take・55

「テストも終わった事だし、打ち上げと行こうぜー‼、と言いたいところだが、何で棕櫚のお嬢様と栞さんが来てるんですか?」


勝手に交わされた契約により、見事赤点回避を成し遂げた早生さんにしっかりと連行された俺だったが、こっそりと湯川を巻き込む事に成功し、何故か蜜鎖までも登場するという、見事なまでのオールスターでお送りいたす事になりました。


「私は田中丸君から「テストの打ち上げやるから来ないか?」って連絡来たから・・・」

「私は善樹君が心配で来てみたら、執事のおじさまが普通に中に入れてくれたわ」

「くそ・・・、どいつもこいつも余計な真似を・・・」

「まぁ、いいじゃないか。大勢いた方が楽しいってもんだ」

「そうね、私と善樹君が大勢いた方がきっと楽しいわ」


ちょっと意味が分かりません。


「ったく・・・、変な真似したらこの家から追い出すからな‼」


キレ気味の早生さんの言葉をしっかり無視しながら、他三人は泊りの準備を始める。久々に食事の用意をしなくていいと思うと、とても気が楽だ。

主婦の気持ちが分かる俺。いい男としか言いようがない。

食事を終えれば片付けもせずに小休止である。

何とも優雅でゴージャスな時間だろうか・・・。


「何ニヤニヤしてんだよ気持ち悪い」

「いや~、家事をしなくていいとなると・・・、やかましい年下の女に飯を食わせなくていいとなると、楽でしょうがない、と思っただけさ」

「じゃあ今度からアタシが毎日お世話してやるよ。何から何まで」


こ・・・、殺される・・・。


「分かっているわ善樹君。この後のお風呂の事を考えていたのでしょう?大丈夫、私が善樹君の隅から隅まで私の全身を使って綺麗にしてあげるわ」

「違法な高額オプション付きの人は黙っててもらえますかぁ?アンタは一人でユニットバス行きだわ」

「皆様、お風呂の準備が整いました。ごゆっくりおくつろぎください」

「よ~し、行こうぜ善樹‼」

「え?男湯は?」

「そんなもんねぇよ」

「マジで言ってんのか・・・」


こんな大勢の女が、寄ってたかって俺というか弱い男の子を辱めようとしているのか・・・。


「だ、だから・・・、一緒に、入ろうぜ。は・・・、裸の、付き合いってやつだな」

「だと思ったわ。だったら私も行くわ」

「ユニットブスはあっち行け」


何か新しい名前付いてる。


「何か時間かかりそうだから、私は先に行ってるねぇ~」

「「な⁉」」


一人てくてくと歩いていく湯川さん。あのフラットさ、俺も見習いたい限りである。


「じゃあ俺は自分ん家で入ってくるわ。すぐそこだし」

「じゃあ私も一緒に行くわ。一人じゃ寂しいでしょう」

「じゃ、じゃあアタシも・・・」


それじゃあ元も子も無いでしょうが・・・。


「おい、湯川を一人にするのか?」

「・・・、特別に、入浴を許可してやるよ」

「結構よ。ていうか、ここの住人の貴方が入るのが妥当でしょ」


またしても言い合いが始まりそうなので、こっそり湯川の元へ馳せ参じてみる・・・。



「おぉ~・・・、おっきい・・・」


高級旅館の大浴場と言ってもいいレベルの立派な風呂場を目の前に、湯川はそこそこの感動と、そこそこの歓声を上げていた。


「湯川~、いるのか~?」

「見てよ田中丸君。すっごい広いよ」

「あぁ、何度か入った事あるけど、いつ見てもすげぇな・・・、って、裸なんですね・・・」

「うん、そりゃお風呂だからね」

「うん、そりゃお風呂・・・、だからね・・・」


残念ながらタオルで前は隠れているものの、棕櫚に続き湯川の美しい裸体までも拝ませてもらえるなんて、高校生になるって本当に凄い事なんだね。


「普通にすっごい見てるね」

「そりゃ、お風呂だからな」

「そこは既に関係無くない?あのさ、別に怒ってないけど、ちゃんと恥ずかしいからね」

「あ、すまん、つい・・・、その・・・、見とれて・・・、しまった・・・うん。ちらっ」

「あのさ、田中丸君」


「ん?」


「た~な~か~ま~る~、善樹―‼」

「やったわね善樹君‼とうとうやったわね‼警察を呼ぶわ‼」


な~んかうるさいのが来てしまった。


「はい現逮~、死刑」


あ、ちょっと弁護士に電話していいですか?


「私と島流しの刑よ」


貴方も流されるんですか?


「おい待て‼俺は普通に風呂に入ろうとしているだけだぞ‼」

「それが普通に風呂に入ろうとしている人の格好かしら?」


裸に、腰にタオル・・・、これ以外何があるというんだ・・・?


「俺タオル巻いてるし、湯川もタオル付けてるけど」

「はぁ・・・、私以外の女と生きちゃダメって・・・、いつも言ってるでしょ?」

「・・・・・・」

「・・・、何言ってんのコイツ?」

「俺に聞くな」

「分かったわ、百歩譲って今日のところはいいわ」


何か妥協してくれた。


「その変わり、私と善樹君はタオル無しよ」


・・・、誰かこの女引っ叩いてくれ。


「おぉ~、大胆だね」


何でそんな適当なの?


「湯川は俺が裸でもいいのかよ?」

「別に。私は恥ずかしくないもん」


ですよね・・・。


「じゃ、じゃあアタシも善樹と同じで?裸でもいいかなぁ・・・。そ、その変わり‼善樹、お前の体で隠させてもらうからな」


「ダメよ。善樹君は私というバスグッズを体中に纏わせて、心地いい香りと柔らかい温もりに包まれ、私の甘い言葉のASMRを堪能するというメニューがもう組まれているわ」


もうオプション付きなところは間違い無いぜ。

メニューとか言っちゃってるよ・・・。


「黙れ‼善樹はアタシと一緒なんだ‼お前みたいなソ○プ野郎に好きにさせてたまるか‼」


ソ○プって・・・。


「田中丸君、入ろ?」


仲良く喧嘩する二匹を脱衣所に置き去りにして、湯川に手を引かれやっとの事でお湯に浸かる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る