第12話 結果発表
✳︎
戦闘試験が終了し、参加者たちは再び訓練場へ集まっていた。
「今日の冒険者試験、ご苦労だった。この後は受付で試験結果を受け取ってくれ」
試験結果があれば冒険者の資格がギルドから発行することができる。そうすれば僕たちも晴れて冒険者の仲間入りというわけだ。
「さて、今回の試験は今までの試験と比べかなり高水準だった。この国を守る騎士団に所属する私としてもこれはとても嬉しいことだ。しかし、今日の結果で満足せず、君たちが少しずつ強くなることを期待している! 冒険者は常に危険と隣り合わせだ。自身の命をそして大切な仲間の命を守るためこれからも頑張ってくれたまえ!」
試験官の言葉が僕の心を響かせる。
『大切な仲間の命を守る』、ライングとシオン。まだまだ未熟な僕だけど、これから二人をしっかりと守れるように頑張らないと。
「それでは、冒険者適正試験を終わりとする!!」
こうして冒険者になるための一つの小さな試練が終わったのだった。
✳︎
試験結果は大まかに戦闘技能、魔法技能、適正職種の三つがあり、戦闘技能と魔法技能はランク別に振り分けられ、一番高い成績がA+、逆に一番低い成績がD−となっている。
適正職種は実戦した時の所感を元に試験官がその人に合った役割を提示してくれるのだ。例えば攻撃が上手な人は前衛が向いているとか、走るのが速い人なら斥候が向いてるなどだ。これらの結果を加味して自身に合った役割を構築するのだ。
さて、説明が長くなったが僕の結果はというと。
「戦闘技能B+、魔法技能D、適正職種・防御前衛……か」
防御前衛は所謂盾兵だ。盾や剣を使って味方を守るのが主な役割だ。おそらく僕の守りの戦い方を見てこの結果になったのだろう。
結果としてはまあまあだ。戦闘技能のランクが高いのは結構嬉しかった。
「おーい! サミー!」
ライングが手を振りながら近づいてきた。その隣にはシオンがいる。
「二人とも今日はお疲れ様。結果はどうだった?」
「見てくれよ! 凄かったぞ!」
そう言いながら試験結果を見せた。
戦闘技能A+、魔法技能A、適正職種・攻撃前衛。
言うまでもなく完璧な結果だ。剣だけでなく、魔法もAランクということは、鍛え方次第では万能な冒険者になりそうだ。
「す、すごいね……」
「だろ! 魔法もシオンから教えてもらうからまだまだ強くなれそうだ!」
ライングの凄いところはこの向上心だ。どんなに優秀な成績でも驕ることなく、更に自分を磨くことができる。この向上心は冒険者をする上でとても大事になってくると思う。
「私はこんな感じ」
シオンも試験結果を見せてくれた。
戦闘技能B、魔法技能A+、適正職種・魔法後衛。
やはり試験官に気づかれずに強力な魔法を撃ち込んだことが評価されているのだろう。子供の頃から沢山魔法のことを学び、その力を高めただけあるだろう。
「それで、サミーはどうだった?」
「あ、僕? はいこれ」
そう言って二人に結果を見せた。
「お、戦闘技能B+だ! やっぱりサミーの技術はすごいんだな!」
「適正職種は防御前衛ね。これからは盾の使い方とかも学んでも良さそうね」
二人が僕の結果を見ながらあれこれと話している。だけど何というか……二人の結果に比べれば僕なんてまだまだなんじゃないかなとも思ってしまっている。
二人と違って秀でた長所も無ければ、才能も無いから。
「よし、とりあえず冒険者登録をしに行こうぜ!」
ある程度話しをした後、僕たちは冒険者登録をするためにギルドの受付に向かった。
そして色々な書類にサインを終えると。
「はい、これで終わりました。こちらが冒険者資格ですね」
手続きが終わり受付の人から一枚のカードが手渡された。
冒険者、僕たちの目標にようやく届いた瞬間だった。これまで三人でとても頑張ったからね。
「ライング、シオン…………あれ?」
一緒に手続きをしていたはずの二人に話しかけようと振り返ったが、その姿は見当たらなかった。
だけどライングの居場所はすぐにわかった。ギルド内で大きな人集りがあったのだ。
「ライング君、私のパーティーはどうだね!?」「俺のパーティーはどうだ!」「いや僕のパーティーはどうだい」
「いや、俺はもう入るパーティーを決めてるんだ!」
人集りの中心にライングがいた。冒険者たちからひっきりなしにスカウトを受けていて揉みくちゃにされている。
「ちょっと、やめてくれ!」
そして僕はライングを助け出そうと人集りに近づこうとした時。
「ストップ。貴方達騒がしいわよ」
そう聞こえた瞬間、ぽちゃんと水が弾けるような音と共にライングの側に一人の女性が突然出現した。
「ド、ドリーマーさん……?」
試験官の一人、ドリーマーさんがそこに立っていた。紺色のドレスをたなびかせている彼女は機嫌が悪そうに大きなため息を吐いた。
「はぁ、貴方達、彼の言葉が聞こえなかったの? 彼は既に加入するパーティーを決めているのよ」
「そ、それはそうだけど」
「なら彼のことは諦めなさい。騒ぎはうるさくて敵わないわ」
そう言いたいことを言って再び水の弾ける音と共に彼女の姿は一瞬で消えた。
彼女が去った後、あれだけ騒がしかったギルド内が今はとても静かになっていた。
「仕方ない、彼の事は諦めるか……」「ドリーマーさんを怒らせたくないしな……」「残念だよ」
落胆の声と共にライングを囲っていた冒険者は散り散りに去っていった。
「……ライング、大丈夫?」
「あ、サミー、大丈夫! でもこんな騒ぎになるなんて思わなかったよ」
ライングは魔法試験で前代未聞の成績を納め、戦闘試験で試験官に勝ったんだ、冒険者からすれば喉から手が出るほどの人材だ。ドリーマーさんが助けてくれて本当によかった。
それにしても……
「ライングは入るパーティーがもう決まってたの?」
「あ、そのことなんだけど━━」
『やめてください!!』
ふとギルドの外から大きな声が聞こえてきた。
明確な拒絶を示しているその声はシオンの声だった。
「行こう!」
「うん!」
そうして僕達は一目散に声のする方向に駆けて行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます