント】、そして一番人気は海外からの刺客【ヴァンガード】
ヴァンガードの戦績は6戦6勝。
地元で4戦したのち日本の2歳G1ホープフルステークスを3馬身差の完勝で海外登録馬初の日本2歳牡馬のタイトルを取り、前走の皐月賞も2着馬モヒートミント他を寄せ付けず完勝。そのためダービーはダントツの人気になっている。
「皐月賞出走馬とは勝負付けは済んでいる。相手はシルバーグレイトなどの皐月賞未出走馬たちだ。」ヴァンガードの陣営は未対戦組を警戒していた。
モヒートミント陣営は調教師、ジョッキー含めて皐月賞のリベンジの内容のコメントを残す。
競馬好きの女性タレントがテレビのインタビュアーとしてシルバーグレイト陣営にもインタビューを行っていた。
「シルバーグレイトの調教師さんの祐一さんにインタビューをさせていただきます。前走の青葉賞はいかがでしたか?」
調教師の祐一がインタビューに答える。
祐一調教師は話も理論的且つ和やかなトークをする為楽しい雰囲気で進んでいく。
「では最後にダービーの自信は?」
「1頭もの凄く強い馬がいますからね、どうでしょう。でも祐翠は絶対勝つって言ってましたね(笑)」
「祐翠ジャッキーはいつも自信満々ですね(笑)」
本日はありがとうございましたという女性の言葉でインタビューがしめられた。
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話の祐翠はジャッキールームでもいつも元気いっぱい、しかし本日だけは少し様子が違っていた。
「祐翠くん、そろそろレースの準備をした方が良くない?」
祐翠と同期の騎手の仏珍念(ほとけちんねん)が声をかけてきた。
「あ!ああ珍念ちんねん。もうそんな時間か?!」
「あれ?もしかして祐翠くん緊張してるの?」
普段から自信満々の祐翠がいつになく緊張している姿がおかしくて仕方ない珍念。
「ば…バカ珍念!俺がダービーくらいで緊張するかよ」
「普通は緊張すると思うけどそうだよね、祐翠くんは日本人初の凱旋門賞勝利ジョッキーになるんだもんね。」
「当たり前だよ!だからとりあえずダービージョッキーになってくるよ!」
「うん頑張って!」
とーーーまーーーれーーー!
レース発走15分前、パドックの周回が終わり騎手達の出番の時間となった。
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