呪いの人形

昔々あるところに『呪いの人形』と呼ばれる人形がありました。その人形を持っていると悪い事が起きたり、不幸な事が起きたりするので、人々に恐れられていました。そして人々は、深い深い森の奥に人形をかくしておいたのです。


「呪いの人形?」足立花音は声を上げた。前山莉香はそのまま話を続ける。「昔、村に”呪いの人形”っていう人形があって、その人形を持っていると悪い事が次々と起こるんだって。だから村の人たちは森のどうくつに人形をかくしておいたんだって。それが学校のとなりの裏山らしいよ⋯。まあ伝説だけどね。」


「とにかく花音。呪いの人形を見つけても持って帰っちゃだめだよ(笑)どうせウソだからそんなことはないけど。」その時チャイムが鳴った。莉香が少し不きげんそうな顔をして言った。「3時間目、算数のテストが返されるよー。やだなー。でも花音は頭が良いからいつも90点以上取ってるね。」「んーでも真理愛にはかなわないよ。」真理愛は6年生になって初めて同じクラスになった。頭が良く、スポーツも万能。そしてお金持ちで、顔も美人。真理愛と同じクラスになる前までは、花音は成績がクラスで一番だった。でも同じクラスになってから、全て真理愛に負けるようになってしまった。花音はそんな真理愛がきらいだった。


「今回のテストで満点だったのは真理愛さん以だけでした。今度から満点を取れるようにみなさんがんばりましょう。2番目は98点の花音さんでした。」花音は手元にあるテストを見て顔がゆがんだ。(真理愛さえいなければー番だったのに⋯)そして昼休み。真理愛の周りには数人の女子たちが集まっていた。真理愛100点すごいね!!あの花音でさえ100点取れなかったのに。」「真理愛ちゃん。今日の服、雑誌でモデルのララちゃんが着ていたのと同じやつでしょ?」それを聞いた花音がイライラしていると莉香が、花音も98点すごいじゃん。それに花音、顔もかわいいし、オシャしだし、あこがれだよ。」と言った。すると花音が机をバンッとたたいた。


「だからって⋯自分が1番じゃなきゃ意味ないよ!!」莉香がおどろいた顔をしている。(真理愛なんか、いなくなっちゃえばいいんだ!!そうすれば私が一番になれる!!)その時、花音は莉香の話を思い出した。(あの話が本当なんだったら⋯)花音は放課後、学校の近くの裏山に行った。(呪いの人形を見つけて、真理愛にわたすんだ!!真理愛は完ペキでもきっと性格は悪いんだ!!)花音はどうくつを探す一心で森の中を歩き続けてい、た。気が付けば汗びっしょりになっていた。ずっと歩いていると、どうくつのようなものを見つけた。


どうくつに足をふみ入れると、箱のような物が置いてあった。箱はきつく縄でしばられていた。でもかんたんにほどくことができた。花音の顔が悪意に満ちた表情になった。箱を開けると、日本人形が入っていた。長く、黒いかみの毛、雪のよに真っ白のはだ。真っ黒のひとみ。人形があやしく笑っている。(これをこっそり真理愛の机に入れれば⋯)花音は人形を取り、学校へ向かった。「いたい!」花音は転んでしまった。これもこの人形のせいかなあ」学校に着き、教室に入った。真理愛の机の中に呪いの人形を入れると花音の口がつり上がった。「ふふふ⋯これで私が番になれる⋯!!」


次の日⋯。(楽しみだなー!!ふふふ)しかし、学校に着き真理愛を見てもいつもと変わらなかった。真理愛の机の中を見ると呪いの人形がちゃんと入っていた。(どうしたんだろ⋯)でも、1時間目に真理愛の身に悪い事が起こった。1時間目は体育だった。50m走のタイムを2人1組で走る内容だった。「では、2人1組になってください」「真理愛っ!!いっしょに組もう!!」花音は真理愛とペアになった。「花音ちゃん足速いよね―。」と真理愛が言った。(どうせそう言いながら自分の方が速いと思ってるんでしょ?でも今日はちがうから)そして私たちが走る番になった。

「よーい⋯スタート!!」


花音が走り出したとたん、真理愛が転んだ。(やったー!!本当に呪われたんだ!!)私は走り続けた。クラス1番の8秒45だった。花音がゴールした後に、泣きながら真理愛が走ってきた。「23秒52」真理愛の夕イムだった。すると、莉香が来て、「花音すごいね!!8秒45って!!私なんか10秒23だったよ〜。」と言った。(ふふ⋯人形のおかげだ!!)その後も、図工では絵の具のバケツをひっくり返して水をこぼし、音楽では声がガラガラになった。算数のテストでは花音が100点、真理愛は80点だった。放課後になった。すると真理愛がいっしょに帰ろう、とさそってきた


「花音ちゃん!いっしょに帰ろう!」(どうせお金持ちだから自まんばっかりするんでしょ?)と花音は思っていたが、真理愛はちがった。好きな本の話や好きなテレビの話⋯。花音と莉香がいつもするような話で、自まんをしたり、悪口を言ったりはしていなかった。(もしかして⋯本当は良い)

人だったのかも⋯?)すると真理愛が急に立ち止まった。「あの、今日ずっと花音ちゃんに話さなきゃって思っていたことがあって⋯」そう言うと、真理愛は高そうな、リボンが付いたバッグから、長い黒いかみの毛の日本人形⋯『呪いの人形』を取り出した。


「この日本人形、花音ちゃんのだよね。」「え!?」「きのう、ペンケースを教室に忘れちゃって放課後取りに行ったの。そして帰ろうと思ったら、この日本人形を持って教室に入っていく花音ちゃんを見たの。人形をとても大事そうにかかえていたから⋯。これが私の机に入っていたから、わたさなきゃって思って⋯」(そうだ⋯。あの時、人形を落とさないように大事にかかえていたんだ⋯)「これ、花音ちゃんの大切な人形なんだよね?」「何言ってるの!?私のじゃないし!!」「そう⋯。ごめんね。じゃあ、ここに置いておくから。花音ちゃん、また明日ね!!」そう言って真理愛は行ってしまった。


真理愛は花音の宝物だと思い、ずっと今日1日あずかってくれていたのだ。真理愛は見た目だけではなく内面も美しく、優しかったのだ。「こんな方法で一番になろうと思った私がバカだった。」花音はぽつりとつぶやいた。これからは自分の力で一番になるようにしょうと決意した。家に帰ろうと歩いていると、背後に気配を感じた。後ろをふり向くと100m先くらいの地面に置いてあったはずの人形が花音のすぐ近くにあった。人形のはだは人間のように、はだ色に変わっていて、黒いひとみはうるおっていた。人形はゆっくり歩き、花音に近づいてきた。


(どうして⋯!?何で動くの!?)花音は急で走って家に帰った。人形は歩くスピードがおそいのでもう姿は見えなかった。(さっきのはきっと見まちがいだよ⋯)花音が自分の部屋に入ると花音の顔から血の気が消えた。「ど⋯どうして⋯?」そこには呪いの人形があったのだ。人形は花音を見つめると、部屋を歩いて出ていった。(あ⋯大丈夫なのかな⋯)するとドアの向こうの台所から『ガチャガチャ』と音がし、そして人形が部屋にもどってきた。手でしっかりと包丁をにぎりしめていた。人形が包丁をふり上げるのと同時に花音の意しきはなくなっていった。


昔々あるところに『呪いの人形』と呼ばれる人形がありました。その人形を持っていると悪い事が起きたり、不幸な事が起きたりするので、人々に恐れられていました。その人形を、自分以外の人の人の不幸のために利用すると、呪いの人形に命がやどり、やがて殺されしまうのです。

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