take・48

「いただきます」

「い、いただきます・・・」


女の子と対面で食事をするというだけで、妙に気恥ずかしくなってしまう非リア諸君、伝われ。


「どうだ?美味いか?」

「絶対に違うと思うけど、田中丸君が作ったの?」

「まぁ、同じ地球で生きてて、俺が吐いた空気を吸って育ったもの達を使ってるんだから、俺が作ったようなもんだろ」

「そこまで幅広く自らの手柄として認識出来るのって、ある意味才能だね」

「いやいや違うぞ湯川。あれだ、あの踏みつけられて「ありがとうございます~」って言ってる奴らと同じ原理だ」

「どういう事?」

「別に踏んだ側は特に何もないだろ?でも踏まれた側は快感という名の利益を得ている。そう、つまり俺が地面を歩けば大地が肥えて大地が俺に「ありがとうございます~」と言っている。という感じに、巡り巡って結局俺に行きつく。という訳だ」

「そうなんだ・・・。何か、田中丸君に友達がいない理由、ちょっと分かったかも」

「日常的にこんな頭おかしい事ポンポン言ってたら、そりゃあ友達出来ないだろうな」

「あ、自覚してるんだ」

「違うわ‼言ってないわ‼ていうかいつも隣で黙って死んでるの見てるだろ‼」

「死んでる人は喋らないよ普通」

「貴方意外と子供っぽいんじゃないですか?」

「ん?どうだろうね?」

「ちッ・・・、可愛い顔しやがって・・・」

「ん?」


少し俺を覗き込むようなその仕草が、いつになく女の子で、あの無気力なクラスメイトとは到底思えない程の破壊力を生み出している。

あざといというか、何だか試されているような気分である。


「何が目的だ?」

「何が?」

「俺みたいな非リアを肴に、一杯引っかけようってか?」

「別にそんなつもりないよ?」

「じゃあ何が望みだ?」

「私もちょっと疲れたから、もう少しここで休まない?」

「それが望みか?」

「うん」

「そうか・・・」

「うん」


誰も俺の行いを回収してくれないこの状況は、いつまで続くのだろうか。

当たり前過ぎて気にしていなかったが、あの早生も少しは役に立っていたのかもしれない。適度に感謝しておいてあげたいと思っている。


「目的の店は今んとこどれくらい回れた?」

「もう殆ど回っちゃったよ。あと二つだけ。だから、午後はゆっくり回ろう?」

「湯川がそれでいいならそうしようぜ。俺はお前に合わせるよ」

「そっか。ありがと」


食事を終えて、再び湯川と歩く。

午後になり更に施設内は混んでいたが、湯川は自分のペースを崩す事無く、ショッピングを満喫していた。俺は自分でも服を見てはみたが、おしゃれなどとは縁の無い人生を十七年間も送ってきてしまっているので、全て見なかった事にした。


「よし、これに決めた。じゃあ、買ってくるね」

「おう、じゃあ外で待ってるぞ」


人の近くを通るたびに、心の中で「すいません」とつい言ってしまう。

今日だけで何回赤の他人に意味の無い謝罪を繰り返しただろうか。


「まったく・・・、もう女かカップルしかこの世には存在していないのか・・・」


もうカップルも一つの種族としてカウントしてしまった方が、処分する時に楽なんじゃないかと俺は思う。


「どうしたの?お腹すいた?」

「絶対に違う」

「だよね」

「もう、買い物は終わったのか?」

「うん。あ、あとね、最後にもう一個」

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