take・72
「ち、違う‼偶然聞こえたんだよ‼善樹の家の前に来た時に‼」
どんだけデカい声で会話してたんだよ俺と湯川は・・・。
「今すぐ外せ」
「嫌だ‼」
「認めた上で拒否してんじゃねぇよ‼変態はお前じゃねぇか‼」
「棕櫚蜜鎖だってやってるし‼アタシだけじゃ無いし‼」
「何の言い訳にもなってねぇわ‼」
ていうかあの女もやってんのかい・・・。でも・・・、当然か。
「分かったよぉ~‼アタシの部屋にもカメラ仕掛けていいからさぁ~‼許してよぉ~‼」
それで許せたらこんなにキレてねぇよ。
俺の制服を鼻水で汚しながら、早生の必死の抵抗は続く。
俺にとにかく抱きついたり、とにかく抱きついてきたり、思いっきり抱きついてきたり。あの手この手を使って俺の説得を試みているようだが人生そんなに甘くない。
さも当然のように脳天に肘をかまし、一旦落ち着いてもらう。
「い・・・、た・・・、い・・・」
「だろうな」
「ぶん殴られてぇのか‼」
逆ギレにかけてはコイツの横に出る者はいないだろう。まさに一級品である。
「それが人にものを頼む時の態度か?金持ちのお嬢さんよ」
「金持ちだろうと関係無い。いじめてきたのはそっちだ。これでカメラはチャラだな」
「それはお前が判断するところではない」
「チャラだ。もう時間だから学校に行くぞ」
もう水着がどうだとか自分が騒いでいた本来の目的も忘れ、ズンズンと歩いていく。俺もそれに腕を引っ張られズンズンと歩かされていく。
「ふぅ・・・、で、水着、欲しいんだろ?」
そんなに何個も女物の水着を所持していたらいよいよ変態である。
何でかって?そりゃ男が一個持ってる時点で、既に変態だからさ。
「アタシのだったら、部屋に飾ってても文句とか、言わねぇからさ」
そんな許可出されても何にも嬉しくない。ていうか飾る奴は多分許可無くても飾る。俺もそうする。
「じゃあ貰ってやるから見た目を教えろ」
「み、見た目⁉え~と・・・、ピンクの・・・、水玉・・・」
「フリルとか付いてんのか?」
「うん・・・」
「ガキだな」
それが水玉とかじゃなくてイチゴとかだったら、一周回って評価高かったのにな。
すると、俺の予想に反し早生は黙り込む。
「ガキじゃない」などといつものように獰猛化するのかと思いきや、顔を赤らめ俯いてしまった。そしていつの間にか繋いでいた手が、ギュっと強くなった。
「じゃ、じゃあどんなのがいいんだ?」
こういう素直に聞いてくるところは、コイツの良いところなのかもしれない。
男に向かって「どんなビキニが欲しい?」と素直に聞いてしまえるところは、本当に頭がどうかしていると思う。良いところだと思う。
「早生だったら・・・、そうだな・・・」
意外と真剣に考えている自分がいる。
長い間早生と一緒にいるし、長い間見てきたつもりだ。俺自身の好みと、早生の好みを鑑みて候補を絞っていく。
そして考える事三秒。
俺はある答えに辿り着いた。というより、気づいた。気付いてしまった。出会った。出会ってしまった。そしてそれは後に教科書にも載るような、歴史の一ページとなった・・・。
「マイクロビキニ。お前はこれに限る」
早生はキョトンとした顔をした後、家に電話をし始めた。
家の使用人の誰かに、一体それが何なのか尋ねているようだった。
え?俺はどうしたかって?
そりゃあ流石に怒られると思ったから全力ダッシュで急いで学校に向かったさ。
後で聞いた話だけど、その日から一週間くらい俺は、咲川家のメイドさん達からゴミを見るような目で見られていたよ。めでたしめでたし。
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