第14話 青い空

    ✳︎


 冒険者ギルドに戻ってきた。

 さて、とりあえずライングにあのことについて質問しようか。


「ライング、既に入るパーティーが決まってる事について教えてくれるか?」


 先程はシオンのことがあって聞けなかったが、この事はしっかりと聞かなければ。


「あ、そのことか」


 僕の質問にライングは爛漫な笑いを浮かべる。どうやらかなり嬉しいことのようだ。


「あのさ……俺達三人でパーティーを組もうぜ!」

「は?」

「え?」


 ライングの唐突な提案に僕とシオンの声が重なった。

 普通なら、新米の冒険者は既に存在するパーティーに入り、冒険者に必要なノウハウや技術を学び修行をする。


 そして最低でも半年を過ぎた後、そのパーティーから独立し自分のパーティーを作るのだ。


 この方法の利点は独立する際に元のパーティーから人を勧誘したり、別の土地でそのノウハウを活かせる点。有名なパーティーから独立すると『このパーティーに所属していた』という宣伝にもなったりするのだ。


「この前教えただろ。僕達みたいな新米はまず既にあるパーティーで勉強するのが良いって」

「確かにサミーの言うことも一理ある。だけど俺考えたんだ。パーティーに入ってついて行けるかなぁって」

「ついて行ける?」

「そう、さっきの騒ぎを見てみろよ。俺やシオンを巡って凄いことになってただろ?」


 確かに今まで村で静かに暮らしていた僕達にとって、あの騒ぎは異常だった、ある種の恐怖を感じるぐらいには。


「だからこのままパーティーに入ったとしてもついて行ける気がしないんだ」

「……だから既にあるパーティーには入らずに三人で新しいパーティーを作るってこと?」

「そう! ノウハウとかも大事だけど、俺達が楽しくやれる方が大事だと思うんだ! 勝手なお願いなんだけど、どうかな」


 そう言ってライングは僕達の方を真っ直ぐ見た。

 楽しくやれる。そうだ、三人で冒険者になってとっても強くなる、そのために沢山頑張ってきたんだ。


「いいと思う。僕は賛成だ」


 シオンの方を見てみる。どうやら彼女も答えは決まっていたらしい。


「私も賛成よ」

「二人とも……!」


 ライングの顔が笑顔になる。身体はかなりゴツくなったけどこの笑顔だけは子供の時のままだ。


「ありがとう!」

「それで、パーティーを作るならパーティー名は決まってるの?」


 笑顔のライングをよそにシオンが質問する。


「あ、考えてなかった。二人とも何か良いのあるか?」

「パーティー名か……」


 パーティー名、今まで考えてこなかった。


(ゲームみたいな良い名前がないかな……。あ、そうだ!)


 その時、転生前にハマっていたゲームに出てきた名前を思い出した。


青い空ブルースカイ……はどうかな」

青い空ブルースカイか……良い名前だな!」

「うん、響きがあって良い名前ね」


 二人はこの名前を気に入ってくれたようだ。


「よし! それじゃあ俺達のパーティー名は青い空ブルースカイだ! 三人でこのパーティーをデッカくしよう!」

「「おー!!」」


 ライングが空に向かって大きく拳を掲げ、僕とシオンも続けて手を掲げた。


 僕達はこれから様々な壁に直面するだろう。だけど、この三人でならその壁も容易に乗り越えられる気がした。


「それじゃあ、まずはパーティー登録に行こうか!」


 そう言いながらライングはギルドの受付の方へ振り返った。するとギルドにいた冒険者達が僕達の方を冷たい目で見ていた。


「皆さん、ギルド内では大きな声を出さないでくださいね」


 ニッコリと笑っている受付嬢に注意されてしまった。


「はい。すみませんでした……」


 ライングの小さな声が静かになったギルドに響いていた。

 これが十五歳の仲間と新たな一歩を踏み出した時の思い出だった。

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