take・69
「おはよう田中丸君」
「おはよう・・・、え?錠破りの技術あったの・・・?」
翌朝、俺は湯川の声で目を覚ます。
それは美少女に起こされるという実に心地のいい朝であった・・・。
がしかし、それは湯川栞という女が俺の家に何らかの方法で侵入したという事に変わりない。
一体どうやって・・・?まさか共犯が・・・?
「女の子が折角起こしに来てあげたっていうのにさ、どうやって入ったとか不法侵入だとか、それはもう最低とかそういう次元を通り越してるよね」
「いやだって普通怖いでしょ⁉鍵も持ってない筈の人が朝起きたら目の前にいるんだから何かヤバい事して無理やり上がり込んできたとか想像しちゃうでしょ⁉」
「まぁ、普通そうだよね~」
コイツ・・・、本当にそう思ってるのか・・・?
「で、どうされました・・・?」
「早く来ちゃってさ、ボォ~っとして立ってたらさ、咲川さんの家の執事さんが来てくれて、理由説明したら開けてくれた」
おい、咲川さんの家の執事。緩くないか。知り合いとはいえ一応人ん家だぞ。
ある程度の礼儀というものは必要なんじゃないか・・・。
「まぁそれはもういいや。てかまだ七時だけど、約束は八時じゃなかったっけ?十時から更に早くなってないか?」
「少しは長い方がいいかなぁって」
「何が?」
「田中丸君脱ぎたての水着が好きだって言ってたよね。でも私一回洗っちゃったからさ、ここで一回着て、それをあげようかなって思ったの。だから早く来た」
ちょっと・・・、言ってる意味が分からないけれど・・・、良しとしよう。
「状況は分かった。じゃあ、今から着替えるという事だな」
「うん」
「うむ」
「あの・・・、一旦部屋から出てくれないかな・・・。恥ずかしいからさ・・・」
?????、・・・・・・‼
「あッ、これは失敬」
「絶対分かってやってるよね」
「じゃ、ごゆっくり」
「えっち」
お褒めに預かり光栄なのだが、生着替えというものを拝見出来なかったというところに関しては誠に遺憾である。
しかし、ここまで考えていたとは、湯川の俺への感謝の気持ちというものがどれほどのものなのか、俺が一体それほど湯川に何をしてあげていたのか、全く分からない。強いて言えば、湯川が転校してきて席が隣になって、軽く話して・・・、それ以外は特に覚えていないが、部活に入れてあげたという事だけではそれほど感謝される事では無いだろうし・・・。
まぁ、感謝されて悪い気はしないのだが、何故そこまで・・・?
「もう大丈夫だよ」
「おう」
そこには朝日に照らされ、美しく輝くおっぱい。
女の子独特の、甘いフローラルのような心地良い香りのおっぱい。
色使いはシンプルだが、可愛いフリルが付いた淡い水色のビキニ。の中のたわわに実ったおっぱいがあった。
「どう?」
「やっぱり・・・、うん。いいな、それ」
「適当に聞こえるよ?それは」
「いやいや・・・、可愛い・・・、可愛いよ」
「そっか・・・、なら・・・、良かった」
シンプルに恥ずかしくて、軽い拷問のようだ。
「可愛い」なんて単語、面と向かって女の子に言える程俺はまだ成長出来ていない。ましてや目線がおっぱいか顔かアソコにしか行っていないのだから、頭なんかが回っている筈もない。
「いい・・・、ですね・・・」
「気持ち悪い・・・」
「・・・・・・」
「何で涙目になってるの?更に気持ち悪いよ・・・?」
「死にたい・・・」
浸っている時に浸っているものから浸っている事に対して全力で否定、拒否されると死にたくなるって学校で習わなかったのですか・・・?
僕もう無理です。
「殺してくれ・・・」
「気持ち悪い・・・」
「頼むからそのおっぱいで殺してくれ・・・」
「圧死って事・・・?」
「察しがいいな・・・、お前・・・」
「気持ち悪い・・・」
「もうさっきからそれしか言ってなくない⁉流石に傷付くわ‼可愛いかったら何でも言っていいとかそんな法律あるかもしれないけど‼可愛かったらもうなんかあれってなったりするし・・・、だから・・・、だから一旦落ち着こう‼」
「うん。朝ごはん、作ってくるね」
何事も無かったかのように、シンと静まり返るこの部屋には、先程までJKが身に着けていた下着が置いてある・・・。
先程までこの部屋にいて、今朝食を作ってくれているJKが身に着けていた下着がお置いてある・・・。
「へぇ~・・・、こんなの付けてるんだ・・・」
「そうだけど、好みじゃなかった?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「おお、朝飯出来たんだな。お、美味そぉ~」
「・・・、好みじゃなかった?」
「・・・・・・」
「・・・・・・、ん?」
え?キレてる?湯川さんキレてる?
俺の全力の隠蔽工作が失敗しているとは信じがたいがキレてる?
「いや・・・、その・・・、エロ・・・、可愛い・・・、かな・・・?」
「それ褒めてるの?よく分かんないんだけど」
めちゃくちゃ感想言ったりしたらそれこそめちゃくちゃキモいし、シンプルに感想言ってもシンプルにキモいだけでは・・・?
「俺キモくね?」
「普通じゃない?はい、牛乳でいい?」
「なッッッ‼」
ガンッ‼
俺のかけがえのない左足の小指が悲鳴を上げた。多分寿命が縮んだ。
「大丈夫?牛乳嫌いだった?」
「いや・・・、この流れで乳となると・・・、もう出るのかと・・・」
「何それ?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「わーい僕牛乳大好きー‼いただきまーす‼」
「どうぞ、召し上がれ」
美味しかった。美味しかった。ビキニの美少女と食べる朝飯がこんなにも美味いものだったなんて、俺は今まで知らなかった。
何でもっと早く気付かなかったのだろうか。田中丸善樹、一生の不覚である。
「ごちそうさまでした」
「おそまつさまでした」
「じゃあ、少し休んで・・・、って結構まだ時間あるな」
「なんかゲームでもする?何か無いの?」
「だったら・・・、これなんかどうだ?」
「うん。いいよ」
食休みも兼ねて、朝からゲームとしゃれこむ。
そっと湯川の肩に毛布を掛けると、湯川は一度俺の顔を見て、クスっと笑って俺に近付いて・・・。
「気付くの遅いよ・・・、田中丸君」
肩にもたれかかってきた・・・。
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