第一章 母の温もりと友人たちの笑顔
プロローグ
✳︎
平たく言ってしまえば、僕は異世界転生をした。
元々僕は日本のどこにでもいる普通の人間だった。しかし様々な事情があって死んでしまった。
死ぬ瞬間は『これが最後かぁ、呆気ない最後だなぁ』なんてくだらないことを考えながらその命を終えた。だがその直後、気付いたら見知らぬ茶色い天井が僕の目の前に広がっていた。
「あ……あぅ……」
驚きの声を上げるようとしても思うように声が出ない、動こうとしてもジタバタするばかりで碌に動けない。
何より身体の感覚がおかしい。まるで身体全体が縮んでしまったかのようだ。
「どうかしたの、サミー?」
この唐突な状況に混乱していた時、ふと女性の声が聞こえてきた。眼を横にして見てみるとそこには柔らかな笑みを浮かべた綺麗な女性が椅子座っていた。
その優しそうな女性は僕を見て立ち上がり僕の下に近寄った。
「あ……あーうー……あーあー」
「お腹が空いたの?」
そう言いながら彼女は手を伸ばして優しく僕を抱き上げる。
ここで初めて僕は赤ちゃんになっていると言うことに気づいたのだ。
そして目の前にいるこの女性が僕の母親ということにも同時に気づいた。
母親である女性は服を捲りながら抱き上げた僕をそっと胸元に抱き寄せた。
「はーい、おっぱい上げますからねぇ」
「あ……あう……」
唐突な出来事に混乱していたが、赤ん坊の本能には逆らえず、母親の胸に口を付ける。
「いい子ね、ふふふ」
母乳をチビチビ飲んでいる僕に母親は優しく微笑んでくれた。
それがとても嬉しくて、そしてとても心の底から安心して母親の身を委ねる。
「元気な子に育つのですよ。サミー」
お母さんの語る声を耳にしながら僕はお腹を満たすため一心不乱に母乳を飲んでいた。
これが僕が赤ちゃんだった時の、転生し新たな誕生をした時の思い出だった。
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