第12話 風紀委員長(自らネタバレ)
「た、企みって何よ?私わたくしが何を企んでいると…?」
怯んだ様子の西園寺先輩に、
「私を夢ちゃんと仲違いさせて、裏切らせ、浩史郎先輩のファンクラブの手駒にしようとしたでしょう?」
「な、何故それを?しかも、白薔薇会の事は風紀委員の極秘事項となっている筈なのに…!何故貴方が知っているの?」
西園寺先輩は驚き慄き、打ちのめされたように顔に両手をかざした。
多分このシーンを少女漫画で表現すると、顔に縦線が入り、バックに稲妻が走っていることだろう。
西園寺先輩はいちいち言動がドラマチックで、まるで宝塚の劇を見ているような迫力がある。
「少し(カンペを)調べさせてもらいました。残念ですが、貴方の思い通りにはなりませんよ?
私は貴方になんと言われようと、夢ちゃんの親友です。裏切ったりなんかしません。夢ちゃんを学園から追放させるなんて計画、すぐやめて下さい!!」
西園寺先輩はクワッと両目を見開くと恐ろしい形相で私を睨みつけてきた。
「分かったわ。宇多川夢が既に私わたくしの事を調べ上げていたのね?チィッ!狡猾な女狐め…!」
「え。いや…、実はそうではなく、あの、カンペを拾っ…。」
「この私わたくし西園寺茉莉花が影の風紀委員長だっていうこと、愛しの里見くんに纏わりつく害虫A(宇多川夢)害虫Bを取り除く為にこの計画を立てたこと、全て○っとお見通しということなのね?」
「ええっ?そうなん…。」
「あまつさえ、保健室に誘いこんだのも罠で、貴方とのやり取りも全て保健室に隠れている同じ風紀委員の幹部によって、録画、録音されてる事も全部お見通しというワケなのね?」
「そっ、それは知らなかったです。丁寧な補足説明ありがとうございますっ。」
私はギョッとして、周りをキョロキョロ見回した。
「西園寺様ぁ!それは言っちゃ駄目な奴です!」
!!
突然カーテンの陰から首からカメラを下げたおさげの女生徒が現れた。
そして保健室のベッドの下からから集音マイクのついた小さな録音機械を持ったメガネをかけた女生徒が這い出して来た。
!!!
「そいつは、西園寺様の計画書を読んだだけで他には何も知りませんっ。だからもうそれ以上余計な事は喋っちゃいけませんよぅ!」
西園寺先輩に比べれば、かなり地味に見える女生徒二人が泣きそうな顔で私達の前に飛び出して来た。
さっき感じた不思議な気配はこの人達が保健室に潜んでいたからだったのかと、私は納得した。
「桜井!友田!なんて事!本当なの?森野林檎!」
西園寺先輩は二人の話を聞いて、私に詰め寄ってきた。
「え、ええ、実はこれを拾ったんです…。」
私は西園寺先輩にさっき拾った計画書を見せると、西園寺先輩は怒り狂った。
「いつの間にこの紙を私のブレザーのポケットから奪い取ったの?泥棒の真似までして!本当に食えない女ね!!」
「いや、だから西園寺先輩が普通に落とし…。」
「信じられないわ!分かりました。認めましょう。あなた方を少し侮っていたみたいね。」
うんうんと一人納得しているようだった。
お願いだから、話を少し聞いてくれないかな?
「けれどね、森野さん。一人でここに来たのは軽率だったのじゃないかしら?」
すっとメガネの女生徒が、保健室のドアを塞ぐように立った。
「本当はこんな手荒な真似はしたくなかったのだけど、力づくで言う事を聞かせるという方法もあるのよ?」
「な、何をする気ですか?」
私はジリジリ迫ってくる3人から逃げるように後ずさり、壁際に追い詰められた。
おさげの女の子が何かキラリと光る刃物のようなものを取り出した。
!!!
「そこまでよ!!あなた達そこで何をしているの?」
勢いよく保健室の扉が開かれて、一人の女生徒が部屋の中に飛び込んできた。
息せき切って、珍しくセミロングの髪を乱して入ってきたその美少女はー夢ちゃんだった。
西園寺先輩達に囲まれている私を見ると、夢ちゃんは血相を変えて、叫んだ。
「りんご!!大丈夫?」
突然の闖入者に驚いている西園寺先輩達をすり抜けて、夢ちゃんは私の前に庇うように立った。
「あなた方、風紀委員の先輩方ですよね?これはいったいどういう事ですか?一年生を保健室に呼び出して、脅すなんて!!」
「違うのよ。私達はただ話し合いをしていただけで…。」
「そんな言い訳が通りますか!そんな物まで出しておいて!」
「と、友田!しまいなさい!」
「あっ!はいっ。」
メガネをかけた女生徒はキラリと光るモノ(その時初めてそれがハサミだと知った。)をようやくしまってくれた。
「もう遅いです。今の光景しっかり写真に撮らせてもらいました。」
「「「えっ!」」」
気が付くと、保健室の入口近くにSPの黒川さんが、スマホを手にして、親指を立てている。
「こんな写真が出回ったら、風紀委員の名が泣きますね。下手したら、委員会取り潰しかも…。ね?西園寺風紀委員長?」
夢ちゃんは小悪魔な笑みを浮かべコロコロと笑った。
「……!!」
「今後二度とりんごに手を出さないと約束したら、この画像は公表しない事にします。どうしますか?」
「ふ、ふんっ。そんな脅し、効くものですか?私はね!風紀委員長として校則の規定より、少し長かった森野さんの前髪を切ってあげようとしただけよ!」
西園寺先輩は苦し紛れの言い訳をした。
「そうですか。私もりんごと同じ位の長さですが、でしたら、私の前髪も切って頂くべきなんじゃないですか?どうぞ、やってみて下さい。」
「お嬢様!?」
「夢ちゃん!?」
私と黒川さんは驚いて声をあげた。
「ただし、その時は私に何をしたのか、黒川を通して、お祖父様にたっぷりご報告する事になりますけどね…。風紀委員が暴力に近いやり方で生徒を取り締まっていると知ったらお祖父様は黙っていないでしょうね。
宇多川が、いくら学園に寄附しているかご存知ですか?西園寺家も、確か宇多川家傘下の企業と取引されてましたよね?」
「くっ!家の事を持ち出すなんて卑怯な!」
「西園寺様ぁ、マズイですよ。もう、謝っちゃいましょうよ。」
「だから、宇多川さんを狙うのはやめましょうっていったのにぃ…!」
夢ちゃんは、その場を圧倒する空気を打ち出し、西園寺先輩と取り巻きの先輩方はタジタジだった。
控えめに言って、ものすごいカッコよ!
「家の事を持ち出すって言うけど、財閥の威光を嵩に着て、風紀委員長としてやりたい放題している西園寺先輩に言われたくありませんね。私はやられたらやり返すタイプです。敵に回さない方がいいと思いますよ?」
「先輩を脅すなんて、とんでもない後輩ね!
今回は一旦引くけど、これで終わったと思わない事ね!」
西園寺先輩はそんな捨て台詞を吐きながら、保健室から出て行こうとし、その後を慌てて取り巻きの先輩方が追う。
「西園寺先輩、待って下さい!!」
私は戸口から顔を出して、西園寺先輩を呼び止めた。
「何よ?取り巻きB。」
「一つだけ言わせて下さい。私を夢ちゃんから引き離す計略は練っても時間の無駄ですから、それをお伝えしておきます。私は他の人から何を聞かされようが、例え本人に疎まれたとしても、絶対に大好きな人の手を自分から離したりしませんから!私、しつこい女なんで!!」
「りんご…。」
「ふんっ。狡猾な女狐に、しつこい蛇女ってワケね。貴方達お似合いの友達じゃない。こっちも、言っておくけど、里見くんは貴方方みたいな卑怯な奴らに絶対渡しませんからね!」
西園寺先輩は私と夢ちゃんを一瞥すると、足早に去って行った。
「里見先輩?やっぱりそれが、動機だったのね!あんっな二股の女ったらしなんてどうでもいいわ!熨斗つけてくれてやるっつの!!」
夢ちゃんは西園寺先輩の後ろ姿を見送りながら、ぷりぷり怒っていた。
「夢ちゃん、ありがとうっ!!助かったよ〜。」
私は感極まって、夢ちゃん=マイヒーローに後ろから抱き着いた。
「りんご、本当に大丈夫だった?」
「う、うん。途中まで、ただお話してただけだったから。3対1でハサミ出されたときはびびっちゃったけど。でも、どうしてここに居るって分かったの?」
「教室になかなか帰って来ないから、クラスの子に、深窓の令嬢のような女生徒を連れて保健室に付き添って行ったって聞いて、嫌な予感がしてすぐ飛んできたのよ。本当に何事もなくてよかったわ!」
夢ちゃんは胸を押さえてホーっと安堵のため息をついた。
「そうだったんだ。本当にありがとうね!だけど、悪い予感がしたって…、もしかして夢ちゃんは西園寺先輩の事、前から知っていたの?」
「ああ、まあね。その事は…、当事者を交えてお話しした方がいいと思うのよね…。」
夢ちゃんは黒川さんからスマホを受け取り、メールを打ち始めた。
瞳が据わり、こめかみに青筋を立ててメールを打つ夢ちゃんは青白い静かな怒りのオーラをまとっており、私は何だか背中がゾクッとした。
今日は色んな意味で夢ちゃんにドキドキしてしまうぞ?
*あとがき*
いつも、読んで頂きまして、フォロー、応援、評価頂きまして本当にありがとうございます。
やらかしまして、8/22(火)投稿予定の12話を8/12(土)に投稿してしまいました。
本来8/15(火)投稿予定だった11話の方も投稿させて頂きますので、よろしくお願いします。
混乱を招いてしまい大変申し訳ありません。
m(__)m💦💦
次回13話は、8/29(火)12:00投稿予定とさせて頂きます。
間が空いてしまいますが、見守って下さると有難いです。
今後もどうかよろしくお願いしますm(__)m
※11話にも同じ内容のあとがきを記載しています。
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