take・71
「へぇ~、それおまじないなんだぁ~」
我が家の塀と家の隙間から、その薄い体型を活かして潜伏していたアンノウンが姿を現す。
「・・・、湯川さ~ん?まだですか~?」
「今行く~」
もうそろそろ校長との約束の十時になる。急がなくては。
「おい、いつもの如く無視すんな」
「・・・、意外に暑いな」
「今日は結構上がるみたいだよ、気温。気を付けなくちゃ」
休日に同じ部活の女子と登校。
もう、手とか繋いじゃったりしちゃったりしてもいいんじゃないかぁ?
「おい善樹てめぇ、さっきからずっとアタシと目合わせねぇようにしてっけどバレバレだかんな?〆られたくなかったらちょっと顔貸せこの変態ビキニ教信者」
「俺はまだそんなものに入信してないぞ」
「入る予定あんのか変態ビキニ」
俺自身はビキニではない・・・。
「何だよ人が折角登校デート決めようっていうのに‼」
「アタシに歯向かおうなんて良い度胸してんじゃねぇか。いつでもかかって来いよ‼」
何かよく分からない方向にずれてきているような・・・。
でもいつもコイツの行動は訳分かんないからいいか。
「お嬢様、お車の準備が出来ました」
「よーし、湯川栞を学校へお連れしろ‼」
「え?」
早生の掛け声と共に咲川家SP軍団がどこからか現れ列を成す。そしてあっという間に湯川栞様用のリムジンまでのレッドカーペットがセッティングされた。
「あの~、これは・・・?」
「栞・・・、悪いな・・・、今日はその車で学校まで行ってくれ。アタシはこのヤリ○ン男と話がある」
「ヤリ○ン男がいるならヤリ○ン女もいるのか咲川早生。馬鹿な事言ってると馬鹿になるぞ。既に馬鹿だがな。救いようの無い程に馬鹿だがな」
「黙れ、その股間にぶら下がってる肉塊をその状態からミンチにするぞ」
そんなのホラー映画でも観た事無いぞ。
「分かった。じゃあ田中丸君、あとでね」
「理解早いな⁉」
躊躇無く車に乗り込む湯川。そして風と共に去っていった。
「よし、通報しよう」
「は?殺すぞ?」
どストレートに人を脅すな。
「こんな朝っぱらから一体何の用だよ?」
「そのセリフ、栞にもちゃんと言ったか?」
「あ?昨日から来ること知ってる奴にそんな事は言わねぇよ」
「やっぱり約束してたんだな・・・」
下を向き、ブツブツと何かを言っている。その間ずっと俺のつま先が蹴られている。
「何で・・・、アタシじゃないんだよ・・・」
「ん?何か言ったか?」
「何で‼アタシじゃ‼ないんだ‼よ‼」
「刻むところおかしくないか・・・?」
「真面目に答えろ」
「何がだよ」
「水着・・・、欲しかったんだろ・・・」
おかしい。コイツは何かおかしい。
「俺がいつそんな事を言った?」
「だって、栞に貰ってたじゃんか」
「おいクソガキ。正直に答えたら許してやるからちゃんと答えろよ。俺の家の周り、まさか家の中なんかに、カメラだとか、はたまた盗聴器なんて仕掛けてはいないだろうな?」
・・・・・・。沈黙という名の肯定が見て取れる。
「訴えんぞゴラ」
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