第32話 飼い猫との和解
りんごのお腹に口付けて吹くという、やらかしをしてしまってから、2時間後ー。
「ふうっ…。」
俺はりんごの部屋の前に立ち、新呼吸をすると、ドアをノックした。
「り、りんごちゃんは本日の営業を終了して既にお休み中です。またのお越しをお待ちいしています。ぐーぐーぐー…。」
「いや、その返答は思いっ切り起きてるだろう…。」
「ぐーぐー…。すぴー…。」
俺はため息をつき、そのままドア越しに話しかける事にした。
「りんご。聞いてるんだろ?さっきは悪かったよ…。」
「ぐおーぐおー…。」
やはり、いびき(?)しか聞こえなかったものの、俺は更に続けた。
「そ、その…。りんごにされたことを仕返ししようとして、やり過ぎてしまっただけで、別に邪な気持ちがあってしたわけじゃないんだ…。(本当は半分位邪な気持ちがあったけど…。)」
「……。」
「もう、ああいう事はしないからさ…。ちょっと話し合わないか…?」
「……。」
「ほ、ホラ。猫カフェに出かける予定だってあるだろ?その打ち合わせだってあるしさ…。」
「…!」
猫カフェデートの予定の事を持ち出すとそこで、中のりんごが動揺している気配がし、ここぞとばかりに、俺は捲したてた。
「そ、それに、さっき買い物に行ったら、スーパーで美味しそうなりんご売っててさ。買って来て、アップルパイにしてみたんだけど、味を見てみて欲しいんだよな。
時間経つと、味落ちちゃうだろ?だから、早めに…。」
ガチャッ。
ドアがほんの僅かだけ開き、警戒した猫のようなりんごの目がチラッと見えた。
「ほ、ほんのちょっと…だけですよ…?」
*
*
「さっきから、キッチンで何やらやっている気配は感じていたのですが、これでしたか…。
はむはむ…。ま、まぁ、甘さは丁度いいです…。」
目の前のりんごは、焼き立てのアップルパイを美味しそうに頬張っていた。
「それはよかった。紅茶もよかったら、飲んでくれ。この間実家から高級な奴もらって来たんだ。」
「ああ。美味しい…。」
俺が出した紅茶をりんごは目を細めて一口飲むと、俺に向き直った。
「ま、まぁ、紅茶もアップルパイも美味しいかったです。
さっきの件も、まぁ、私から浩史郎先輩の手を吹いてしまったから、やり返しただけって事ですよね?
それは、分かりましたけど、本当に、もうああいう事はしないで下さいね?///」
「ああ…。本当に悪かったよ。」
異性である俺とも距離が近い言動をするりんごだったが、越えてはいけないラインもあるらしい。
危うく今までの良好な関係を崩してしまうところだったが、
頬を染めているりんごの様子を見て、俺を全く意識してないわけでもないと分かったのは悪い事でもないと思った。
りんごを攻略していく上で、今のラインをきちんと知っていた方がよいと思った俺は、りんごにある提案をした。
「なぁ、りんご。これを機会に、どこまでのスキンシップが、セーフラインか、決めておかないか?
一緒に暮らしてるんだし、全く触れないようにするのも無理な話だろうし、かと言ってやり過ぎてもこうしてギクシャクしてしまうだろ?」
「それはいい考えですね。う〜ん。セーフラインですか…。手を繋いだり、頭や肩をポンとしたりとか、家族としている触れ合いぐらいだったらいいんじゃないでしょうかね?」
「ハグはなしか?」
「そ、それはなしでしょう?キスとかハグとかは、恋人同士のする事です!」
こちらをギロリと睨むりんごに、俺はしれっと言ってやった。
「そうか…。あの時の君は、俺の事を恋人のように思ってハグをしてくれたって事なんだな…?」
「…!!!///」
俺の言葉にりんごは一気に真っ赤になり、しどろもどろで言い訳をし出した。
「い、いえ!あれは!その…。浩史郎先輩の優しさに感動して、か、家族的な想いが高まったというか…。」
「じゃあ、家族でもハグをする事はあるんだな?」
「そ、そうですね。場合によってはある事にしましょうか。宝くじにあたったり、受験に合格したり、タイガー◯が優勝したり、感動的な場面では、いい事にしましょう。」
「了解。よろけたところを支える為とか事故的な奴も、もちろんOKだよな?後、俺、タイガー◯ファンじゃないから、応援してるところが、優勝したらそれもいいよな。」
「は…い…。」
りんごは難しい顔をしながら、返事をした。
よし。ちょっと強引ではあったが、条件つきでハグまでOKにしてやったぞ?
他の11球団全部応援している事にすれば、毎年一回は優勝が決定する時期に、確実にハグができるし、宝くじは、10枚連番で買えば必ず宝くじ1枚分の金額は当たるし、そこでもハグが…と小狡い事を考えていると…。
「浩史郎先輩…。(家族的なスキンシップを求めるなんて、やっぱり、浩史郎先輩、彼女さん達と別れてそんなに寂しいのかな…?)」
りんごは何故かこちらをじっと見てきた。
「な、何だ?りんご?」
邪な思いを読み取れられたのかと焦っていると、りんごはふるふると悲しげに首を振った。
「いーえ?なんでも。浩史郎先輩、週末は猫カフェで、いっぱい癒やされましょうね?ねっ?」
「あ、ああ…。(ま、まぁ、デートは楽しみだけど、なんでそんなに憐れみに満ちた目で俺を見る?)」
りんごに力強く猫カフェによる癒やしを勧められ、戸惑いながらも頷く俺だった…。
*あとがき*
いつも読んで頂き、フォローや、応援、評価下さって本当にありがとうございます
m(_ _)m
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