第34話 巨乳捕獲計画

「う、うまぁ…!絶妙な甘さ!」


りんごは猫の形のチョコレートケーキをお尻の方から食べると、頬を押さえてぷるぷるしていた。


スイーツを食べるとき、本当に幸せそうな顔するよな。こいつ。


コーヒーを飲みながら、じーっとりんごの食べる様子を観察していると、見られている事に気付いたりんごは、我に返って頬を赤くした。


「いけない。可愛い猫ちゃんや、ケーキにすっかり気をとられて、今日のお出かけの目的を忘れるところでした。」


「目的?お疲れ様会だろ?」


もしくはデート。


「いえ、他に先輩に素敵な出会いを提供するという目的があります。」


「出会い?」


「はい。私は猫として、傷心の先輩を癒やしてくれる素敵な女性との恋愛を応援していきたいと言いましたよね?」


「あ、ああ…。」


俺は頬を引き攣らせて、返事をした。


シェアハウスに戻るなり、りんごはそんな訳の分からん事を言ってたな…。


「その時は、『今はそれ程積極的に恋愛したい気持ちになっているワケじゃない』と言っていた浩史郎先輩ですが、西園寺先輩との騒動で話し合った時に、『次に恋人を作るときは、外見的な条件だけじゃなく、内面的にも好きになれる子とちゃんと向き合いたいと思ってる。』と発言していて、今は少し恋愛に大して前向きになっている様子でしたよね?ねっ?」


「ああ…。そんな事を言ったような気がする。よく覚えてるな…。」


りんごに指摘され、俺は苦笑いした。


どっちも、りんごに向けて他の女性には興味がないとアピールする為に言った発言なんだけどな…。


本人はスルーして、何故か俺を他の女性とくっつけようとヤル気になっているらしい。


「それならと思って、私、色々考えきたんですよ。」


俺はらんらんと輝くりんごの目を見て、何かとんでもない事になりそうだと覚悟した。


「これを見てください!」


りんごは自信満々でバッグから一冊の大学ノートを取り出した。表紙には、蛍光ピンクで、目を見張るようなタイトルが書いてあった。


「ジャジャーン!『ロンリーブルーな浩史郎先輩に告ぐ!萌えキュンプルンな彼女をゲットするのだ!!〜巨乳捕獲計画☆彡』」


「すげーな。そのタイトルよく恥ずかしげもなく読み上げられたな?なんだそのノートは?」


「読んで字の如し、浩史郎先輩に恋人を作る為の計画が書かれたノートです。いつか必要になるのではないかと、試験勉強の合間に書き溜めていました。」


「いや、そんな時間あるならもっと勉強しろよ?特待生の審査がかかってるんじゃないのかよ。」


「いえいえ、勉強の気分転換程度にちょいちょいやってたぐらいですので、そんなに時間かかってませんよ。


テストは精一杯力を尽くしましたので、問題ありません。」


「テストの事はそれならいいが、そんな気分転換程度に人の命運を左右するような計画を立てていたのか。で、何が書いてあるんだ?」


俺は呆れながらも、りんごに聞いてたが…。


「まずは、私の知る限りの先輩の恋愛遍歴をここに記しました。」

「ぶふっ。」


俺はコーヒーを吹いてしまった。


「な、なんっ…?」


動揺する俺に、りんごはノートの内容を読み上げていった。


「中1の時の初カノさん(一つ年上)


そして、叔母さんの桐生よしのさん(絶世の美女、スタイル抜群)初めてのひと


初カノさんとは、段々うまく行かなくなり、よしのさんの出会いにより、自然消滅。


その後よしのさんの真意を知った傷心の浩史郎先輩は、荒れて、一人の女性と向き合えず女性関係がだらしなくなってしまいます。多分沢山の彼女さんがいた事でしょう。

(買い物のとき会った佐藤あやねさん年上含む。)


高校2年の4月時点で彼女さんは2人。


年上の彼女さんと同学年の彼女さん(二人とも美人でスタイル抜群)。


(私のせいで)二股がバレてしまい、二人同時に破局。ここまでいいですか?」


「お、お、おう…。よくまとめたな。」


りんごの口から、俺の恋愛遍歴を語られると俺は何ともいえない気持ちになった。


「付け加えるとすれば…。」


「ああ、よしのさんの後の女性関係ですね?

すみません。そこは詳しく分からなかったので、浩史郎先輩に教えて頂けると…。」


りんごに興味津々で聞かれ、俺は焦って手を突き出し、拒否をした。


「いや、そこはむしろ、はっきりさせたくないところだからスルーしてくれ!そうじゃなくて、りんごとの許嫁関係と同居の事は書かなくていいのか?」


「…!!」


りんごは頬を染めて辿々しく呟いた。


「そ、それは仮のもので、その内解消するものだかし…、書か…なくてもいいかと…。//」


「解消するものだとしても、現時点はそうなんだったら、書いといた方がいいんじゃないか?もし俺に恋人ができたとしたら真っ先に気にするところだろ?」


「〰〰〰!// わ、分かりましたよ。じゃあ、仮の許嫁として私の名前を書いておきますが、あくまで仮初めの肩書きであって、その実態はお手伝いさん&飼い猫のようなもので、恋人さんが出来たらお役御免になると注意書きしときますからね!」


「おう。」


りんごが赤い顔で、ペンを取り出し、ノートに自分の事について記載している様子をニヤニヤしながら見守った。


「そ、それで、浩史郎先輩の今の好みは、やはり、『巨乳、優しい、年上』という事でよろしいですか?」


「なんだ、その牛丼屋の『早い、安い、うまい』みたいな標語は…。」


「ありゃ、違いました?なら、訂正をお願いします。」

「うーむ…。」


俺に文句を言われ、頭を掻いたりんごに、俺はしばし考えた。


『貧乳、生意気、年下』


そう言って、攻めて行ってやってもいいが、それは、もう少し距離を詰めてからの方がいいか…。


「そう…だな…。けど、あくまで好みは好みであって、実際には外見より人柄重視で人を好きになりたいと思っているよ。」

「ふんふん、了解しました。」


少しぼかして伝えると、りんごは頷きながら、また一生懸命ノートに書き込み始めた。





*あとがき*


新年明けましておめでとうございます🎍


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m(_ _)m


今年もどうかよろしくお願いします。














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