take・79
「おぉ‼湯川‼お前を探してたんだよ。先生、OKだって?」
「待って、来ないで」
「おいおい、どうしたんだよ?気分でも悪いのか?」
「その海外ドラマの同僚の男みたいなのやめて。気持ち悪いから」
じっとりと汚物でも見るような目で俺を見てくる湯川。一体何が・・・。
「あぁ、これか?」
「それしかないでしょ」
「これは・・・、あれだよ」
「どれなの?」
「えぇ~っと・・・、ミュータントだ・・・」
「あの甲羅背負ってるやつ?」
「それはちょっと・・・、違うかな・・・?」
「じゃあ何?」
じわじわと攻め立ててくる湯川に、俺はもう逃げ場がない。
はなから逃げ場など無いに等しいのだが・・・。
しかし、この足にへばり付いている女。何故か妙に大人しい。先程の勢いのまま「ヨっくんの彼女で~す‼」とか虚言を放っても充分おかしくない。まさか、まだ何か能力を隠しているのだろうか・・・?
「むむむ・・・」
「あ・・・、ねぇ、あなたは・・・、どこのクラスの人ですか?」
「え?ウチ⁉ウチはねぇ、ヨッくんの彼女‼」
ただのバカの人見知りだった。
「か・・・、彼女?」
「いやぁ~、はははは、何言ってんすかねコイツ~、ははははは‼お前次言葉発したら殺すぞ」
とても文句が言いたげな目でこちらを見てくるバカは放っておいて、俺は当初の目的を果たさねばならない。そして新入部員を紹介せねば・・・。このタイミングでか・・・。
「今は良しとしようじゃないか」
「いいわけないでしょ」
ですよね。
「こ。これは不可抗力だ‼決して俺が自ら望んだ訳ではないぞ‼決してない‼」
「ねぇ~え~、ウチをクラブに入れてくれるんじゃなかったの~?」
「頼むからいらん事言わんでくれ。その数少ないお前の防具をそのお行儀の悪い口にぶち込むぞ」
「えぇ~?何?ウチのあんなとこやこんなとこが見たくなっちゃったの?可愛いぃ~‼しょうがないなぁ、こっちにおいで♡」
その埃っぽい用具入れに戻りたいならお一人でどうぞ。
「何でそんな格好なの・・・?」
「・・・、ニヤ。ウチ・・・、ヨっくんにやられたの・・・」
「そっか・・・」
帰りたい・・・、とてつもなくお家に帰りたい・・・。
「田中丸君・・・、あと、よろしくね」
「ど、どういう意味でしょうか・・・?」
「私、先に戻ってるから」
「見捨てないでください」
「よろしく」
「見捨てないで・・・」
「しつこい」
「ヤダ」
「じゃあね」
「いやだよ~~~‼」
何故か先程よりもパワーが五倍くらい増している足枷に阻まれ、湯川を追う事が・・・。
「さっさと離しやがれこの露出狂女が‼シンプルに通報されてぇのか‼」
「やだ‼ていうか普通に「コイツ、俺のクラブに迎えようと思うんだ。俺の彼女として‼」って堂々と言えば済んだ事じゃん‼」
「あんな空気で、あんな湯川さんに、そんな事言えるワケないでしょ?バカですか貴方は。アホなんですか貴方は」
ブラとパンツしか身に着けていない女を何とか立ち上がらせ、何故か手を繋いだままプールへと行く羽目になった。
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